吉野建シェフ新刊「魂のひと皿」著者インタビュー。 集大成としての一冊

カテゴリー/ GOURMET |投稿者/ Gouret&Traveller
2019年03月13日

小田原の「ステラマリス」で伝説の料理人となり、パリの「ステラマリス」でミシュランの星を獲得したフランス料理界の重鎮、吉野建シェフの著書「魂のひと皿 素材に命を吹き込む」が発売されました。30年にぶりなる新刊に込められた思いをうかがいました

 

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2013年夏にパリの「ステラマリス」を閉めて、日本に完全に帰国しました。パリではやり尽くした。後悔のないように帰ってきました。
今、弟子を育てていて感じるのは、私が参考にしたような伝統的なフランス料理の本がないんです。それなら自分で本格的な本を出したいと思いました。考えてみたら、料理本を30年出していない。今までの集大成を作ろうとなりました。これまでやってきたことをすべて詰めた本にしたいと考えました。80年代の「ロアラブッシュ」小田原の「ステラマリス」パリの「ステラマリス」で考案した料理を中心にしています。

 

 

 

 

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プロのシェフ向けでレシピも載っているので教科書のように使っていただけたらうれしいですね。昔作っていた懐かしい料理や海外で培った料理、最近のレシピでは、キジのトゥールトゥも入っています。フランスのある古典料理書で「トゥールトゥ・ド・フェザン」という名前を見つけ、そこからイメージを膨らませ創作した新作です。キジとフォアグラ、キジとキャベツ、キャベツとベーコンというように、頭の中の引き出しから相性の良い材料の組み合わせとレシピを取り出していき、この形になりました。上の写真の赤い肉のトゥールトゥはハード系でパンチが効いているのですが、キジのような白い肉は万人に受ける。そんなことを発見して作ってみた料理です。

私のスペシャリテはなんといってもジビエ。本書もジビエから始まっています。なかでも思い出の深い料理は、「リエーブル・ア・ラ・ロワイヤル」。フランスの長い歴史を持つコンテストで20点満点の19点を獲得し、2000年度の優勝。過去のベスト3に入ると賛辞を送られた思い入れ深い料理です。肉をとろけるように柔らかく煮込み、香り高く、厚みのある深いソースをまとわせていて、ロワイヤルの名にふさわしい気品ある姿に仕上げなければならない。伝統的技法を受け継ぎながらも、自分らしさを追求するために、20年という月日を費やすことになったレシピです。

 

 

 

 

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また、パリの「ステラマリス」で冬を飾る前菜として、熱烈に支持された「ちりめんキャベツとフォアグラとトリュフのテリーヌ」。小田原時代にイメージの片鱗はできていましたが、完成したのは1997年のパリ。キャベツとトリュフという昔からの取り合わせに、フォアグラのムースを包み込むことで、より一層の相乗効果が生まれました。

素材を見るとこうやってみようと思うイメージが浮かんできます。ウサギ一匹だけでも30種類ぐらいの料理が思い浮かびます。フランスではウサギの肉は鶏肉のようなもの。家庭料理でもあるのですが、ガストロノミックにもいろいろな可能性が広がります。
羊も爪、耳などを捨てるところがないくらいの料理法があります。ヒズメの料理は200年前の料理。今、作れる人はいないのではないでしょうか。素材を見てそんなことをイメージするのはことのほか楽しい時間ですね。

 

 

故郷 喜界島の食がすべての原点

フランスはやはり肉文化。フランス料理を学ぶとまず肉料理を覚えなければなりません。
故郷の喜界島では12月28日豚をしめて食べます。ジビエにのめり込むきっかけは、喜界島の豚が原点だと思います。
大晦日に骨付き豚を食べて余ったものは瓶に入れて塩を振って保存する、これはフランス・バスクなどでもある塩漬け豚なんですね。フランス料理のなかにりんごを焼いたものにブダンノワール、それにマスタードをつけた料理がありますが、喜界島の豚料理に似ているんです。

子供の頃には自分で鴨を一羽ずつ捕まえてきて母親に料理をしてもらったりしてましたし、伯母が沖縄で修行し、喜界島に食堂を開いたので、高校時代よく食べに行っていました。沖縄料理と喜界島のミックスでジビエは日常食だったんです。

素材を目で見て手で触り、匂いをかぎ、味わっているうちに化学反応が起こって何かが生まれます。古典主義料理を書物から学び、フランスの地方を旅しては郷土料理に関する頭の中の引き出しを増やしてきました。

発想の支えになるのは古い料理書です。エスコフィエの料理の手引きは重要ですが具体的な料理がわかりやすく記され、最も実用的に役立てているのが、ユルバン・デュボワの「Ecole de Cuisinière (料理の学校)」です。デュボワはフランス古典料理を完成させたアントナン・カレームの弟子で、フランスにロシア式サービスをもたらした理論派料理人でした。また「100 Façon Mouton(羊料理100種)」は、羊料理のレシピが100種類も掲載された珍しい本で、内臓料理もたくさん紹介されています。

こうして蓄えたすべての知識と体験は、野菜や動物、魚介が育ったときの健全さを皿の上に再び蘇えらせる瞬間のためです。
私にとって料理作りとは自分の魂を入れて再び命を与える作業です。あとはそれぞれの魂をどう入れていくかにつきます。

今は日本人だからこその日本料理を勉強したいと思います。魚料理の技術を学びたいと思います。和食の考え方を勉強してイメージを膨らませてフレンチの創作料理を作ってみたい。いろいろ夢を描いていますが、想像力をふくらませて、フュージョンフレンチをやってみたいですね。

 

 

 

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『魂のひと皿 素材に命を吹き込む』旭屋出版 6500円

吉野建 (よしの たてる)
1952年、鹿児島生まれ。日本の「レジャンス」などで働いた後、1979 年に渡仏し、「アルケストラート」「トロアグロ」「ジャマン」などの名だたるレストランで修行。1984 年に帰国し、「光亭」「ロア・ラ・ブッシュ」のシェフを経て1989 年、小田原に「ステラ マリス」をオープン。高い評価を得ていたがフランス料理への情熱から再度、渡仏。97年、パリ8 区に「ステラ マリス」を開店。2000年、優れた野ウサギ料理に与えられる「リエーブル・ア・ラ・ロワイヤル」最優秀賞を獲得。
2003年、東京に「レストラン タテル ヨシノ」を開業。現在は、銀座「レストラン タテル ヨシノ 銀座」、汐留「タテル ヨシノ ビズ」。2011年、東京・広尾に「La Tortue」を開店。
また国内にプロデュース店舗多数有り、和歌山県「オテル・ド・ヨシノ」、香川県「テラスレストラン 海の星 Etoile de la mer」、2016年9月には大阪に「メゾン タテル ヨシノ」を開業。

 

 

 

 

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予約03-3563-1511
東京都中央区銀座4-8-10 PIAS GINZA 12F
東京メトロ各線 銀座駅 徒歩2分 /東京メトロ日比谷線 東銀座駅 徒歩2分
ランチ 11:30~15:00 (L.O.14:00) /ディナー 18:00~23:00 (L.O.21:00)
無休 (1月1日を除く)
【ディナー】10000円~【ランチ】5000円~

 

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