ドキュメンタリー「新世紀、パリ・オペラ座」多角的視点で映す芸術の殿堂のすべて

カテゴリー/ PARIS |投稿者/ Gouret&Traveller
2017年12月05日

『新世紀、パリ・オペラ座』
12月9日(土) Bunkamura ル・シネマにて公開

 

『新世紀、パリ・オペラ座』main

パリ・オペラ座はルイ14世の時代から350年続くオペラ、バレエを中心とした舞台芸術の殿堂だ。そのステージのひとつであるガルニエ宮は、多様な彫刻を施し、シャガールの天井画をはじめ、華麗な装飾を施した豪華絢爛たる美しさを誇るネオ・バロック様式の歌劇場である。

その華麗な劇場の舞台裏のストーリーに興味を持つ人は多く、これまでにいくどとなくドキュメンタリー映画が撮られてきた。多くはバレエ・ダンサーのパフォーマンスに光をあて、ダンサーたちの優美な姿の裏の葛藤を掘り下げたバレエ物語が主なテーマだった。

 

 

『新世紀、パリ・オペラ座』sub1

だが、本作は違う。ただパリ・オペラ座を題材にした映画ではなく、オペラ座という組織のなかで働くさまざまな人々をあらゆる角度から検証した奥行き深いドキュメンタリーだ。

以前、パリ・オペラ座ダンサーのマニュエル・ルグリを取材した折、オペラ座内部を案内してもらったことがある。何百年にもわたる芸術家たちの怨念のようなものが漂う魑魅魍魎の住処といった印象をその美しい劇場の暗闇に感じた。「オペラ座の怪人」が確かにいるのかもしれない。そんなミステリアスな雰囲気をを醸し出していた。

今回はそんな魑魅魍魎たちが跋扈するパリ・オペラ座のベールの向こう側を、ビジネスの側面から、オフィスの実務から、制作の立場から、創造者の苦悩から、これまで語られることのなかったオペラ座を多角的に描いている。

 

『新世紀、パリ・オペラ座』sub2

次々と襲いかかるトラブルはまるでこの映画に台本があるフィクションであるかのようだ。
たとえれば、華麗に水面を滑る白鳥の姿が、水面下では前に進むために必死に足をもがいている、そんなオペラ座の日々が描かれる。

おりしもオペラ座は激変の時期を迎えている。
本作のプロデューサーのフィリップ・マルタンは、次の作品テーマを模索していたジャン=ステファヌ・ブロン監督に、オペラ座はひとつの社会に例えることができる、と興味を抱かせた。
総裁が元ミラノ・スカラ座のステファン・リスナー、音楽監督にフィリップ・ジョルダン、バレエ団芸術監督にナタリー・ポートマンのパートナーとしても知られるバンジャマン・ミルピエである今をフィルムにおさめておくべき時だと示唆した。

 

 

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創作に取り組む人々を丹念に追ったバレエのドキュメンタリーはすでに何度もテーマとして取り上げられ、優れた作品も残されている。
そこで、今回はガルニエ宮より、パリ・オペラ座の新劇場バスティーユのオペラや音楽をメインの題材にしようと考えたという。

ポストパンクのロックを聴いて育ったブロン監督にオペラやバレエの知識はまっなかった。それゆえ、オペラ座がどのように機能しているかに関心を持ったという。

撮影に乗り気ではなかったリスナー総裁はブロン監督の作品「Cleveland Contre Wall Street」に心動かされ、最終的にバックステージへカメラが入ることを許した。撮影される側が積極的ではないことはかえって功を奏した。ドキュメンタリーで撮られる対象が饒舌に前に出てきてはよい映像は生まれないからだ。延べ130日の撮影、10時間滞在して数分しか撮影しなかったこともあったという。

 

 

『新世紀、パリ・オペラ座』sub3

パリ・オペラ座のガルニエ宮とバスチーユの二つの劇場では、年間400もの公演を行う。1500人ものスタッフの仕事の集積で優れた舞台が実現するのだ。そんなオペラ座で黒子として働く人々のポートレートを描きながら、オペラ座のクリエーションを表現するプロセスを追う初めての試みにブロン監督は見事に成功した。

創作活動そのものより、スタッフの働き、立ちはだかる壁、葛藤などの瞬間を撮りたかった。それらの撮影を通してパリ・オペラ座という組織を探っていったという。
エトワールとして活躍してきたオレリー・デュポンがバンジャマン・ミルピエに代わってバレエ団芸術監督に就任したオペラ座新時代の波乱の幕開けにはじまり、オペラ座史上最大規模の新作オペラ「モーゼとアロン」の1年間にわたるリハーサル、公演初日直前に主要キャスト降板で代役を探すスリル、さらに職員のストライキなど次々と難題に直面し、奔走する総裁ステファン・リスナーをカメラは追った。

 

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世界的オペラ歌手ヨナス・カウフマン、オルガ・ペレチャッコ=マリオッティといったスターたちの姿も捉え、指揮者、フィリップ・ジョルダンとの練習風景など、オペラファン垂涎のエピソードも描かれる。

一方、ロシア出身の純朴な青年が新たなオペラのスターを目指してオーディションを突き進んでいく姿など、格式を重んじながらも常にニューウェーブを模索し続けるオペラ座の伝統と革新を映し出す。

ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」、バルトーク「弦楽四重奏」、モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」など数々の演奏も本編を彩る。

ここまで深く芸術の巨塔に踏み込んだカメラがあっただろうか? オペラ座がこれほどまでに正直な姿をあらわした。衝撃のドキュメンタリーだ。

 

 

 

 

新世紀、パリ・オペラ座 ポスター

「新世紀、パリ・オペラ座」

監督ジャン=ステファヌ・ブロンキャストステファン・リスナー、オレリー・デュポン、バンジャマン・ミルピエ、フィリップ・ジョルダン作品情報2017年/フランス・スイス/111分受賞
ノミネート2017年モスクワ国際映画祭 ドキュメンタリー映画賞受賞
配給ギャガ

©2017 LFP-Les Films Pelleas – Bande a part Films – France 2 Cinema – Opera national de Paris – Orange Studio – RTS

文*山下美樹子

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