再訪したくなる美食空間 東京ファイル⑩「T3」和牛メインのフュージョン・フレンチ

カテゴリー/ GOURMET |投稿者/ Gouret&Traveller
2018年09月16日

世界のグルメ・シーンを長年取材してきたグルメ&トラベラーが、取材で食べ歩いて見つけた「思わずリピートしたくなる美味な店」をご紹介する連載、「グルメ&トラベラー 再訪したくなる美食空間 東京ファイル」10回目は、和牛をはじめとする肉をメインに時間と温度にフォーカスし、フレンチで培ったテクニックにモダンアメリカのエッセンスを加えたフュージョン料理、「T3」にご登場いただきます。

 

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名店が次々とオープンし、食で賑わいをみせている元麻布界隈。飯倉にほど近いフランス料理店「サヴール・コンプリス」が「T3」という名でリニューアル・オープンした。店内はレザーやウッド、ストーンを配したハイブリッド空間。最奥部にはオープンキッチン、その前の4席、ライブ感あふれるシェフズテーブルが特等席だ。

最初に運ばれてくるのは、艶やかにプレゼンテーションをほどこしたアンティーク伊万里の大皿。「旬の食材を使う」「素材の持ち味を活かす」「趣向を凝らしておもてなしをする」といった会席料理の志しが感じられる小さな器に盛られた八寸のような品々。テーブルにはお箸が一膳。日本伝統の有田焼きに盛り付けたイノベーティブな肉料理をメインとした少量多皿のこのレストランは、知らなければ和食のお店かとも捉えられるが、実はフュージョン・フレンチのレストランなのである。希少な勝部牛をはじめこだわり抜いた食材をシェフの山下浩幸さんが自在にアレンジしていく。

 

 

 

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店名の「T3」とは、Temperature(温度)×Time(時間)×TAZARA(多皿)、3つの”T”をコンセプトとしている。シェフが描いたイラスト入りのメニューには、何度でどのくらいの調理時間を要したかが記されている。ひとつの料理の温度にかける時間次第でより理想的な味が生まれるのだ。

 

 

 

IMG_1182ファースト・インパクトも強い美しい器は、有田で買い付けたアンティーク物から現代作家の作品までさまざま。コンセプトのひとつとしてこだわる「多皿」は、時代(time)を器からも感じてもらいたい、という意味もこめられている。そのひと皿ひと皿には、ソムリエが温度×時間×テロワールの3つのTで織りなすセンス抜群のワインと、 ワインをオマージュして作るノンアルコールのクラフトドリンクが添えられる。

 

 

 

 

 

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デザインが好きでグラフィック・デザイナーに憧れていた山下シェフは、79年生まれの「料理の鉄人」世代。料理人が脚光を浴びていた時代だ。そんな折り、雑誌で見たパリの三つ星シェフ、ピエール・ガニエールの、意図的に皿からこぼしたようなアバンギャルドな盛り付けに感動、料理でアートを表現したいと考え料理人の道を志した。

専門学校卒業後は、「オークラアカデミアパークホテル」「銀座レカン」を経て「マンダリン オリエンタル 東京」にあるフランス料理店「シグネチャー」で研鑽を積む。その頃フェアで来日した「マンダリン オリエンタル ワシントンD.C.」のエグゼクティブシェフ、エリック・ジーボルト氏に大きな影響を受け渡米。アメリカのニューオーリンズを中心に広がったフランス、スペイン、アメリカなど複数の食文化が混合した「サザンキュイジーヌ」を学んだ。

フランス料理にも日本料理にもない食材へのアプローチや組み合わせに触発され、スパイスやハーブをミックスして作るオリジナルの“ブレンドスパイス使い”などにも挑戦してきた。オークラやレカンでしっかりフランス料理の基礎は培ってきた上に、新たなステージでの経験はさらに才能を開花させる。一頭丸ごと買いで調理する肉料理には特に学ぶところが多かった。ジーボルト・シェフ仕込みの高いテクニックによる山下シェフの肉の火入れは絶妙だ。緩急つけた多彩な料理に加えてカツサンド、シャトーブリアン丼などスペシャルなサプライズメニューも楽しめる。正統派フランス料理の技術をベースに意欲的で斬新、豊富な味のバリエーションをオリジナリティあふれるプレゼンテーションで堪能できる、新たな方向性を示唆するレストランだ。

 

 

 

 

20000円のコースより

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繊細な料理が並ぶ2人分のアミューズ。手前左から、北海道噴火湾のカニとアボカド毛ガニ、トマトジュースを時間をかけて濾したジュレ。トマト水の中でアボカドはディップのように使う。ワカモレが、青さを際立たせ、三位一体で全体を締める。
フォアグラと鹿とトリュフの香りガトー仕立て。
石川県産北国赤エビ、冷製ウニのムースを下にしてパルフェにする。浮かべているのがお米とホタテのチュイル。イメージは秋のテーマで、とんぼの姿をイメージ。
竹の器に勝部牛、コンソメでサーロインをしゃぶしゃぶにした。京都のきょうとう菜が、肉を引き立たせる。
24ヶ月熟成のパルマ産生ハムとフルーツを中央に飾る。

 

 

 

 

 

 

牛タンステーキ、焼き林檎とフォアグラエモーション

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牛タンを160度で4時間、表面にさらっとパン粉をつけて焼いた。それぞれの食材の組み合わせが味をしっかり効かせている。日本かぼちゃの品種、バタースクワッシュのピューレを添え、ソースは牛タンのジュをしっかり煮詰めた。焼きリンゴと表面にしっかり焼き色をつけてフォアグラに包みトリュフをのせる。いちじくは、ナツメグ、クローブを効かせたもの。

 

 

 

 

 

 

熟成豚のピザ窯焼き キノコのリムーザン風 生栗のスライス

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平茸、シメジ、カキノキ茸のキノコ類にコーヒーのカフェインが効いたレッド・アイ・グレービーソース。沖縄の豚、南の島豚を200度のオーブンで30分、藁で巻いてピザの生地で包む。ハーブの移り香が食欲をそそる。エイジングがかかっている肉はヨーグルトにつけて柔らかくしておく。オーブンから出して15分、ピザ生地の中で肉は低温調理される。スパイスだけを焦がすようにして香ばしく。熟成24ヶ月の肉は油がナッツのような香りになるため、スパイスだけを焦がすような香ばしく焼く。美しいロゼ色の肉はしっとり柔らか、脂身が味わい深い。

 

 

 

 

 

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T3(ティースリー)
東京都港区麻布台3-4-11麻布エビスビル1F  
03-5545-5857
東京メトロ日比谷線 六本木駅 徒歩7分
東京メトロ南北線 六本木一丁目駅 徒歩5分
都営大江戸線 麻布十番駅 徒歩7分
[月~金・土] 18:00〜23:00 LO20:00  バーは21時から
日曜日休み
8000円、11000円、15000円

 

再訪したくなる美食空間 東京ファイル⑩T3
再訪したくなる美食空間 東京ファイル⑨オルディヴェール
再訪したくなる美食空間 東京ファイル⑧フィリップ・ミル
再訪したくなる美食空間 東京ファイル⑦ル・ブルギニオン
再訪したくなる美食空間 東京ファイル⑥エネコ東京
再訪したくなる美食空間 東京ファイル⑤リューズ
再訪したくなる美食空間 東京ファイル④ヴィラ・デル・ソル
再訪したくなる美食空間 東京ファイル③乃木坂しん 
再訪したくなる美食空間 東京ファイル②アムール
再訪したくなる美食空間 東京ファイル①由庵 矢もり

 

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