フランス人に愛されるパリの日本人シェフ②「Pages 」手島竜司シェフ
2019年01月11日
凱旋門から歩いて10分ほど、閑静な住宅街に入っていくと寡黙な佇まいのレストランがある。つつましやかな「Pages」という看板の扉を開くと、静謐な外観からは想像できないような熱気で包まれる。オープンキッチンの活気が満席の店内中にあふれているのだ。その厨房の指揮官が、手島竜司シェフ。キッチンの中にゲストが入って食事をするようなイメージで内装を考えた。スタッフは全員ゲストと直接対面することになる。
手島シェフは、若いころから早く独立したいという気持ちがあり、手に職をつけようと思っていた。数々のアルバイト経験の中でも飲食の世界へいこうかと漠然と考えていた18歳のとき、「コック」という響きに憧れ、料理人になろうと決心。地元・熊本で料理人として独立しようと思い、19歳で地元のフランス料理店「高田屋」(2015年に閉店)へ。フレンチはかっこいい、スタイルを大事にしている、フレンチをやろう、そしてワインを知りたいと勉強を始める。ワイン好きが高じて23歳でソムリエの資格も取得した。当初、ソムリエになりたかったが、思ったより料理のほうが向いていると、26歳のときにワーキングホリデーで渡仏。地方の星付きレストランやパリの名店「ルカ・カルトン」、「Pomze(ポムズ)」などでキャリアを積んだ。
そのかたわら、休日には高級精肉生産元(ユーゴ・デノワイエ)や高級生鮮食品卸会社などで仕事をしながら、食材の研究をする。魚のことは、釣りから神経締め、さばき方までの知識があるが、肉のことはわからない。どこの部位はどういう扱いでどんな料理にできるか、牛一頭さばけるようにとプロの元で研鑚を積む。魚の知識があるから、肉を理解をしているから、自分だけのレシピをが生まれる。さらに野菜の生産者もまわってさまざまな教えを請う。使う素材とそれに合う道具選びから考えないと自分だけのオリジナルのレシピを作ることはできない。シェフ御用達の「テロワール・ダヴニール」(料理用具専門店と食材店)の立ち上げを手伝ったのも研究の一環。おかげでいろいろな生産者とのつながりが増え、今でもその縁を大切にしているという。
2014年に「PAGES」をオープン、翌年には隣にセカンド店となるワインバー「バー・ア・ヴァン116」をオープン、さらに一年半後には一つ星を獲得と、快進撃を続ける。
シェフとはビジネスができて、人が使えて、料理ができて1人前。資金は健全な店を作るのに1番必要な要素だ。ガストロノミックレストランの「パージュ」で使わない部位のムダをなくすために、ワインバーのほか、ケイタリングも含めて、今後はラボも同時に運営していく予定だ。料理人だけでなく、サービススタッフ、生産者たちもスポットを浴びることができるような環境づくりにも力を入れていきたい。
今はフランスの食材だけで日本人のシェフならではの何かを表現したい。素材を「茹でただけ」といったような日本的な発想の料理だ。科学的アプローチを頭に入れた上で、経験を駆使して、食材のおいしさと香りを引き出す調理法に挑戦している。たとえば、日本人は発酵食品が好きだが、うまみの強いビスクに、チーズを合わせる。ヴァンジョーヌをつなぎに合わせるとオマールに醤油をたらしたような口当たりがするという。フランスの技法を使いながら日本のおいしさをフランス料理のかたちで新しく表現していく。
現在は、コース一本で、ランチが55ユーロ、85ユーロ、ディナーは150ユーロ。別料金でキャビア、トリュフや和牛をオーダーできる。今後はゲストと相談しながら作るオートクチュール的なメニューを出していきたいと考えている。
機内食の監修や日本でのフェア、地元熊本の地震の際のボランティアなどさまざまな形で食に対する考えを発信している。現在、手島シェフのカフェ「バー・ア・ヴァン116」のメニューを東京で食べることができる。銀座、自由が丘にある、NY発の体にやさしいハンバーガー「ベアバーガー」にて、1/31まで手島シェフプロデュースの冬期限定メニューが登場する。希少価値の高い尾崎牛のパテに黒トリュフソース、香辛料とオレンジ風味の赤のホットワインもついて2000円。パリに行かずとも手島シェフの味を体験できる機会をぜひ利用してみてほしい。
ベアバーガウェブサイト
http://www.bareburger.co.jp/
★Pages(パージュ)
4 Rue Auguste Vacquerie, 75116 Paris, France
Tél :01 47 20 74 94
営業時間 : 火〜土 12:00 – 13:30 19:30 – 21:00
定休日 :日、月
最寄メトロ : 6号線 Kléber
http://www.restaurantpages.fr/