アンヌ・フォンテーヌ監督最新作「夜明けの祈り」 絶望の淵にいた人々に寄り添い、魂を救った女医の物語

カテゴリー/ PARIS |投稿者/ Gouret&Traveller
2017年07月23日

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1945年、第2次世界大戦が終わろうとしていた頃、狂気の蛮行がポーランドの修道院で起こっていた。赤十字に派遣された若いフランス人医師、マチルドは、日々、死にゆく痛みに苦しむ負傷者の治療に奔走されながら、一方で、あらたな苦悩にあえぐ人々を救うために身を捧げることを決心する。
夜中に現れた一人の修道女に請われて、たどり着いた修道院で目の当たりにした非道な現実。戦争の残酷な爪痕がこのような静謐な聖なる場に残されていようとは。そこには、ソ連兵士の暴挙により身ごもった修道女たちが、あまりに冷酷な現実と信仰との狭間で苦悶する姿があった。

 

 

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「ココ・シャネル」や「ボヴァリー夫人とパン屋」で女性の生き方を甘美な作風で観客を魅了してきたアンヌ・フォンテーヌ監督のこの最新作は、実在した医師、マドレーヌ・ポーリアックの物語。人間の尊厳を踏みにじる悲劇的な事件に巻き込まれ、心身ともに傷ついた修道女たちの救うために尽力した若き女医の実話を映画化し、フランスのアカデミー賞にあたる作品賞など4部門にノミネートされた話題作である。カロリーヌ・シャンプティエ撮影の映像美のなか、淡々と、しかし、饒舌に物語は希望の光を見出すべく語られていく。

 

 

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幼い頃から演じることに興味を持っていたというヒロイン、マチルド役を演じた、ルー・ドゥ・ラージュ(写真上)は、この映画の脚本を読んで感銘を受け、ぜひ演じてみたいとオーディションを受けた。重いテーマであることは事実だが、残酷な結末を迎える話ではなく、むしろ希望に向かっていく再生を託した物語として捉えたという。役に決まってから撮影までの時間は短く、深く役作りをする時間は限られていたが、助産師や医師に指導を受け、撮影現場のポーランドに赴き、現地の役者とともにリハーサルを重ね、この物語の世界観を体感した。

 

 

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この作品の中で何よりも印象の残るのは、マチルドの凜とした誇り高き美しさだ。マチルドはしっかりとした意志を持ってまっすぐ突き進んでいく医師である。マチルドを見て涙を誘うような芝居は避けるようにと、監督からは指示された。
「アンヌ・フォンテーヌ監督には、感情に流されるな、むしろ冷静なストーリーテラーとしての役割を担ってほしい、と託されました。それがかえって演じる上で私にとっては枷ともなりました。もっと感情を出して演じる方が自分としては自然だったからです」とルー・ドゥ・ラージュは撮影時のもどかしさを振り返る。

 

 

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「監督も撮影も女性だったことで、女性の真の強さを描くという点では、意味があったと思います。冒頭のシーンで修道女たちが整列して教会で賛美歌を歌う姿があまりに神々しく、涙があふれました。その荘厳な映像美のなかで、不幸の先に必ず見つかる希望の光を見出してほしいという願いが湧き出しました」。
宗教に限らず、広い意味で「信じる」という力が伝わる映画である。過酷な運命に立ち向かった修道女たちの無心の祈りが、最後には一筋の光を手繰り寄せる。
さまざまな困難に直面しながらも尊い命を前に修道女に寄り添い、強くしなやかに、感情を露わにせず支え続けるマチルドの崇高な精神に、観る人々は感動を覚えずにはいられない。

 

『夜明けの祈り』
© 2015 MANDARIN CINEMA AEROPLAN FILM MARS FILMS FRANCE 2 CINÉMA SCOPE PICTURES

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監督 &翻案  アンヌ・フォンテーヌ
撮影  カロリーヌ・シャンプティエ
出演  ルー・ドゥ・ラージュ、 アガタ・ブゼク、ヴァンサン・マケーニュほか

8月5日(土) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

yoake-inori.com

文*山下美樹子

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