絶品スイーツ・パティシエリレー②「パスティッチェリア バール ピノッキオ」童話のようなイタリア菓子

カテゴリー/ GOURMET |投稿者/ Gouret&Traveller
2019年05月01日

Pasticceria Bar Pinocchio(パスティッチェリア バール ピノッキオ )

世界の珍しい郷土菓子を発掘し、日本に紹介し続ける東京渋谷の「Binowa Cafe」林周作シェフからのリレーです。

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京王井の頭線の富士見ケ丘駅の目の前に立つレトロなビルの2階にある仄暗い空間。灯火がもれるその扉を開けると、背後に昔ながらのエスプレッソマシンとワイングラスが並べられ、前にはバーカウンターにさまざまなイタリア郷土焼き菓子が入った駄菓子屋さんのようなガラス瓶が並んでいる。ここは以前バーだったところがそのままイタリア菓子店とバールに変身したお店。店内には座り心地よさそうな大きなソファとテーブル。迎えてくれたのは、イタリア菓子職人の岩本彬さん。岩本さんは、数々の偶然のできごとや出会い、運命に導かれてここにたどり着いた。
子供の頃から甘いもの好き、食べることが好き。といっても料理やお菓子の道は全く考えてなかった。中学・高校ではジャズ一筋。神戸育ちでジャズストリートでサックスを吹いてる姿を見てかっこいい、とサックスを始めた。父親もジャズ好きで、身近に音楽があった。

しかし、学校の先生になろうと大学は英文科に進む。そのうち音楽より楽器に興味を持ち、好きなメーカーの楽器作りを見てみたいと思うようになった。世界各国のサックスの工房にメールを送ったところ、イタリアの工房から返事が来た。マチェラータというアドリア海に面した美しく小さな街へ3ヶ月滞在する予定で向かった。ところが行ってみるとなんと楽器作りは休みで暇な時期。観光でもしてくれと言われ、毎朝ホテルで所在なさげに朝食をとっていた。

 

 

 

 

 

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ここでこの町を去ってしまえばイタリア菓子とは出会っていなかった。運命の分かれ目だ。毎朝、ホテルにパンを届けに来るおじいさんにある日声をかけられた。会話を交わすうち、ホテルの前にあるバールのおじいさん、マッシモさんだということがわかった。これがまず第一の出会い。事情を聞いて家に泊まって店の手伝いをしたら、と提案をしてくれた。実は岩本さんは大学時代、アルバイトでバリスタの仕事を4年間していた。マシンの扱い方などには慣れている。喜んでそのオファーを受け入れ、バールで仕事を始めた。

そんなある日、バールの休憩時間に街を歩いていたところ、カウンターに焼き菓子とコーヒーマシンが並んでいる店を見つけた。その光景に感激。こんなお菓子は日本では見たことがない。片っ端からお菓子を食べてみた。絵心があった岩本さんは、その場でお菓子の絵を描いた。すると、そんなに好きならお菓子の作り方を教えてあげる、と言って奥からおばあちゃんのフランチェスカさんが出てきた。これが第二の出会い。イタリア全土のお菓子を食べ歩いて作ったおばあちゃんお菓子。地方の失われつつあるお菓子、イタリア人でも知らないお菓子がたくさん集まっていた。そのイタリア菓子の文化があまりにも衝撃的だった。こんな気軽に普段遣いできるお菓子屋さんは日本にはない。しいていえばお団子屋さんに近いかもしれない。

 

 

 

 

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日本でそういうイタリア菓子の店をやってみたいと帰国。まずは、東京の「セガフレード・ザネッティ」で、バリスタをしながら、イタリアで習ったお菓子、購入した書籍、インターネット、おばあちゃんから送られてくるレシピなどをもとに、”イタリアで感動した味°の再現に努めた。さまざまな人に食べてもらい、感想をのべてもらう日々を6年間過ごしていく。

そのうち、広尾のイタリアンバール 、「ピエトレ・ プレツォーゼ」でバリスタ兼菓子職人として勤務し、Facebookを通じて同じお菓子を作っている人と知り合う。これが現在の店のもととなる第三の出会いとなる。富士見が丘の「バーカロ フェッロ」(ヴェネツィア式立ち呑み屋)にて日曜イタリア菓子営業を1年2ヶ月行い、昨年7月に現店舗となるビルの2階に移り、本格的にイタリア菓子店を始める。常時イタリア各地の伝統的な焼き菓子が12種類(100円)ほど、切り売り菓子や生菓子(400円から)など数種類がならび、イタリアのエスプレッソメニューやワイン、リキュールが楽しめる。

 

 

 

 

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昔の駄菓子屋さんの感覚で子供たちが100円玉を握りしめてやってきては、お菓子をガラス瓶のなかから選んでいく。ようやく町のお菓子屋さんとして認めてもらえるようにもなってきたと感じる。
イタリアらしいスパイスがきいて口当たりがよい素朴なお菓子はどこか懐かしい味がする。そしてコーヒーは、日本ではなかなか飲めないカフェ・デル・ドージェを個人輸入している。店内の時計やエスプレッソカップもカフェ・デル・ドージェ。店名の通りピノッキオもたくさんいる。温かい岩本さんのキャラクターも相まって、そこは童話のなかに入り込んだような癒しの非日常空間。見知らぬお菓子の国に迷い込んだら夢見心地から抜け出せない。

 

 

 

 

 

lattaiolo toscano
トスカーナ風ラッタイオーロ
caffè pinocchio
カフェピノッキオ 

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トスカーナ州に古くから伝わる家庭的な郷土菓子。アニス、シナモンの香る、牛乳、卵の優しい味わいのお菓子。ドリンクは、自家製ほろ苦カラメル入りのカフェマキアート。

 

 

 

 

 

torta nicolotta
トルタニコロッタ

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ヴェネツィア聖ニコロ教会発祥の郷土菓子。牛乳で柔らかくしたパン、胡桃、グラッパ漬けレーズン、フェンネルの入ったパンプディング。

 

 

 

 

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お持ち帰り焼き菓子 中央がグリーンのクッキーから時計周りに
biscotti di mandorle
シチリア風アーモンドビスコッティ
シチリアの郷土菓子。外はカリッと中はネチッとしたアーモンドの粉を使ったオレンジ風味の焼き菓子。

baci di dama (中央)
バーチディダーマ
“貴婦人のキス”という意味のピエモンテ州の郷土菓子。さっくりしたアーモンド生地でチョコレートをサンドしています。

biscotti di fichi
いちじくのビスコッティ
トスカーナのお菓子屋さんで習ったビスコッティ。赤ワイン、いちじくの優しい味わい。

zaleti
ザレッティ
ヴェネツィアの郷土菓子。
トウモロコシ粉にグラッパ漬けレーズンの入ったレモンバタークッキー。

zuccherini montanari
山のお菓子
エミリア=ロマーニャ州のボローニャ近郊の村の郷土菓子。元々は村の祝事(結婚式)などで振舞われたルーツを持つアニスの香る爽やかな味わいのお菓子。

 

 

 

 

 

 

 

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Pasticceria Bar Pinocchio
パスティッチェリア バール ピノッキオ
東京都杉並区久我山2-25-1富士見ヶ丘マンション201
月曜、火曜定休
水曜 9:00〜22:00
木曜 9:00〜22:00
金曜 16:00〜24:00(金曜は不定期での営業)
土曜 9:00〜22:00 日曜 9:00〜21:00
https://m.facebook.com/pasticceriabarpinocchio

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