名料理人のスペシャリテ美食リレー⑧大人の居酒屋でお値打ち和食コース「幸せ三昧」

カテゴリー／ GOURMET ｜投稿者／ Gouret&Traveller
2017年07月13日

人気シェフの自慢のスペシャリテをご紹介、次の料理人を推薦していただきリレー形式でつないでいく連載8回目は、手打ちパスタが楽しめるイタリアン、モデナの三つ星で修行した「アルモニコ」の佐々木泰広シェフが、コスパナンバーワン和食コースと絶賛する、名店「賛否両論」から独立した「幸せ三昧」の中山幸三さんです。

幸せ三昧

その店名を聞いただけで温かい気持ちにさせてくれる「幸せ三昧」。恵比寿の人気店「賛否両論」で、笠原将弘（かさはらまさひろ）さんの一番弟子として5年間修行してきた中山幸三（なかやまこうぞう）さんが2009年にオープンした、駒沢通りに隠れ家のようにひっそり佇む和食料理店だ。独立にあたり、店主の中山幸三さんの幸と三を取り、「賛否両論」の師匠、笠原さんとお店の常連さんが命名してくれたというエピソードも心に響く。

恵比寿や広尾、近隣のどの駅からも離れ、立地としてはけっして有利とはいえない店が常に満席だ。大人の居酒屋にしたかったという中山さんの意思を反映して、12坪の木目を生かした店内は落ち着けるシンプルな空間に大きなカウンター席とテーブル席がゆったりと配され、間接照明で柔らかい雰囲気を演出する。オープン当時から笠原さんの一番弟子が新しい店を開いたことは注目を浴び、すぐに話題となった。師匠のネームバリューには感謝していると中山さんはいう。

もともとはグラフィックデザイナーとして広告業界で活躍していた中山さんが、料理人を志したのは、15年前。笠原さんの実家が経営していた人気焼き鳥店「とり将」に通う常連客だったが、居酒屋経営を目指し、「とり将」の笠原さんに弟子入りを志願した。ちょうど「賛否両論」を立ち上げようとしていた笠原さんと、二人三脚て新店を成功に導いた。ただ一人の弟子であったことも功を奏し、笠原さんのもとでめきめきと料理の腕を上げた。そもそもモノ作りが好きで、料理もその延長にあった。おいしいものを食べることがなにより好きだった健啖家。敏腕料理人になる素質とセンスがベースに流れていたのだ。

「賛否両論」を踏襲したおまかせコースは、前菜2品、お椀、揚げ物、お造り、焼き物、蒸し物、締めのご飯、デザートと、全8品で6000円。魚介中心の料理は、毎朝欠かさず中山さん自らが築地に出向いて直接確認して仕入れ、その素材を目の前に季節感を重視した構成を考える。ひと皿ひと皿ていねいな仕事が成されたアイディア豊かな組み合わせ。季節の素材を生かしたお造りや揚げ物、お椀などどれも創意工夫が凝らされた上品な味わいだ。

この店を「和食フルコースがカジュアルに楽しめる大人の居酒屋」にしたかったというだけに、お酒のセレクションも幅広い。リーズナブルなワインやスパークリングから「磯自慢」などの日本酒の有名銘柄も揃えている。

一度行くと誰しもリピーターになってしまう季節感あふれる絶妙なメニュー構成は、三週間ごとに変わる。和気藹々とくつろぎながらおいしい時間を過ごせる至福の空間。遠くからでもわざわざ行く価値のある和食店として賑わっている。

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