過酷な身体改造で美を追求、北欧発シンデレラ物語はボディ・ホラー

カテゴリー/ CULTURE |投稿者/ Gouret&Traveller
2026年01月02日

「アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし」

20260116日全国公開

 

ゴシック・ホラー仕立ての「シンデレラ」で長編監督デビューを果たしたノルウェーのエミリア・ブリックフェルト。第41回サンダンス映画祭でプレミア上映されたほか、20もの映画祭にて正式出品され、観客・批評家から絶賛を浴びた。

 

 

「シンデレラ」といえば、義姉妹にいじめられる妹が、かぼちゃの馬車で舞踏会に行き、王子様に見初められる、というロマンチックなイメージがあるのではないだろうか。「シンデレラ」には、いくつかパージョンがあるが、日本で馴染み深いのはこの馬車がシンデレラを舞踏会に連れて行くシャルル・ペロー版だ。

一方、グリム童話では、いじわるな姉たちが、王子様が探しに来たガラスの靴の持ち主になりすますため、小さな靴のサイズに合わせて自分の指やかかとを切ってしまう、というブラックなラストである。グリム童話版は、語り継がれた話を集めた伝承物語で、欲を出してはいけないと子供を戒める教訓が詰まっている。

本作は、ブリックフェルト監督の現代版解釈の「シンデレラ」といえるだろう。妹をいじめる義姉エルヴィラを主人公にすえ、お伽話をクローネコンバーグばりのボディ・ホラーに仕立て上げた。

 

 

母レベッカの再婚でこの国にやってきたエルヴィラは、王子様が恋するような完璧な容姿ではない。美しい義理の妹、シンデレラ(=アグネス)を妬み、王子様の愛を勝ち取ろうと、毒親の言うがままに肉体改造をしていく。

 

思わず目を覆う「痛い」場面が多数あり、映画祭などでは、観客の「退場者続出!」だったというゴア描写が続く。なにしろ、時代的に麻酔なしで、目や鼻の整形手術をしてしまうのだ。

ルッキズムの業を描くのが.「サブスタンス」に続いて女性監督だということが興味深い。ごく最近まで女性に生まれたからには、美しくしとやかで、王子様にみそめられて結婚するのが勝ち組だったのだ。王子の花嫁の座を射止めるためなら手段を選ばない美に対する執念も、安易に責められるものではない。

 

 

エルヴィラを演じたのは、ノルウェーでモデル兼女優として活躍するリア·マイレン。口は矯正具で覆われ、眼球はメスで切り付けられる。快演であるほど、どこか切なさをたたえている。

「美しくなるためならどんなことだってするわ」

そう考えてざるを得ない女性が哀れですらある。矯正具をつけたエルヴィラは、どこに行ってもからかいの対象になる。女性は容姿が美しくなければ嫁にもいけない。経済力もなく自力で生きることさえできなかった時代が長く続いていたことが思い起こされる。

ルッキズムの因果をえぐり出すためには、無慈悲な整形手術、人体破壊描写で、美醜を極限まで対比させる必要があったのだろう。エルヴィラの顔を切り刻むまでの美への執着に目を伏せながらも、この痛みに共感できない女性はいないのではないか。

 

アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし」

 

監督:エミリア・ブリックフェルト

キャスト:リア・マイレン、アーネ・ダール・トルプ、テア・ソフィー・ロック・ネス、フロー・ファゲーリ

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