フランス人に愛されるパリの日本人シェフ③「ピリグリム 」 西 英樹シェフ&斎藤 照允シェフ

カテゴリー/ PARIS |投稿者/ Gouret&Traveller
2019年01月29日

 Pilgrim (ピリグリム)

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エッフェル塔から歩いて15分ほど、パリ15区の住宅街に静かに佇む「ネージュ・デテ」。「夏の雪」という意味のロマンチックな名前は、夏の間に咲く白バラのこと。その姉妹店として2018年2月オープンした「ピリグリム」は、バラの花の名前つながりで、黄色いバラを示す。「巡礼者」という意味も併せ持ち、その名の響きが印象的だ。「ネージュ・デテ」と同じく15区に看板もなくひっそり建つ。「ネージュ・デテ」は2016年、ミシュラン一つ星となり、そしてこのたび発表された2019年のミシュランで、オープン一年にして、「ピリグリム」も一つ星を獲得。合わせて二つ星に輝いた。

 

 

 

 

 

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2店舗を率いる西英樹(にし ひでき)シェフは、1973年三重県生まれ。実家が和食屋を営んでおり、子供のころから手伝いをしていた。気づかないうちに料理人として仕事をしていく基礎ができていたのかもしれないと語る。上下関係に厳しい和食の世界を知っていたこともあり、西洋料理に憧れた。フランス料理といえば思い出すのは、結婚式にでてくる冷たい料理。それが本当のフランス料理だろうか? その疑問を解くために、フランス料理の世界に入った。日本各地のレストランで働いたあと23歳で渡仏。3つ星や2つ星を回り、働きたいと思ったレストランに履歴書をどんどん送った。結果的に当時三つ星の老舗「タイユヴァン」に採用される。業界の雄、オーナーのジャン・クロード・ブリナ氏の考え方、正統派のフランス料理、端正なサービス、すべて正真正銘の一流を学んだ。
その後、パラスホテル「ジョルジュ・サンク」の「ル・サンク」へ。フィリップ・ルジョンドル・シェフとともに「タイユヴァン」から移動して8年間働き、スーシェフを任された。さらにエリック・ブリファー・シェフのもとで5年間仕事をする。多くの料理人が働くなか、その重圧はすさまじいものだったという。なにしろメインポジションまでステップアップするのがたいへんな世界だ。日本では先輩後輩が重要だが、フランスでは能力のある人がポジションをとる。病気で休んだらもう終わりだ。次から自分の席はなくなる。しかし、だからこそのチャンスもある。当時はまだまだ怖いもの知らずだったと振り返る。短い期間に集中してあらゆる技術を習得しようとした。業者と直接取引をするのはスーシェフ。そのころの人脈が、自分で店を開く際におおいに役立った。スーシェフ時代は、好きな食材を使える貴重な経験をした。どんなトリュフがベストの状態なのか。その時に入手できる一番よい素材を知ることができた。おかげでフランス料理の食材と真剣に向かい合うことができるようになった。

 

 

 

 

 

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約13年にわたる「ル・サンク」の経験をいかし独立。「ネージュ・デテ」をオープンしたのが2016年だった。続いて程近くに貸店舗になっていた物件を見つけ、「ピリグリム」をスタートさせた。この店でのこだわりは、オープンキッチン。厨房から客席へ気を配りやすく、一番良いタイミングで料理をテーブルに出すことができるからだ。口にした瞬間にゲストの顔を見れば、おいしいと思ってくれているかどうかがわかる。
「ピリグリム」はビジュアルも華やかなクラシック料理が信条。皿数を減らして1皿にボリュームをもたせた。メニューは1か月ほどで変える。プリフィックスで、ランチが45ユーロ、65ユーロ、ディナーが90ユーロ。日本人はもう一度同じものを食べたいと思うが、フランス人は毎回違うものを求める。週に一度は訪れる常連も多く、早くもパリジャンに愛される店となった。

 

 

 

 

 

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「ピリグリム」のシェフ、斎藤 照允(さいとう てるみつ)さんは、2011年パリへ。「グラン・ヴェフェール」、「マンダリン・オリエンタル」ほかで修行、「ブルー・バランタイン」のシェフだった時に西シェフがスカウトし、二店目を斉藤シェフに委ねた。「ピリグリム」は、「ネージュ・デテ」と同じクオリティーで異なるタイプの料理を出す。「ネージュ・デテ」と「ピリグリム」を交互に味わいその違いを楽しんでほしいという。
さらに西シェフは、現在3店舗目を準備中だ。その挑戦にはホテルで働いた経験が役に立った。ホテル内には、ガストロノミー、ブラッセリー、ルームサービスなどの食材の使いどころがある。さまざまな使い方ができることで食材を無駄にすることがない。3店舗を共存させてホテルのように食材を循環させることをめざしている。二店あいついでの星獲得に新店オープン。西シェフの快進撃が続きそうだ。

 

 

 

前菜 ヒラマサ
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フランボワーズのビネグレットソース添え。ヒラマサの上に赤白を混ぜ華やかに大根サラダをのせた。アクセントにぶり大根をイメージして和食の技術も使い、表面を炙って燻製香をつける。

 

 

 

 

 

メイン パロンブ (モリバト)
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パートで包んでフォアグラとシャンピニオン、シューで巻いて炭を塗り込んで焼き上げた。ごぼうロースト、カリン、マーマレードを下にしく。キノコ、カカオを混ぜたものにリゾットがつく。

 

 

 

 

デザート ライチとココナッツ
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パティシエールが作る華麗なデザート。ライチとココナッツを使ったトロピカルな味わいをフランス風にアレンジ。プレゼンテーションも重視、試作を何度も重ねる。

 

 

 

 

 

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Piriglim
8 Rue Nicolas Charlet 75015 Paris
01 40 29 09 71
ランチ 12時〜14時 ディナー 19時半〜21時半
月曜休み
最寄り駅 メトロ6,12番線 Pasteur
http://pilgrimparis.com

Neige d’été 
12 rue de l Amiral Roussin 75015 Paris


01 42 73 66 66
ランチ12時〜14時半 ディナー19時半〜21時
日曜日と木曜日のランチ休み
最寄り駅 メトロ6,8,10番線 La Motte Picquet
http://www.neigedete.fr/fr/

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