『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』ドワイヨン監督が描いた彫刻家の愛と苦悩の人生
2017年10月31日
『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』
11月11日(土)新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマほか全国公開
『地獄の門』『考える人』などの作品で知られ、「近代彫刻の父」と称される19世紀フランスの彫刻家オーギュスト・ロダン。没後100年を記念してパリのロダン美術館全面協力のもと制作され、ロダンの芸術にかけた愛と苦悩の人生を追う。2017年カンヌ国際映画祭のコンペティション作品部門にてお披露目された話題作だ。
ロダンの作品の中でも最も革新的な「バルザック像」がこの映画の重要なモチーフ。彼が7年もの間、無数のデッサンや粘土の像を制作し続け、紆余曲折を経て完成の確信を得るまでの時間を描いている。1897年、近代彫刻の幕開けを飾ったこの彫刻作品への評価は紛糾したが、今日では傑作として確固たる評価を受けている。
いくつものエピソードの積み上げによってジャック・ドワイヨン監督が描くロダン像は、心理描写が抑えられ、ドラマ仕立てというより、ドキュメンタリータッチの硬質な一本になっている。
1880年 パリ。長きにわたる下積み時代ののち、ロダンは(ヴァンサン・ランドン)は、42歳で国から大きな仕事を任される。与えられたアトリエで、ダンテの『神曲』を題材とした『地獄の門』のデッサンを起こし造形を探る。しかし、思惑通りに進まず、作品はなかなか完成しなかった。
そんな折り、弟子入りを希望をするカミーユ・クローデル(イジア・イジュラン)がやってくる。2人は惹かれあい関係を深めていくが、ロダンには内縁の妻ローズ(セヴリーヌ・カネル)がいた。
カミーユは芸術家としてほとばしる才気を持ちながら、世間には認められなかった。カミーユはローズへの嫉妬やロダンの成功への妬み、認めてくれない社会への怒りから、ロダンを激しくなじる。
内縁の妻 ローズと別れられず、カミーユとの関係も断ち切れないロダンであったが、カミーユに結婚を迫られ、ロダンの気持ちも変化していく。創作活動と愛の狭間で揺れ動くロダンの心。やがて、彫刻家として名声を得たいと願うカミーユはロダンから離れようとする。カミーユへの愛の行き場を失い、モデルたちと官能の世界に溺れるロダン。ロダンの歩む先は、明確な答えを持たぬ孤独な道だ。
『ティエリー・トグルドーの憂鬱』(15) でカンヌ国際映画祭、セザール賞の主演男優賞をダブル受賞したフランスきっての演技派ヴァンサン・ランドンは、ロダンを演じるにあたり、彫刻とデッサンに8か月に打ち込み、陰影豊かにロダンの魂を演じ切った。
監督・脚本:ジャック・ドワイヨン 撮影:クリルトフ・ボーカルヌ 衣装:パスカリーヌ・シャヴァンヌ
出演:ヴァンサン・ランドン、イジア・イジュラン、セヴリーヌ・カネル
2017年/フランス/フランス語/カラー/シネスコ/120分
配給:松竹=コムストック・グループ
©Les Films du Lendemain / Shanna Besson
文*山下美樹子