20世紀を代表する巨匠、デ・キリコ大回顧展「デ・キリコ展」が東京都美術館で開催。時代別の変遷を追う
2024年05月17日
20世紀を代表する巨匠、ジョルジョ・デ・キリコ(1888〜1978)の大回顧展「デ・キリコ展」が東京都美術館で、8月29日まで開催されている。全5章と3つのトピックで構成され、日本では10年ぶりとなる大規模回顧展だ。
デ・キリコは、ヨーロッパ各地、ニューヨークを移り住みながら、制作を行い、環境や人物からの影響により、多彩な作風で生涯さまざまなテーマを描いていった。本展は時代により、どこで制作をしていたのかを追っていける展示になっており、作風の変遷を見ることができる。
デ・キリコは、生まれ故郷のギリシャを離れ、ミュンヘンの美術学校に通うも、1906年に中退。09年に母親と弟が住んでいたイタリア・ミラノへ移住したころから画家としての道へ本格的に歩み始めた。
第1章「自画像・肖像画」
デ・キリコが生涯にわたって何百枚も描いた自画像の変遷を辿る。
象徴主義の画家、アルベルト・ベックリンの影響を受けており、のちに「ベックリンの時代」と呼ばれるようになった。
1910年の後半ごろから、思想や批評、「形而上絵画」を確立。シュルレアリスムとも並行していった。
1925年以降、ギリシャ美術の神話的性格に影響を受け、1940年代は、19世紀フランス絵画、ルノワール風の作風の時代、第二次世界大戦後に17世紀の作風など、デ・キリコの描くタッチやテーマは、次々と変わる。
第2章「形而上絵画」
「イタリア広場」「形而上的室内」「マヌカン」の3つのテーマで構成。
1910年、フィレンツェのサンタ・クローチェ広場で「不思議な感覚」を体験し、形而上絵画に開眼。歪んだ遠近法を駆使して非現実の空間を描き、パリ・アヴァンギャルドの雄、ギヨーム・アポリネールらに評価された。
デ・キリコを象徴するモチーフといえば、マヌカン(マネキン)だが、「形而上的ミューズたち」ほか、絵画史に残る作品を見ることができる。
第3章「1920年代の展開」
形而上的モチーフを使いながらも、新たな表現に向かっていった作品群を紹介する。本来は外にあるものはずのものが天井の低い室内にあり、屋内にあるべき家具が外に置かれている、「室内風景と谷間の家具」など代表作が展示される。
第4章「伝統的な絵画への回帰『秩序への回帰』から『ネオ・バロック』へ」
ルノワール、ドラクロワ、ルーベンスといった画家たちからの影響を受けたそれまでの作風とまったく異なる作品へ傾倒していった姿をみることができる。
第5章「新形而上絵画」
1960年代後半以降の晩年期、過去に描いたさまざまな様式の作品を自由に組み合わせることで、独特の様式を編みだしていった「新形而上絵画」の時代。
ジャン・コクトー作「挿絵─〈神秘的な水浴〉」をはじめとした本の挿絵のための版画作品や「彫刻」、バレエの実衣装など3つのトピックも見どころだ。
デ・キリコ展
会場:東京都美術館
住所:東京都台東区上野公園8-36
電話番号:050-5541-8600
開館時間:9:30〜17:30(金〜20:00)※入室は閉室の30分前まで
休館日:月、7月9日~16日 ※ただし、7月8日、8月12日は開室。
9月14日〜12月8日には神戸市立博物館にも巡回予定。
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