メディアの堕落を描いたバルザックの傑作を映画化「幻滅」

カテゴリー/ CULTURE |投稿者/ Gouret&Traveller
2023年04月14日

「幻滅」

2023年4月14日より全国ロードショー

 

19世紀フランスの文豪オノレ・ド・バルザックの小説『幻滅 メディア戦記』を、「偉大なるマルグリット」のグザビエ・ジャノリ監督が映画化。「Summer of 85」のバンジャマン・ボワザンが主演を務め、「アマンダと僕」のバンサン・ラコスト、監督としても活躍するグザビエ・ドラン、「ヒア アフター」のセシル・ドゥ・フランスが共演する。

バルザックの原作を学生時代から映画化したいと望んでいたグザヴィエ・ジャノリ監督は、念願の本作で、2021年・第78回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品、2022年・第47回セザール賞で作品賞を含む7部門に輝いた。現代のメディア界を彷彿とさせるパリのマスメディア黎明期を風刺に富んだ極上のエンターテインメントに昇華させた。

 

 

フランスにおける出版業の黎明期、バックにスポンサーをもたずして、印税生活を成り立たせた世界初の作家、バルザックが、フェイクニュースにステルスマーケティング、と現代に通じる腐敗したパリのマスメディアの創成期を暴露する。バルザック自身の経験をもとにした小説であるため、当時の出版界やジャーナリズムの歴史的事実を知ることができ興味深い。

詩人としての成功を夢見る田舎町の印刷工、純朴な青年リュシアンは、生活のため新聞記者の仕事に就く。貴族の人妻ルイーズとパリへ駆け落ちしてきた彼は、身分も低く無作法。パリの社交界でさんざん蔑まれる。時は、19世紀前半、恐怖政治が終わり、ブルボン朝が復活。宮廷貴族たちが自由と享楽的な生活を謳歌していた。

 

 

自作の詩をを有名書店に売り込むものの、けんもホロロに追い返され、生活に困ったリュシアンは安食堂で知り合ったジャーナリスト・ルストーから、新聞社の仕事を紹介してもらう。高い志を持っていたリュシアンだが、ルストーらの仕事は、自分の利益になる人間のことは褒めそやし、自在に記事をでっちあげる。舞台評を書くため、劇場に無料で出入りし有名人に会える立場になり、都会の派手な生活に染まってしまうリュシアン。さらに、権力欲しさに右左両派の新聞に出入りしたことで疎まれ、ジャーナリスト生命を絶たれるがーー。

実力派俳優を集めた魅力的なキャストがそろう。バンジャマン・ヴォワザン、初のコスチュームもの。王政復活の時代、身分の低い田舎の青年が、成り上がろうとして野心と欲望に惑わされ堕落していく姿が切ない。先輩記者を演じるのは、ドラマからコメディまで多彩な演技を披露しフランスで絶大なる人気を誇るヴァンサン・ラコスト。脇を固める役者陣に、フランスの国民的スター、ジェラール・ドパルデュー、ジャンヌ・バリバー、本作が遺作となったジャン=フランソワ・ステヴナンなど豪華な布陣となっている。

 

 

リュシアンほか、メインキャストはもちろん、社交界の人々誰もがキャラクターが作り込まれており、バルザックの小説の中でも最もおもしろい作品といえるだろう。諷刺とアフォリズムに富んだ会話からも、当時の堕落した貴族社会時代やジャーナリズム界の様子が容易に想像できる。

文学作品の映画化、という重々しさはなく、現代にも通じる極上のエンターテイメントとして楽しめる作品だ。

 

『幻滅』

監督:グザビエ・ジャノリ

キャスト:バンジャマン・ボワザン、セシル・ドゥ・フランス、バンサン・ラコスト、グザビエ・ドラン

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