フランス人に愛されるパリの日本人シェフ⑩「ヴィルチュス 」神崎千帆シェフ

カテゴリー/ PARIS |投稿者/ Gouret&Traveller
2019年06月20日

ヴィルチュス (Virtus)

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従来、庶民的だったエリアに、上質なレストランがいくつもオープンしているパリ12区。アリーグル市場近くのコット通りに店を構える「ヴィルチュス」もそのひとつだ。

日本人女性シェフ神崎千帆さんとパートナーのマルチェロ・ディ・ジャコモ(Marcelo Di Giacomo)さんのデュオが作る南仏の風薫る繊細なフレンチ。南仏「Mirazur(ミラズール)」(2019年に3つ星)でスーシェフなどを経験し、パリにオープンした「ヴィルチュス」で1つ星を獲得した。
「ミラズール」は、コート・ダジュールのマントンにあり、2人はこの店で修行中に出会った。神崎シェフは、マウロ・コラグレコ(Mauro Colagreco)シェフの元でスーシェフとして腕をふるい、1つ星だった店に2つ星をもたらした。

オーナーが建築関係ということで、ミッドセンチュリーや北欧の家具を配した「ヴィルチュス」のインテリアはとてもスタイリッシュ。個人宅のような空間にしたかったという通り、ゆったりとしたくつろぎのサロン風なテーブル配置は居心地抜群だ。

 

 

 

 

 

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物心がつくころから、料理に興味津々、家の台所で食事の支度をする親の手元を覗くのが好きだったという神崎シェフ。自然と将来は「食」の仕事に就こうと、進路を決めたが、女性への門戸はまだ開かれていなかった。ある調理師専門学校では、「女性の仕事はひたすら果物の皮を剥くだけです」と言われたという。
大阪の辻調にアルバイト進学制度で入学し、朝は授業、その後は仕事。学校が紹介してくれた日本料理店で一年ほど修行し、その後は人気フランス料理店だった「シェ・麻里お」(2011年閉店)に移り、そのまま就職。「シェ・麻里お」の中川シェフは、料理人でありパティシエであったため、料理だけでなくお菓子もしっかり学ぶきっかけになった。

その後、フランスへと向かう。紆余曲折、しかし、ぶれない芯の強さで女性料理人としての道を歩むことになる。厳しいとは覚悟していたが、予想以上に苦戦。200通の履歴書を送っても断られ続け、唯一、雇うと返事をくれたのが、アヴィニョンの「オーベルジュ・ド・カッサーニュ」という星付きレストランだった。その店の肉部門のシェフが3つ星「ルカ・カルトン」で働いていたことがあり、半年後に推薦状を書いてくれ、3か月「ルカ・カルトン」で研修ができた。一度3つ星の経験が持つととその後はスムーズで、学生ビザの残りの期間にさまざまな星付きで修行することができた。

IMG_2825このままフランスにいることもできたが、フランスで通用するように、日本でも修行しようといったん帰国。就職先が決まらない中、横浜のパティスリー「クール・オン・フルール」(2014年閉店)の奥田シェフから声がかかり修行。お菓子も作れる料理人になることを考え励んだ。混ぜ加減ひとつでも生地が死んでしまう世界。料理とはまた違う技術を学ぶ。
その後、2007年初めにワーキングホリデービザで再渡仏。前回の渡仏時から働きたかった2つ星「ジャン・ポール・ジュネ」で、女性はダメと断られるも粘り、研修生となる。この店では、肉の解体をやらりたくても、まかせてはもらえず、泣いて頼んで子羊の解体をやらせてもらったこともあるそうだ。

10か月たち、あらたにイタリア国境近くの「Mirazur(ミラズール)」で仕事をすることになる。ワーキングホリデーのビザはあとわずか。その働きぶりを見て、一週間で労働許可証の申請を申し出てもらえることになり、以来、7年間マウロシェフの元で修行をする。マウロシェフの料理は、仕上げのハーブひとつで味が決まる。ハーブはたいへん重要で、ハーブ担当がいたほどだ。山に30~40種類の香草や野草を探しに行くが、神崎シェフは、完璧にハーブの種類をマスターした。そうした努力が認められ次々と新しい部門を任せてもらえるようになる。念願の肉部門もクリア。ついに、スーシェフになることを提案されるまでになったが、自分はまだ未熟だと伝え、肉部門と魚部門のシェフをそれぞれ一年してから引き受けたという。

ようやく技術も認められ、仕事に精を出す毎日を過ごしていたころ大きな転機が訪れる。
マウロシェフが南アメリカに進出予定で、神崎シェフもその新店に参画することになったのだ。しかし結局その話は流れてしまい、紹介してもらったパリ7区のレストランが新たな活躍の場になるはずだった。しかし、自分の目指す道とは違うコンセプト、とその店を離れることに。すると幸運なことに同じオーナーが経営する店を名前を今のVirtusに変え引き継ぐことを提案される。ここでは、料理だけでなく、原価率や人件費もやり繰りし、経営も学んだ。
いまは、良い素材を提供してくれる生産者にもスポットを当てたいと、フランスならではのクオリティの高い食材を見つけるため各地を回っている。スタッフにも恵まれ、次のステップに向かってスタートを切ったところだ。

 

 

 

前菜  天然真鯛とカブ
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カブの葉のソース、茎を細かく切って食感も大切に。野菜をあますところなく使う。生産者ヴァンソンさんから取り寄せたカブ。華やかなカブのプレゼンテーションでゲストの心をつかむ。

 

 

 

 

メイン カツオとクルジェットと柑橘のソース
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火で炙り焼いてたたきのようなものにする。ズッキーニをバターとニンニクとタイムで火を入れて。修行が長かった南仏料理がベースなので柑橘類、レモン、グレープフルーツ、レモンコンフィー、オレンジなどを使うことが多い。

 

 

 

デザート イチゴの酒粕のクリーム、玄米茶のアイス

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イチゴを盛り付けるのため、切らずに直接クリームを絞りたい、食感を遊び心いっぱいにひろげたい、と考えてこの盛り付けに。和の食材を使うのも抵抗がない、とはいえなかったが、イチゴと酒粕を合わせてみたところ、丸ごとのイチゴにクリームと酒粕がまとい、これまでにない新鮮な味わい。

 

 

 

 

 

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VIRTUS(ヴィルチュス)
29 rue de Cotte 75012 Paris
09 80 68 08 08
8番線Ledru-Rollin から徒歩5分
ランチ 39ユーロ〜、ディナー 75ユーロ〜、アラカルトあり
https://www.virtus-paris.com

 

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