オスカー俳優2人の演技対決が見どころ。ヒッチコックを彷彿とさせる心理サスペンス『隣人たち』
2026年07月18日
『隣人たち』
7月24日(金)全国順次公開
アン・ハサウェイとジェシカ・チャステイン、オスカー俳優2人の演技対決が見どころのサイコスリラー。ベルギー・フランス合作映画『母親たち』のリメイク版で、1960年代のアメリカ郊外を舞台に、親友同士である2人の主婦の間に生じる疑念と狂気を描く。

まず、冒頭60秒で掴まれる。アメリカの60年代のトーンで描かれたクスリーン。郊外に一戸建てを持ち、車で通勤し、大型スーパーで買い物をするという新しいアメリカンドリームのライフスタイル。埃ひとつない家、完璧にカールされた髪、エナメルの小さなバッグ、キャッツアイのサングラス。 ジャクリーン・ケネディを彷彿とさせる“エレガントな主婦像“が映像から香ってくる。 しかしその美しさは、蓋をされた恐怖の包装紙でしかない。

大都市郊外。隣同士に住む親友セリーヌ(アン・ハサウェイ)とアリス(ジェシカ・チャステイン)。裕福で、同じ年頃の息子を持ち、完璧な人生を送っていたはずの2人。
ある日、セリーヌが目を離した隙に息子が転落死する。ここから“理想“は音を立てて崩れ始める。
身内を亡くすことで精神が不安になってしまうことは、誰しも経験することだろう。セリーヌは喪失感に苦しみ、自分の過失だと罪悪感に苛まされる。次第にアリスの息⼦・テオに⼼を通わせるようになっていく。その様⼦に疑念を持ち始めるアリス。

独自のカメラワークと巧みな心理描写で観客を極限の不安と興奮に陥れる演出術は、ヒッチコックを彷彿とさせる。登場人物と観客の視点を操作し、日常に潜む恐怖を見る者に体感させる。
古き良き1960年代アメリカのクラシカルなファッションも、本作の大きな魅力。当時の洗練されたスタイルがスクリーンいっぱいに広がり、物語をより華やかに彩る。この時代のアメリカで、妻としての役割を完璧にこなすために、ありのままの自分を隠す鉄の鎧である。その“完璧さ“が強いほど、内側の崩壊が怖い。一番支えてほしい時に説得もなく入院させられ、食事も共にせず、亡き子の部屋で一人酒を飲む夫。

「妻が目を離した」ことを態度で責める無言の暴力。 子供を亡くした悲しみに、夫に否定された孤独。
デルホム監督の巧みなカメラワークは、観客の心理を容赦なく揺さぶる「悪意」に満ちている。 テラスの手すり、半開きの窓、固く閉ざされたドアといった、本来であれば見慣れたはずの日常的な舞台装置が、彼のレンズを通した瞬間に不穏な凶器へと変貌を遂げる。
後半、疑心暗鬼になったアリスの行動がエスカレートしていく。 そして2人は狂気と妄想の渦に飲み込まれる。幾重にも張り巡らされた伏線が紡ぎ出すのは、予想をはるかに超えた終幕だ。

監督/撮影:ブノワ・ドゥローム
アリス:ジェシカ・チャステインセリーヌ:アン・ハサウェイサイモン(アリスの夫):アンデルシュ・ダニエルセン・リーダミアン(セリーヌの夫):ジョシュ・チャールズ
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