「石戸谷結子の世界オペラ散歩」グラフェネク音楽祭、お城の庭園でカウフマンを聴く

カテゴリー/ CULTURE |投稿者/ Gouret&Traveller
2022年09月28日

「2022年 夏の音楽祭めぐり」

クラシック音楽、なかでもオペラを専門に、多数の評論を執筆。難しく思われがちなクラシック音楽をわかりやすく解説し、多くのファンを持つ音楽ジャーナリスト、石戸谷結子さんが、世界の劇場を巡りオペラの楽しみ方を教えてくれる連載、「石戸谷結子の世界オペラ散歩」、コロナ禍を経て久々に再会。今回は、2022年グラフェネク音楽祭のカウフマン出演「フィデリオ」を中心にレポートしていただきます。

 

グラフェネク音楽祭

「行くべきか、否か」それが大問題だった海外への旅行。ぎりぎりまで迷ったあげく、ある日「えいっ」と決断して、行って来ました3年ぶりのザルツブルグ音楽祭。行きはよいよい、するりとウィーン空港に降り立つことができたのだが、帰りはやっぱり怖かった。

いまは撤廃された帰国時72時間前のPCR検査のおかげで、まる1日は空港内のホテルに滞在しなければならなかったのだ。それでも無事に帰国ができました。

 

お伽のお城の庭園で、カウフマンを聴く

ヨナス・カウフマン Sony Classical

今回の旅の目的は、ザルツブルグ音楽祭とウィーン近郊に位置するグラフェネク音楽祭。なにしろ、この音楽祭にはご贔屓のヨナス・カウフマンが出演する。そう聞けば、無理を押してでも行かなくては。812日、オーストリア航空でウィーンへ。カウフマンが出演する814日まで体調を整え、当日の午後、バスでグラフェネクへ。

この音楽祭はピアニストのルドルフ・ブッフビンダーが2006年に創設。8月から9月にかけて、ウィーンの近郊バッハウ渓谷の近くにあるグラフェネク城の広大な庭で、野外音楽祭が開催されている。ウィーン楽友協会の裏から専用の往復バスで約1時間の行程だ。

 

 

グラフェネク音楽祭 ©️ Grafenegg festival

まるでお伽のお城のようなグラフェネク城は、かつてはメッテルニヒ家の所有だったが、いまは音楽関係の展示場になっている、音楽祭の期間中はお城の中庭で無料のコンサートも行われる。城の周辺は白ワインの産地で、ワインバーやショップもあるので、夕方の開演までは、夏の花が咲き乱れる庭園で、ワイン飲みながら、ゆっくり時を過ごすことができる。もちろん、ピクニックも。無料の長椅子がたくさん置いてあるのも嬉しい。

 

 

 

 

野外アリーナ「雲の塔」©️Klaus Vyhnalek       Grafenegg festival

会場は「雲の塔」と呼ばれる野外アリーナと室内会場のオーデトーリアムがあり、カウフマンが出演する、ベートーヴェンのオペラ「フィデリオ」は野外での上演。まだ空が明るい午後7時半には、野外ホールは超満員の盛況。やはりカウフマン人気が高く、半年ほど前からチケットはソルドアウトだった。じつは主役のレオノーレを歌うアニヤ・カンペがコロナで降板、次のソプラノも感染して、なんと3人目のシネイド・キャンベル=ウォレスがレオノーレを歌った。コロナ禍はヨーロッパの音楽祭も直撃しているのだ。

 

 

 

 

「フィデリオ」©️Sebastian Phillipp    Grafenegg festival 

「フィデリオ」は台詞の入る、ジングシュピールという形式だが、この日の版は台詞をカットし、代わりに俳優がストーリーを語る。ドイツ人文学者で評論家のウォルター・イェンスが書いた「ロッコの物語」を読み、演じるのだ。「レオノーレ」の1,2版と最終稿の「フィデリオ」を組み合わせた、ちょっと変った版での上演だ。指揮はヤープ・ファン・ズヴェ―デンで演奏会形式。カウフマンが歌うフロレスタンは第2幕の冒頭から登場する。彼はソット・ヴォ―チェを巧みに駆使して歌いはじめ、ドラマチックなアリアを熱唱した。

3年ぶりに生で聴くカウフマンの声に、無理にでも、日本を脱出して良かったと感動した。

グラフェネク音楽祭は、カウフマンを始め、クラウス・フローリアン・フォークトやネトレプコなど超一流スターが出演する。今年は9月に入るとサイモン・ラトル指揮のロンドン・フィルやジョイス・ディドナートが話題のプログラム、「エデン」で出演した。

音楽祭のレジデント・オーケストラは佐渡裕が指揮するトーン・キュンストラー・オーケストラ。このオーケストラと共に、来年の3月には人気ピアニストの反田恭平も出演の予定だ。創立から16年が経ち、ますます存在感を増し人気が上昇しているグラフェネク音楽祭だ。

 

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