石戸谷結子の世界オペラ散歩⑯MET「マーニー」「 アイーダ 」と「リチャード ・ タッカーガラ」

カテゴリー/ VISIT |投稿者/ Gouret&Traveller
2019年01月07日

クラシック音楽、なかでもオペラを専門に、多数の評論を執筆。難しく思われがちなクラシック音楽をわかりやすく解説し、多くのファンを持つ音楽ジャーナリスト、石戸谷結子さんが、世界の劇場を巡りオペラの楽しみ方を教えてくれる連載、「石戸谷結子の世界オペラ散歩」第16回は、ニューヨーク・メトロポリタン・オペラの「マーニー」。ヒッチコックが映画化したミステリーを旬のメゾ、イザベル・レナードが歌います。この作品はMETライブビューイングにて1月18日~24日東劇ほかで観ることができます。

 

 

 

マーニー(C)Ken Howard/Metropolitan Opera (1)

マーニー(C)Ken Howard/Metropolitan Opera (2)

ヒチコックの映画でお馴染みの「マーニー」がオペラになった。METではアメリカ人作曲家の新作を毎年発表しているが、今年はニコ・ミューリーによる「マーニー」が2018年10月19日に初演された。演出は以前キャバレー仕立ての「リゴレット」で物議を醸したマイケル・メイヤー。今回はシンプルな装置で、ミステリアスな美女マーニーの深層心理が次々と明らかにされる。ヒチコックの映画でお馴染みの「マーニー」だが、原作はウィンストン・グラハムのサスペンス小説。今回の舞台は小説をベースにしているため、登場人物もラストシーンも映画とは異なる。

 

 

 

 

 

マーニー(C)Ken Howard/Metropolitan Opera (3)
マーニー(C)Ken Howard/Metropolitan Opera (5)

マーニーを歌うのはMETが育てた旬のメゾ、イザベル・レナードで、彼女に惹かれる金持ちの男マークは、クリストファー・モルトマン。映画ではショーン・コネリーが演じた役だ。ストーリーの展開が早く、原作や映画を見ていないと少し分かりにくいが、音楽はミニマム・ミュージック系統で、さらにメロディックなので、聴きやすい。多重人格を持った美女マーニーは、幼いときのトラウマや精神障害のせいで、大金を次々と盗んではほかの土地に移り、違う人物になりすます。しかしその根本は孤独で恐怖に怯える女性。彼女の過去が明らかになり、真相が解明される過程が、オペラとして描かれる。いまの時代になかなか合った作品だ。

photos (C)Ken Howard

指揮:
ロバート・スパーノ
演出:
マイケル・メイヤー
出演:
イザベル・レナード、クリストファー・モルトマン、イェスティン・デイヴィーズ、ジャニス・ケリー、デニース・グレイヴス
上映時間:
2時間55分(休憩1回)
MET上演日:
2018年11月10日

https://www.shochiku.co.jp/met/program/855/

 

★MET「アイーダ」とカーネギーホール「リチャード・タッカー・ガラ」

スケールの大きいMETの舞台、新人のアイーダが演じる「アイーダ」

私が観たこの日は主演がネトレプコではなく新人ソプラノ。おまけにラダメスを歌う予定だったアレクサンドルス・アントネンコが降板し、なんと代わりに登場したのが、ヨンフン・リー。かつてMETの来日公演で、カウフマンの代わりに「ドン・カルロ」を歌って以来、日本人には人気のない彼なのだが。さてMET最大といってもいいほどの巨大な装置による「アイーダ」は、馬も4頭出るし、とにかくスケールが大きい。最初の「清きアイーダ」は、ちょっと音程が下がり気味。しかし幕が進むにつれ、声量はあるし、高音も出るので、メットの聴衆には大受けだ。この日初めて聴いたソプラノ、タマラ・ウィルソンは、巨大で演技はまったくできない(おそらく動けない)のだが、声量もあり、声もちょっと変わっているが美しい。とくにピアニッシモが美しく、将来が楽しみな若手だ。オリジナル・キャストでは唯一のアムネリス役、アニタ・ラチヴェリシュヴィリが充実した声と演技で舞台を盛り上げた。アモナズロ役のクイン・ケルシーも朗々として声でアイーダの父を好演した。

 

「リチャード・タッカー・ガラ」ネトレプコを始めスター歌手が次々と登場
日曜日の夜、カーネギーホールで行われた「リチャード・タッカー・ガラ」を観た。リチャード・タッカー(1913-1975)はメットで大活躍した名テノールで、いまは財団が毎年リチャード・タッカー賞を選んでお披露目のガラ・コンサートを行っている。
今年その賞を受賞したのはクリスティアン・ヴァン・ホーン。「メフィストーフェレ」に主演するなど活躍する若いバス・バリトンだ。ネトレプコ&エイヴァゾフ夫妻を始め、ハビエル・カマレナ、マイケル・ファビアーノ、クリスティアン・ゴーキーなど9人のスター歌手が次々とオペラ・アリアを披露する。ヴァン・ホーンも巧かったが、この日の歌手のなかでは、ソプラノのナディーヌ・シエーラに感心した。軽い声のコロラトゥーラ・ソプラノだが、美人で演技力もあり、歌も巧い。ドイツ・グラモフォンからデビュー・アルバムも出ていて、METを始め、スカラ座やベルリン州立劇場で「リゴレット」や「マノン」などを歌っている。今後の活躍を見守りたい。ところで、このコンサート、ほとんどがニューヨークの上流社会の人々で、財団に寄付している人の集りのようだった。顔見知りが多く、会場はあたたかいいい雰囲気。コンサートのあとは、バスが仕立てられ、レストランでディナーがあるらしい。METの雰囲気とはまた違ったアット・ホームなニューヨークの上流社会の雰囲気が興味深かった。

世界オペラ散歩15

 

石戸谷結子(音楽評論家)

Yuiko Ishitoya, Music Journalist
青森県生まれ。早稲田大学卒業。音楽之友社に入社、「音楽の友」誌の編集を経て、1985年から音楽ジャーナリスト。現在、多数の音楽評論を執筆。NHK文化センター、西武コミュニティ・カレッジ他で、オペラ講座を持つ。著書に「石戸谷結子のおしゃべりオペラ」「マエストロに乾杯」「オペラ入門」「ひとりでも行けるオペラ極楽ツアー」など多数。

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