『ダリダ~あまい囁き~』フランスの歌姫 ダリダの栄光と孤独の人生を描く
2018年05月07日
『ダリダ~あまい囁き~』
2018年5月19日(土)より角川シネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー
2018年に生誕85周年を迎えたフランスの歌姫、ダリダ。本作は、大スターとしての栄光や恋愛に翻弄された人知れぬ苦悩を追いながら、その波乱に満ちた生涯をたどる。本国フランスでは2017年1月に500館以上で公開され、総動員数77万人超、初登場2位を記録する大ヒットとなった。
冒頭、自殺したダリダのひと息が漏れる。恋に落ちた6歳下のイタリア人新人歌手が自殺。あとを追って睡眠薬を多量に飲んだダリダが息を吹き返した瞬間だった。
スーパースターだったダリダと違い、相手は若い無名歌手。マスコミから「売名行為」などと書き立てられ、繊細だった彼は耐えきれなくなり、自殺を図ったのだ。28歳の若さだった。ホテルの一室に横たわる彼の遺体の第一発見者はダリダだった。婚約発表を行った数日後のことだ。「彼を死に追いやったのは私」。ダリダは睡眠薬を多量に飲んだ。
退院した後、心のケアが必要と診断され、医師の求めにより、ダリダの元夫のルシアンや弟のブルーノからダリダの人生が語られる。
婚約者の自殺から立ち直れないダリダはイタリア人青年と深い関係を持ち身籠るが中絶手術を受ける。その後遺症でダリダは不妊症になり、ますます身も心も傷つく。
1956年に歌手としてデビューしたダリダは「Bambino」で早々にゴールドディスクを受賞し、一躍スターダムに上りつめた。「18歳の彼」、アラン・ドロンとデュエットして、世界的に大ヒットした「あまい囁き(Paroles, paroles)」は誰しも一度は耳にしたことがあるだろう世界的なヒット曲。全世界で1億4000万以上のレコードを売り上げたという。
エジプトに生まれたイタリア人、ダリダ。本名ヨランダ・クリスティーナ・ジリオッティ。幼少期はエジプトで暮らしていたが、その後はフランスに帰化。「ミス・エジプト」に選ばれた美貌で女優を志すものの、彼女の意に反し、オーデションには落ちるばかり。その後、歌手を目指し、ダリダという名で輝かしい成功を得る。才能あふれ、美しく、とびきりゴージャスで多くの人を魅了するが、女性としての幸せを得ることはできなかった。「気づけば、愛も希望も子供もない」とつぶやく姿は儚く寂しい。
そんな心のうちとは裏腹に60年代から70年代の時代の先端をいくファッションアイコンは、オリンピア劇場やサンレモ音楽祭などの華やかなステージを繰り広げる。
しかし、私生活では、愛した男が三人も自殺するという悲劇の人生を送った。ダリダという華麗な仮面を脱いだ本名のヨランダは常に孤独に打ちひしがれていた。
そして、87年5月、「人生に耐えられない、許して」と書き残し、睡眠薬を服用し自殺。
ダリダの墓はパリのモンマルトルの墓地にある。没後10年にあたる1997年には「ダリダ広場」にブロンズの胸像が設置された。訪れる人がダリダの胸を両手で包み込むようにさわると、「幸せになれる」といわれ、大勢の人に触れられ銅像の胸は色が変わっている。
オーデションで「私はダリダよ」と言って、この大役を射止めた新人のスヴェヴァ・アルヴィティ。監督リサ・アズエロス は、「知っているわ」と答える。その姿はまさしくダリダそのものだった、と言わしめたアルヴェティ。本名のヨランダと虚構のなかに生きるダリダの二面性を見事に体現した。
薬を飲み最後のひと息で映画はフェイドアウトする。ラストシーンは孤独なヨランダのため息のように切ない。
文*山下美樹子
『ダリダ~あまい囁き~』
2018年5月19日(土)より角川シネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー
監督・脚本:リサ・アズエロス
製作:ジュリアン・マドン、リサ・アズエロス、ジェローム・セドゥ
出演:スヴェヴァ・アルヴィティ、リッカルド・スカマルチョ、ジャン=ポール・ルーヴ、ニコラ・デュヴォシェル、ニールス・シュナイダー
(C)2017 BETHSABEE MUCHO-PATHE PRODUCTION-TF1 FILMS PRODUCTION-JOUROR CINEMA
公式HP:http://dalida-movie.jp/