写真家サラ・ムーンが写し続けた”時の流れ”
2018年04月05日
フランスの女性写真家サラ・ムーンの個展「D’un jour à l’autre 巡りゆく日々」が、銀座のシャネル・ネクサス・ホールでスタートした。テーマはサラ・ムーンが作家人生を通じて追求してきた「時の儚さ」だ。
La main gelée 2000 © Sarah Moon
展示空間に対するサラ・ムーンのこだわりは「ホワイトキューブ」だった。真っ白な空間は光がよく回り、影ひとつない印象が作り出されている。作品は浮遊しているかのような不安定な存在感を放っている。デザイナーは語る。まるで長時間露光でその場に焼き付けられたかのような錯覚を覚え、その露光は、いまだ進行中かのように安定せず、会場を巡るたびに異なる表情を見せる。
(c)Ilona Suschitzky
会場には人の背丈ほどもある大型の写真や小ぶりの写真群が真っ白な空間に行儀よく並び、非日常のトンネルに飛び込んで行くような浮遊感を感じる。その先には幻想の靄に彩られたサラ・ムーンのプリントの数々。
独特の世界観を表現する魅惑的なファッション写真家であり、独自の詩的世界を描く映像作家として高く評価されきた写真家サラ・ムーン。1960年代にモデルとして活動し、70年代にはファッションや広告の分野で写真家としてのキャリアをスタート。1985年に作家として作品制作を始め、95年には「パリ写真大賞」を受賞。映像作家としても評価が高く、「ミシシッピー・ワン」(1991年)、アンリ カルティエ=ブレッソンを追ったドキュメンタリー「Henri Cartier-Bresson Point d’interrogation」(1995年)などの作品が好評価を受けた。
Adrienne sous la neige © Sarah Moon
今回の個展は、サラ・ムーン自身が構成を手掛けている。日本初公開の作品を中心に新作を含めた約100点を展示。サラ・ムーンが作家人生を通じて追究してきたテーマ「時の流れ」に関するこだわりを凝縮した。鳥や象などの動物や「そこにはある自然」、不確実に過ぎ行く生や風景をロマンチシズムあふれる作品として描いた。
サラ・ムーンいわく、「写真に自分が表現できるのは、対象がなんであれ、それを通して感じる『こだま』」なのだそうだ。それは現実とは違う。ものごとはいったん語られてしまえば、別の物語に変容してしまう。
写真も同じである。われわれはホワイトキューブのなかでロマンティックな漂流を経験する。何度見ても異なる表情に目を眩ませながら。
Baigneuse II © Sarah Moon
文*山下美樹子
開催を記念し、一部会期中、サラ・ムーンと「シャネル ファイン ジュエリー(Chanel Fine Jewelry)」がコラボレーションした作品を集めた特別展示を開催。シャネル銀座ブティック1~3階では4月4日から16日まで、10階のレストラン ベージュ アラン・デュカス 東京では4月4日から5月4日まで行われる予定だ。
「D’un jour à l’autre 巡りゆく日々」サラ ムーン写真展」
会期:2018年4月4日(水)~5月4日(金)
時間:12:00-19:30 (入場無料・無休)
会場:シャネル・ネクサス・ホール (中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F)
「くまモンも行った! 南フランスの旅①エクス・アン・プロヴァンス」