進化するトロント 旬の楽しみ方①夜通し街中でアート三昧「ニュイ・ブランシュ」
2018年10月26日
巨大地下街をもつモダンシティ、金融、商業の中心地として栄えるほか、アートや演劇や映画などが盛んな文化都市としても知られるトロント。ダウンタウンの南に広がるオンタリオ湖、日帰りで行けるナイアガラの滝など豊かな自然にも触れることができる多彩な魅力を持つトロントはいま進化中。カルチャーにネイチャー、グルメも満喫、盛りだくさんなトロントの今を4回にわたりナビゲート。次の旅はトロントに飛びたくなる!
「ダイバーシティがカナダを強くしてきた」とカナダのトルドー首相はいう。人種の多様性=ダイバーシティに富んだ移民国カナダ。ヨーロッパやアジアから多くの移民が移り住んできたトロントでは、さまざまな異文化が融合する斬新な文化が生まれ続けている。歴史が浅い新しい国であるカナダは、それぞれの人種がルーツとしている文化も色濃く残っている。
たとえばカナダ第一の都市、オンタリオ州トロントは、イギリス植民地でスコットランド人やイギリス人のオリジンが多い。いたるところで英国風の雰囲気が醸し出される。一方、隣にあるフランス系ケベックへ州をまたぐと一変して目に映る看板はフランス語となり、風景はすべてがフランス様式になる。
そんなマルチカルチャーの文化が生まれるカナダでは、あらゆる価値観が自然に受け入れられている。トロントでコンセプチュアルなモダンアートが好意的に受け入れられているのは、そんな背景があるからだろう。
演劇、音楽、映画、アート、すべてが刺激的なトロントでは、マルチカルチュラルな数々のイベントが開催される。夏には、毎週末のようにパレードやフェスティバルが行われている。ゲイ都市としても有名なトロントだからこその「プライドパレード」、カリブ諸国からの移民によって華やかに開催される「カリバナ」。ほかにもさまざまな人種のコミュニティがあり、一年中多くのイベントで街は熱気をおびる。
ハリウッド映画をはじめ、テレビドラマやドキュメンタリーなど年間5000本以上のロケ撮影が街のあちらこちらで行われているといわれており、映画産業も文化的大きな柱。秋にはトロント国際映画祭が開催される。
アート・シーンの賑やかさは、ニューヨークにも負けないかもしれない。美術館も充実している。カナダ有数の美術館、カナディアンアートに触れる Art Gallery of Ontario (アート・ギャラリー・オブ・オンタリオ、http://ago.ca/)ほか、ROMの愛称で親しまれているRoyal Ontario Museum(ロイヤル・オンタリオ博物館、https://www.rom.on.ca/en)は、展示品が600万点を超えるカナダ最大の博物館。カナダで発掘された恐竜の骨格の標本、中国仏教画コレクション、古代エジプトギャラリーなどの幅広い展示で人気だ。
この美術館のイベントとしてぜひ参加してみたいのは、不定期に行われる館内全体がバー・スペースに変貌する金曜のパーティナイト。即席DJブースにアルコール販売のカウンターがつくられ、クラブ仕様に。カップルがティラノサウルスの骨格を眺めながらカクテルを楽しむというシュールな光景が繰り広げられるのだ。なぜか恐竜の前でサンバを踊る一行に出くわすことも不思議ではない。
ほかにもMoCAの愛称で呼ばれるコンテンポラリー・アート美術館(The Museum of Contemporary Art Toronto Canada) も近年オープン。この美術館を中心にギャラリーが散在し、アート散歩を堪能できるエリア、トライアングル・ジャンクションが生まれた。この地区に関しては次の回でご紹介予定。トロントの最新アート情報をお楽しみに。
そんなカルチャー都市トロントで行われる、巨大アートイベント「Nuit Blanche」(ニュイ・ブランシュ)。 秋の一夜、トロントの街全体が大きなミュージアムになる。「Nuit Blanche 」は、「コンテンポラリーアートの祭典」。英語で言うと「White Night」、つまり「白夜」の意味で、街中に出現するアートを夜通し楽しむイベントだ。パリで2002年に始まったこのイベントは世界的広がりを見せているが、トロントでは2006 年に始まって以来、毎年 9 月の最終週もしくは 10 月の第 1 週目の土曜日に催されている。 2018 年は 9 月 29 日(土)に開催、「サンセットからサンライズまで眠らない」を標語に掲げ、日没とともにスタートし、翌朝の日が昇るまでイベントが続く。 建築物を使ったアート、音や光の効果を利用したインスタレーション、音楽やダンスとのリミックスなど、観客が参加することで完成するインタラクティブアートとして街ぐるみの熱狂が夕方から朝までダウンタウン中心に続く。
毎年、国内外から 300 名以上のアーティストを招待して作品を展示しており、2018 年には 75 以上もの現代アートがトロントに出現した。
ほとんどの作品が、ダウンタウンを中心に、TTC(トロント公共交通機関)を利用して行ける場所にある。ビルの壁やストリートを使用したアートも多いので、地図を持って宝探しのわくわく感にも似た好奇心をもってアート作品に出会いにいく。通りという通りが歩行者天国となり、アートを探す人々で大白熱。
美術館も一晩中オープンし、祭りを盛り上げる。
カナダ国内外のアーティストによる作品から、キュレーター作品・スポンサー作品・個人作品などがトロント中に展示される。イベント・センターにて、当日の展示を詳しく記載したマップが配布されるので、地図を見ながら初めての街でも楽しくアート巡りを堪能できる。アート好きならずとも華やかなトロントの夜祭りを経験できるのだ。来年はぜひともこのお宝探しに参加してみよう。
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photos&text Mikiko Yamashita
「石戸谷結子の世界オペラ散歩⑬ バイロイト音楽祭 聖地で聴くワーグナー」