フランスの旅、ネクストディスティネーションは、オー・ド・フランスでアート三昧!
2016年11月08日
フランス北部、パリからの小旅行に最適なのが、オー・ド・フランス(Hauts de France)。シャンティイ城、アミアン、リールなど日帰りで十分楽しめる多様な観光スポットが多々あります。点在する知る人ぞ知る美術館での名作鑑賞もその一つ。世界遺産の聖堂や鐘楼、フランドル風の歴史的町並み、骨董市など、多彩な芸術に触れられる、オー・ド・フランスでアート三昧してみませんか。
パリから30分、シャンティイ城 コンデ美術館で名作鑑賞、庭園散策

シャンティイ城 © Vincent Colin(上) © Jean-Louis Aubert(下)
パリから北駅よりRERで45分、TERで25分ほどで行くことのできるシャンティイにあるシャンティイ城(Château de Chantilly)へ。シャンティイの駅からは徒歩約30分。無料シャトルバスも利用できます。
フランス最大規模の個人コレクション、城内にある「コンデ美術館」 (Musée Condé )、広大な庭園、ヨーロッパ随一の美しい大厩舎 (Grandes-Écuries)など見どころ満載です。
コンデ美術館 ©Sophie Lloyd
コンデ美術館のコレクションは、フランス最後の国王の息子であり、当時最大のコレクターと目されたオーマル公爵 が収集した美術品。パリのルーヴル美術館に次いでフランス第2の規模を誇る絵画コレクションとなっています。ラファエルやボッティチェリ、プッサン、アングルなどの名作を満喫できます。
馬の博物館
また、「馬の博物館」(Le musée du Cheval)があり、馬の歴史や馬・競馬に関するオブジェや資料が展示されています。屋外のデモンストレーション場で開催される20頭ほどの馬やロバ、ポニーと7名の騎手による騎馬ショーも見応え満点です。

シャンティイ城全景 © Jean-Louis Aubert
シャンティイ城の庭園は、ヴェルサイユ宮殿の造園家として有名なアンドレ・ル・ノートル (André Le Nôtre )の設計。小道や遊歩道を花々を愛でながらのんびり散策して心休むひとときを。
また、イギリス式庭園、中国式庭園の中に再現されたノルマンディー風の村は、マリー・アントワネットがヴェルサイユ宮殿にプティ・トリアノンを作る際に取り入れたとされています。
クレーム・シャンティイ
レストラン、デュ・アモー (Restauraut du Hameau)では、名物のクレーム・シャンティイに舌鼓。ルイ14世に仕えた宮廷料理人のフランソワ・ヴァテールが、シャンティイ城で初めて生クリームに砂糖を加えて泡立てる技術を開発したとされ、この新しいクリームが「クレーム・シャンティ(Crème Chantilly)」と呼ばれるようになったそうです。日本のケーキでもお馴染みの甘い生クリーム。本場の味を体験してみませんか。
アミアンで見逃せない、大聖堂、マティス美術館、ジュール・ヴェルヌ記念館
アミアン大聖堂 © Benjamin Clipet
アミアンへは、パリ北駅から電車で約1時間。まず一番に訪れたいのが、世界遺産に登録されているアミアン大聖堂です。13世紀に建てられた、フランスで最も身廊の高い大聖堂で、夏とクリスマス時期に訪れると、美しいイルミネーションの装飾で輝くファサードが圧巻です。
県立マティス美術館 © FLAMENT Anne-Sophie
「県立マティス美術館」は、マティスの出身地がフランス北部のル・カトー・カンブレジであることから、晩年、82点の作品を寄贈。当初、市庁舎に創立され、その後、現在のフェヌロン邸に移されました。マティスの作品をじっくり鑑賞するには最適な場所です。マティス以外にも、ピカソ、シャガール、ミロ、ジャコメッティの作品も展示されており、見応えも十分です。
ジュール・ヴェルヌ記念館©Anne-Sophie Flament
意外と知られていないのが、『海底2万マイル』を書いたSFの父とも呼ばれるジュール・ヴェルヌの出身地であることです。ヴェルヌはアミアンに34年間暮らし、16年間にわたって市議会議員も務めました。19世紀に建てられた豪華な邸宅のなかの一部がヴェルヌの記念館となっています。SFを思わせる天文台塔が目印。館内には、ヴェルヌの書斎や遺品が残されています。『八十日間世界一周』をはじめとする数々の「驚異の旅」シリーズをはじめ、30以上の作品がこの書斎から誕生しました。
リールで美術館三昧。充実の宮殿美術館や近代美術館、郊外のランスのルーブル美術館分館
リール市庁舎時計塔©Nicolas Bryant
次にアミアンからリール(Lille)に向かいます。電車で約1時間半、パリからはTGVで約1時間。フランス第4の都市であるリールには、美しい鐘楼や、ルーヴルに次ぐ規模を誇る「リール美術館」など見どころが多数あります。大国に囲まれ複雑な歴史をもつこの町では、今もフランドル独特の多様な建築様式を見ることができます。
リール市庁舎の高さ104mの時計塔は、伝統的な造りと装飾にフランドル地方の繁栄の歴史が刻まれており、ベルギーとフランス北部に点在する32の鐘楼群は、ユネスコの世界文化遺産に登録さています。建設された時期が11~17世紀と長きにわたっているので、ゴシックやルネッサンス、バロ建築様式などさまざまな様式の塔を見ることができます。市庁舎、時計塔ともに入場可能。時計塔に登ると、塔の上からパリ門やリールの市街が一望できます。
リールでは、なんといっても美術館巡りがおすすめ。「宮殿美術館」や「近代美術館」があり、郊外のランス(Lens)には、「ルーブル美術館の分館」もできるなど、アートの街として賑わいを見せています。

