日本の素材を使い、北欧のテイストを融合したイノベイティブフレンチ「スブリム」
2020年04月25日
Sublime (スブリム)
グルメが集う麻布エリアにある「スブリム」。2015年秋に東京・新橋にオープンし、開店当初からミシュランガイドで1つ星を獲得し、2017年8月に麻布十番へ移転オープンした。
。麻布十番駅から歩いて約5分、住宅地のビルの一角に広がる店内は、緑が眩しい大きな窓に彩られ、奥に備えられた開放的なオープンキッチンが印象的だ。シンプルながらスタイリッシュなインテリアのなか、ディナータイムは落ち着いた明りのライトがテーブルを照らす。「崇高な」という意味をもつこの店では、クラシックをベースにモダンフレンチの要素を散りばめ、この店ならではの北欧料理を組み入れたイノベイティブな料理フレンチが提供される。手元まで見渡せる大きな厨房で腕をふるうのは、加藤順一シェフだ。
もともとはお菓子作りが好きで、子供のころから台所に立ち始めた。専門学校卒業後は、華やかさに憧れてフレンチの道へ進む。選んだ師匠は、フランス料理界の重鎮、吉野建シェフ。パリの「ステラマリス」でミシュランで1つ星を獲得し、「リエーヴル・ア・ラ・ロワイヤル」のコンクールでは、フランス料理の真髄を表現、フランス人シェフを押さえて1位に輝いた偉大なるシェフだ。加藤シェフは、まず基本をしっかり学ぶため、芝パークホテルにあった「レストラン タテル ヨシノ 芝」に入り、その後、和歌山県の「hotel de yoshino(オテル・ド・ヨシノ)」へと移る。吉野シェフのもとで7年過ごし、吉野シェフを天才と称える加藤シェフ。師匠ののもとで料理をおいしく作るために必要な技術と心構えを学んだ。
その後、さらなる経験とモダンフレンチを学ぶため、パリの三つ星(現在2つ星)、こちらも天才、パスカル・バルボ率いる「アストランス」に向かう。吉野シェフの下にいたことで、信用を得て、メインの肉を任された。繊細な火入れにはかなりの神経を使い、厳格な教えを得た。
パスカル・バルボシェフは、昨日の食材と今日の食材は全く別物、その日の素材のコンディションで火入れを考えなければならない、という考え方の職人タイプの料理人。世界で評価されているシェフと直接コミニュケーションをとり、彼の哲学に触れられたことは、いまも日々の料理作りの糧となっている。
ちょうどその当時は北欧が脚光を浴び始めたころだった。デンマークの「noma(ノマ)」が初めて出版した本を見たとき、その斬新さに衝撃を受けデンマークへ向かう。「noma」では人手が足りており働くことが叶わなかったが、当時1つ星(現2つ星)「AOC」で仕事をする機会を得た。
さまざまなレストランを食べ歩いた末見つけた「AOC」で仕事をする機会を得た。食材の貧しい北国で見た保存食、食材をパウダーやオイルに仕立てて想像もできない味に変える技術は、クラシックなフレンチにモダンな要素を加え、さらにノルディックの発酵などの技術を兼ね備えた今の独自の路線へと導いた。帰国してからは、デンマークで経験した地産地消も実践している。日本各地を巡り、食材を探し、その素材をベースに料理を考える。自分だけのスタイルをめざし歩んできた道から生まれた独創的な料理は、多くの食通を魅了している。
前菜 マッシュルーム
スペシャリテの前菜、発酵マッシュルームのスープ。故郷の静岡で働いていた時、地元で採れる素材を使ってみたいと考えていた。そんな時に出会ったのが職場近くにあったキノコ農家の長谷川農園。毎日、マッシュルームを好きなだけ採らせてもらっていた。今でも2〜3日に一度、静岡から送ってもらっている。
マッシュルームは3%の塩に漬け発酵させ、キノコから出たジュを、同じキノコのブイヨンとクリームを合わせている。さらに生のマッシュルーム、ソテーして加熱したマッシュルームを添えて3種のテクスチャーを表現。また発酵による酸味と塩味を和らげるため、温泉卵を中に忍ばせている。
フランス料理は1つの素材に足りない部分を補って味を出していく。北欧料理は1皿にいろいろな調理法、素材感の表現を大切にする。同じ食材の多角的な面を出すことが特徴だ。シャキシャキとしたマッシュルームの食感にと温泉卵のとろりとした甘みが絡み新鮮な味だ。
メイン 仔羊
北海道の白糠町、「羊まるごと研究所」の酒井伸吾さんが育てている旨味が有りクセのない仔羊を気に入り半頭買いしている。
セルダニョー、子羊の鞍下肉を使った。ロース肉のまわりを首のミンチで包んでさらにバラ肉で巻いてすぐ成形しローストしたもの。ソースは羊の骨からとったブイヨン。パセリの青々しい春らしい草の香りのピューレを添える。
デザート よもぎのアイスクリーム
日本の春をイメージしたデザート。ヨーグルトの「蘇」、液体窒素で作ったホワイトチョコレートのムース、よもぎ蒸しパンのクランブル、桜の花びらを乾燥させたものの下に、ヨモギのアイスクリームと柑橘のクリームが隠れている。
日本古来のものを加えたいと考え、ヨーグルトを4時間炒めて日本の1番古いチーズ「蘇」をイメージしたものを作った。ヨーグルトを炒めると茶色くなっていき、水分が飛んでそぼろ状になる。それを更に乾燥させてクリスピーな食感にした。鮮烈な酸味がアクセントになる。
Sublime (スブリム)
東京都港区東麻布3-3-9 アネックス麻布十番1F
☎03-5570-9888
営業時間 12:00 ~ 13:00LO 18:00 ~ 20:00LO
定休日 (日曜のみ19:30LO) 月曜休
アクセス 東京メトロ、都営線麻布十番駅より徒歩4分
URL https://www.sublime.tokyo/
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