北海道・十勝のオーベルジュ「ELEZO ESPRIT」で、命の尊さをいただく唯一無二の贅沢ステイ

カテゴリー/ GOURMET |投稿者/ Gouret&Traveller
2023年01月05日

ひと皿に盛られた鹿の心臓。これこそが「サクレクール(聖なる心臓)」だ。一つ一つ余計なものを排除していき、この肉料理だけが光る場所。海に面していても窓はない。照明や壁紙も肉を際立たせる仕掛けのみ。命の恩恵を祈りにも似た想いでいただく、そんな人々がわざわざ訪れる地、北海道・十勝の豊頃町、オーベルジュELEZO ESPRIT

太平洋を眼前に望み、背に広がる荒野に立つ凛とした姿の白亜の館。扉が開くと、長く細いアプローチを抜ける。生を物語る写真を壁面に眺めながら導かれたどり着くのは、この場所の全容を知る映像が流れるラウンジだ。「神々の黄昏」の弦が渦巻くなか、生き物の棲む森に迷い込む。ヴォータンがヴァルハル(天上界)に昇り、神々の終焉の準備を始めるかのように命は終えていく。なんとワグナーが似合う空間なのだろうか。

終着点に到達するまでの高揚感はこのリチュアルを通過することで次第に最高潮へと上りつめる。やがて、そのひと皿が登場するカウンターにたどり着くと、ゲストが向かい合うのは、その皿の奥から広がるAtoZの背景。佐々木章太さん(写真下)が繰り出す命の物語なのだ。

 

 

狩猟から豚や鶏の飼育、生ハムやパテなどのシャルキュトリと熟成肉の生産加工、レストランに至るまでを、一貫して自社で行う「食肉料理人集団エレゾ」が展開するELEZO ESPRIT。いよいよ202210月のオープンを迎えた。食肉の美学、人生哲学の全てを盛り込み表現する、この地にしかない最高の豊かさ。

宝物はこの環境、そしてそこで働くスタッフたちである。生き物と直接対話することができる土地でオーベルジュを作る目的を果たす時がきたのだ。

日々、命や自然と対峙する中で得られる感性、自然美、食肉の美学はじめ、人生哲学のすべてを盛り込み表現するステージである。

 

 

 

 

2005年に24歳で「エレゾ」を立ち上げてから3年余り、1人奮闘していた。一緒にやろうから始めて、ハンターを雇用。そこから1 2年、彼と横浜からきた右腕とともに歩み続けてきた。命に対して、お客さまに対して、熱い思いを持ってないと継続しない、誰も踏み入れたことのなかった荊棘の道だった。

狩猟、肉の解体、熟成、シャルキュルトリーを作る、料理を作る。これだけ一環した業種を構築しているチームは世界にもない。すべての工程において、「最高」と評されれば、一流の現場ができる。普通の料理人と異なる点は、全5工程の生産過程を知っているという強み。いずれは、人材育成の場、”アカデミー”を創設し、この技術と哲学を伝えていく、それを使命と考える。

生きているときに天井まで飛べる脚力のある鹿を、長時間低温調理する。そこに意味はあるのか? 優れた料理が作れるのか? 生きてきた過程と調理法とのつながりは必ずある。命のスタートを知り、生きた過程を踏まえて美味しさにつなげる、それが理想だ。

 

 

 

オーベルジュから車で数分走ると、ラボと自社牧場が見えてきた。通常68カ月で出荷してしまう豚を、自然に近い環境で1年半かけ200キロになるまで育ててから出荷する。蒸した野菜などを食べ、山の斜面を駆け回って育った豚は、筋繊維が強く肉質がしっかりする。丘の麓には鴨が水浴びをしている池もある。野生に近い環境で、56カ月育て精肉にする。

ラボがある豊頃町に足を運んでまで、それを感じたいと思ってくれる人たちがいる。これからは、独自の世界観を持って表現し、日本の地方の魅力を体現できる料理人が増えてくるはずだ。東京に密集する必要はない。その先駆けを担っていく。

 

 

 

 

豊頃町は、十勝エリアの東側に位置する人口約3000人の小さな町だ。今では、いくぶん寂れた漁村なのかもしれないが、十勝開拓の祖となる「大津エリア」では、その歴史を誇りとしている。この閉鎖的な場所で、プロジェクトを受け入れてくれた。オーベルジュオープンは予想外に早く実現した。

一日4組のみ。宿泊棟は三棟、余計なものをすべて剥ぎ取り、”食”という特別な目的を満たす心地よさのみを追求した内装。家具、寝具、アメニティ、あらゆる上質な仕様の集積のもとに生まれた宿泊棟と食を増進するサウナ棟。遠くこの地を訪れてディナーと朝食にELEZOの肉を満喫する。この料理のベースに潜む命の尊さを感じることは、ほかの産業への寄与にもつながるのだ。

 

 

 

 

オーストラリア、クイーンズランド州の提携ワイナリーから届いたシャンパン製法のスパークリングとともに、「鹿のコンソメ」ーー肉をとったあとに残る鹿の骨や筋、「一頭の命すべてに責任を持つ」哲学の詰まった一杯ーーが饗宴の始まりだ。

このワイナリーに、エレゾを再現したい、と次の構想は膨らむ。オーストラリアにラボやELEZO ESPRITをオープンし、現地での食肉の提供やスタッフの交流を図る。そして、豊頃町には、ビストロ、シャルキュルトリーなどを販売するプチモール、さらに料理人やアーティストを招聘する計画が次々と進められている。オーベルジュは未来の食文化を担う一大プロジェクトの壮大なるプロローグなのである。

 

 

ELEZO ESPRIT

北海道中川郡豊頃町大津127

esprit@elezo.com

Phone: +81 (0)70-1580-1010

帯広空港から提携タクシーあり

⑴一棟一人: 65,000
⑵一棟二人 : 55,000(1名)
夕食・朝食含む(税込み)

http://esprit.elezo.com/

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