1970年代以降の現代作品にフォーカスした世界初の展覧会「カルティエ、時の結晶」
2019年10月02日
「ネックレス」カルティエ、2018年
ゴールド、ダイヤモンド、エメラルド、スピネル、ガーネット、ターコイズ、オニキス
個人蔵 Vincent Wulveryck © Cartier
東京・六本木の国立新美術館で、ジュエリーメゾン・カルティエの大規模展覧会「カルティエ、時の結晶」が2019年12月16日まで開催されている。
1847年にパリで創業された、世界を代表するジュエリーメゾン「カルティエ」。今回は、これまでに世界の著名な美術館など34か所で開催されたさまざまな「カルティエ展」とは一味違う展覧会となる。
世界で初めて1970年代以降に創作された現代作品に焦点をあてた展示に注目したい。
また、展示総数およそ300点の約半数にあたる作品が、世界の個人所蔵作品。通常は公開されることのない作品を目にする貴重な機会となる。
本展監修者であり、国立新美術館の本橋弥生主任研究員は「時を超えた作品相互の関係に注目してほしい。時が行きつ戻りつメビウスの輪のような展覧会」と語る。
従来は歴史順やあるストーリーに沿って構成されることの多かった「カルティエ展」だが、本展では、デザインや色なども考慮し、対比的に配置しながら、作品同士の関係性をひもといていく。
また、新素材研究所 / 杉本博司+榊田倫之による会場デザインが新鮮だ。美術展の会場構成を本格的に手がけるのは今回が初となる杉本氏と榊田氏。無垢素材の木や石、ガラス、川島織物セルコンと開発したファブリックを用いて、組み立てたインスタレーション空間。ジュエリーを飾るデコルテ部分は、屋久杉などを使い、仏師が掘り上げた。仄暗い会場にひときわ艶やかにジュエリーの数々が光を放つ。
杉本氏によると、「宝石とは人間だけが興味を示すもの。そして美意識の発見とは、人間を成立させる心の神秘。神秘を浮き立たせるデザインをゼロから考えた」。
《「ミステリアス ダブルトゥールビヨン」ポケットウォッチ》カルティエ、2016年
ホワイトゴールド、スティール、サファイア、半透明ブラックエナメル(ポケットウォッチ)、
ミステリアス ダブルトゥールビヨン コンプリケーションロッククリスタル、黒翡翠、スターリングシルバー(台)
個人蔵 Amélie Garreau © Cartie
「ヘア オーナメント」カルティエ パリ、1902年 プラチナ、ダイヤモンド、カルティエ コレクション Nils Herrmann, Cartier Collection © Cartier
会場は三章に分かれ、序章「時の間」という象徴的な空間を取り囲むように、配置されている。一章では布で仕切られ、二章は石の積み重ね、最終章では彗星の楕円軌道を思わせる長さ16mにおよぶ展示ケースが登場する。
「序章」に続く「色と素材のトランスフォーメーション」「フォルムとデザイン」「ユニヴァーサルな好奇心」という3つの章は、カルティエのイノヴェーションに満ちたデザインの世界を探求できる。壮大な時間を経て生成され奇跡的に見出された宝石と、世界各地の文化や自然物など万物から着想を得たデザイン。世界の縮図であり、地球や文明との時空を超えたカルティエのジュエリーとの対話を体験してみてはいかがだろうか。
カルティエ、時の結晶
2019年10月2日〜12月16日
国立新美術館 企画展示室2E
東京都港区六本木7-22-2
03-5777-8600 (ハローダイヤル)
10:00~18:00(金土 〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで
火、10月23日休館(10月22日は開館)
料金:一般 1600円 / 大学生 1200円 / 高校生 800円 / 中学生以下無料