リール宮殿美術館
まずは、パリのルーブル美術館に次ぐ規模を誇る、フランス第2の美術館、1782年に創設された「リール宮殿美術館」(Palais des Beaux-Arts de Lille)へ。新古典主義様式の外観で22,000平方メートルもの展示スペースには、中世から20世紀までの陶磁器、デッサン、彫刻、絵画など、多岐にわたるコレクションが72,000点も展示されています。
2階の絵画コーナーには、ルノワール、モネ、ピカソなどの作品を含む、16~20世紀の画家による500点以上の絵画が展示されています。ルーベンスやファン・ダイクなどのフランドル絵画のコレクションも充実しており、ルーベンスの『キリスト降架』は必見です。
ラ・ピッシーヌ © Alain Leprince
また、知られざる美術館として注目なのが、閉鎖されていた市営プールがリノベーションされ、アールデコ様式の美しい美術館に生まれ変わった「ラ・ピシーヌ」(La Piscine)。
プールは水を湛えたまま残され、その両脇には彫刻が展示されています。シャワールームは展示室へ改造され、かつてプールとして使っていた部分は展示室として使われています。
展示室の上部のステンドグラスから光が入る幻想的な光景が広がります。展示作品は、20世紀の陶磁器のコレクションや近代絵画等が中心。陶芸に目覚めた晩年のピカソの貴重なコレクションも展示されています。
アートイベントも多く、2年おきに開催されるリール 3000 (Lille 3000) は、コンテンポラリーアートのインスタレーションや大道芸 プロジェクションマッピングなどで町全体がアートギャラリーに変貌します。

ルーヴル・ランス © 2024 Musée du Louvre-Lens Manuel Cohen2
さらに、パリから高速列車TGVで約1時間の距離にあるフランス北部の町、ランスには、2012年にルーヴル美術館の別館、「ルーヴル・ランス」がオープン。ランス駅から徒歩約20分、常設展は無料、企画展は有料です。
常設展の展示スペースは本館から貸与された作品を展示する「時のギャラリー(La Galerie du Temps)」と呼ばれる広大なスペースに時系列でさまざまな地域の美術品を展示。約5,000年におよぶ芸術史を時系列に沿って展示し、同時代の異なる文明や文化の作品を比較しながら鑑賞できる、ユニークな展示スタイルが人気です。
ちなみに、美術館のデザインは日本の建築家ユニットSANAAが担当しています。
知られざる美術館の宝庫、オー・ド・フランス。次回のフランスの旅では、パリから日帰りの小旅行にでかけて、美術を堪能をしてみてはいかがですか?



