アンコールワット2泊3日弾丸ツアー旅②広大なアンコール遺跡群
2019年01月05日
世界遺産アンコール遺跡群の中でも最大の規模を誇る宗教寺院、アンコールワット。燃えるような朝焼けをバックにして見るアンコールワットは、一番の見どころ。宿泊したホテル、「ロータス・ブラン」では、20米ドルで朝焼けのアンコールワットを見るために車とドライバーを用意してくれる。日の出を見るには3時半起き。4時にドライバーさんがホテルに待っていてくれた。
まだ真っ暗な中、途中寄ってくれたチケット売り場にはすでに大勢の観光客が集まっている。チケットは一日券と三日間券があるが、再訪を願いつつ一日券を購入。チケットは売り場の窓口で顔写真を撮影、顔写真入りのハイテクなもの。支払いもクレジットカードでOK、という先端スタイル。さすが、世界的観光地である。
車に駐車場で待っていてもらい、1人で暗闇のなかを遺跡まで歩いて行く。橋を渡るところにチケットを確認するスタッフが立っており、チケットを見せて敷地に入っていく。長い参道を通り門を抜ける。
夜は白々と明けてきた。うっすらと見えてくるアンコールワット。あの見覚えのある塔がすくっと建っている。
アンコールワットは、1113年に国王に即位したスールヤヴァルマン2世により約30年間かけて建造された。ヒンドゥー教の神ヴィシュヌに捧げられ、王の死後は王を祀る霊廟である。
果たして空は朝焼けに燃えてくれるのか?
残念、曇り空が赤に映えるアンコールワットの迫力ある眺めを阻んでいた。どんよりとした夜明けにぼんやりとしたアンコールワットが浮かぶ。周りにいた観光客がぞろぞろと帰途についている。諦めて駐車場にもどる。まだ暗いころから小さな子供たちがおみやげの売り子をしている。少し心痛む風景だ。沼に咲く睡蓮がなぜか切ない。
車にもどるとドライバーさんに、「残念だったね。昨日は朝焼けがきれいだったのに」となぐさめられる。いつかリベンジできる日がくることを本気で願いながら、帰途につく。
ホテルにもどったのは、5時半。早朝にもかかわらず、同じように朝焼けのアンコールワットを見に行った宿泊客であふれていた。静かだったホテルにこんなに人が泊まっていたとは驚きだ。
自然と朝食の時間はレストランが満杯。ブュッフェはあきらめて、アラカルトのオーダーできるレストランへ。そこにはなんと誰もいない。マンゴージュース、バナナパンケーキ、ヨーグルト、フルーツ、オムレツをオーダー。これがたいそう美味。この朝食を食べたいがためにまたここに泊まりたいくらいだ。
いよいよアンコールワット遺跡群観光、9時にカンボジア人の日本語ガイド、ヤップさんがホテルに迎えにきてくれる。
まずは、アンコールトム。東京ドーム60個分の敷地といえばその大きさもわかろる。南大門、バイヨン寺院、象のテラスなど多くの遺跡がある。
バイヨンとは「美しい塔」の意で、その名の通り、中央には観世音菩薩を彫り込んだ中央祠堂がそびえたつ。バイヨン寺院はアンコール朝の「中興の祖」、ジャヤバルマン7世がチャンパ(ベトナム)との戦争に勝利した記念に12世紀末くらいから徐々に造営したものだといわれているそうだ。仏教とヒンドゥー教が融合した寺院で、威圧感ある岩の彫刻が並ぶ。
バイヨン寺院には当時の生活や市場の様子、樹木などの精緻な彫刻もあり、細かくびっしりと彫られている。微笑を浮かべる最大2メートルあまりの大きな顔が彫られた四面像がなんといっても有名。観世音菩薩像を模していると言われており、「クメールの微笑」と呼ばれる。大勢の観光客が取り囲み、なかなか撮影の順番がまわってこない。バイヨン寺院近辺では、観光客と象使いを乗せた象が歩いている。象に乗って眺めるのも迫力ありそうだ。午前中のみで、20ドルほどとのこと。
それにしても、乾季で涼しい時期なのに暑くてたまらない。ガイドさんは人混みを避けながらスイスイ進む。途中要所要所重要ポイントを説明してくれる。やはり、こういう広大な遺跡を見るためにはガイドさんは必携だ。
次にまったく知識のなかった絡みつく樹木の姿で知られるタ・プローム遺跡。タ・プローム遺跡の建造物の多くは、これでもかというほど崩壊している。石材の数々が倒壊したままの姿で修復されることもなく散乱している。
かつて5000人あまりの僧侶が暮らし、600人を超える踊り子が住んでいたとされるが、遺跡とともに生きてきたスポアン(ガジュマル)の巨木が遺跡を守っている。鬱蒼としたジャングルに放置された廃墟、自然の驚異と歴史の流れを同時に感じる光景だ。
最後にいよいよアンコールワットツアー。寺院全体の面積は約200ヘクタール。東京ドーム約15個分の広さをもつという広大な遺跡。思わず「ツアー」と呼びたくなる。
寺院内部はヒンドゥーの宇宙観によって構成される。中央部に近づくほど高くなり、中央の5基の祠堂は須弥山(ヒンドゥー神話でヴィシュヌ神が降臨する山)を表し、周壁はヒマラヤの霊峰、環濠は無限の海を象徴する。寺院はクメール建築の傑作といわれており、回廊の壁面に埋め尽くされたレリーフは必見。古代インドの叙事詩を題材にした物語や、スールヤヴァルマン2世の軍隊パレードがいきいきと描かれている。
暑いのでガイドさんも気を遣ってくれ、休み休みまわる。日本語はプノンペンの大学で専攻したそうだ。なぜ日本語を選んだのか聞くと、日本人は優しいからとの答え。ほかの国の観光客に付き添うのはたいへんな苦労があると語る。
遺跡の見学の途中、地元の食堂でカレーを食べる。観光客とガイドさんは別々の場所で食事する。観光客値段でカレーは10米ドル。カンボジア料理は辛くはなく、ココナッツをふんだんに使い、むしろ甘い。
アンコールワットをあとにして、アンコールナショナルミュージアムへ。日本語のイヤフォンガイドを借りることができる。入館料は12ドル。
アンコール王朝の歴史を、大型スクリーンや音響、照明を駆使して分かりやすく紹介。展示室は「千体仏の間」「宗教と信仰」「アンコール・ワット」など8つに分かれ、クメール王国の成り立ちや王朝発展に貢献した4人の王について、また当時の宗教についてなど日本語解説を聞きながら詳しく学べる。貴重な石造彫刻やリンテルレリーフ、石碑文など展示品も見応え十分。ここで駆け足アンコール遺跡の見学終了だ。
ディナーはホテルのメインダイニング、「ダムナックダイニング」。ガストロノミック・カンボジア料理だ。
ターメリックとココナッツをたっぷり使った前菜、スープ、メインにはトンレサップ湖で獲れた新鮮なバス。ペアリングのワインはオーストリアの赤、白をハウスワインとしてレストランのエチケットに使いおしゃれな姿に。ペアリング込みで55ドル。フランス風なので、オーナーはフランス人かと聞いたがカンボジア人とのこと。シェフは28歳のカンボジア人。見目麗しく地元の食材を洗練した仕立にしている。
早くも翌日は帰国。二泊三日でも遺跡、ホテル、食事大満喫、超堪能。再訪では朝焼けのアンコールワットをみることができることを願いつつ、笑顔が優しいホテルのスタッフに別れを告げた。
text & photos Michel D’Angelo