2017年01月03日
再訪したくなる美食空間 京都ファイル① 古民家を改装したフレンチ Restaurant MOTOI
世界の美食シーンを長年取材してきたグルメ&トラベラーが取材で食べ歩いて見つけた「思わずリピートしたくなる美味な店」をご紹介していく連載、「グルメ&トラベラー 再訪したくなる美食空間 ファイル」が始まります。第一回は、プロの料理人おすすめベスト1の築100年の古民家を改築したイノベーションフレンチの京都「Restaurant MOTOI」です。
京都御所近くの小路町押小路の一軒家は京都の風情たっぷりに訪れる人を迎えてくれます。のれんをくぐり、敷石のアプローチを抜け、引き戸を開けると、京屋敷らしい静かなたたずまいの玄関にウェイティング・スペースが設えられています。メイン・ダイニングに通されると、1階の天井を取り払い2階まで吹き抜けの贅沢なスペースに、呉服屋だった築100年の屋敷そのままの梁や柱を残した引き算の妙を感じさせる侘び寂び空間が広がっています。梁と白壁の落ち着いた色調のなか、中央に置かれたフラワーアレンジメントのみが華麗に彩りを添えています。1点のくもりなく磨き上げられた大きなガラス窓の外には、手入れの行き届いた風格ある坪庭の眺め。その数500本、種類は300に及ぶという長い廊下の壁一面にワインが並べられたセラーは壮観です。ほの暗い明かりのなか、白いクロスが浮かび上がり、神戸「森山硝子」のグラスやカトラリーが鈍い光を放っています。
そう、この京都ならではの屋敷を再生したグラン・メゾンで供されるのは、和食ではなくイノベーティブなフランス料理なのです。
大阪のミシュラン2つ星フランス料理店、「HAJIME」で修行していた前田元シェフの独創的なひと皿ひと皿は、茶道の精神を体現する「主客一体のおもてなし」をテーマにしています。子供のころから、絵本の料理などに興味を持ち、フランス料理を志していたにもかかわらず、就職したホテルでは、中華に配属。10年間、中華料理にたずさわっていたものの、やはりフランス料理の道を進みたいとブルゴーニュやフランシュ=コンテで修行のためフランスへ渡りました。
帰国後はホテル・オークラ京都の「ピトレスク」、「HAJIME」と研鑽を積んできた前田シェフが、MOTOIをオープンしたのは2012年。フレンチから過度に逸脱することなく、ときに中華の技もさりげなく織り交ぜながらのランチ10皿、ディナー13皿を念入りな構成で作り上げます。「馳走」に重きをおき、ゲストをもてなすため、自ら食材を探しに出かけるという職人気質も強く、あるWEBのレストランサイトでは、プロの料理人がおすすめする京都の店ベスト1に挙げられています。一度訪れると、雰囲気、サービス、料理すべてに魅了されずにいられないでしょう。
アミューズブッシュ1品目
ふわふわの七面鳥のムースにもっちりした白玉という意外な組み合わせ。イベリコハムの塩分が淡白なムースのアクセントに
アミューズブッシュ2品目
聖護院かぶらのスープ にスッポンのエキスを加え、底には中華の技が光るフカヒレがたっぷり入っているというサプライズ
せこ蟹のリゾット
厚みのある蟹肉の旨みがぎっしりお米にもしみこみ、エストラゴンとすだちがほのかに香る
ハマダイのポワレ
くせのないハマダイにオマール海老の香りを纏わせ、 アメリケーヌソースと菊菜を添えて。濃厚な海老の旨みが口のなかに華やかに広がる
尾崎牛のローストビーフ 火入れ抜群の尾崎牛はひと口噛むごとに旨みが広がる。ひとつひとつの野菜本来の味が十分に引き出され、ていねいな仕事を施された40種類の野菜とともに
アヴァン・デセール
温めたワインをさらにひと仕事加えて凍らせた「ヴァンショー」にシナモンのアイス ソーテルヌのエスプーマを添えて
デセール1品目
ショコラのシブーストのまわりにカカオニブが添えられ、アマゾンの香りを演出
デセール2品目
リボンに包まれた苺のタルトに生クリームを凍らせて削り、イチゴのソースを目の前にかけてもらう。プレゼンテーションも華やかなデザート
ミニャルディーズ
カヌレ、マカロン、ほか5種のミニャルディーズと蜂蜜を添えたミントベースのハーブティー
Restaurant MOTOI
京都市中京区富小路二条下ル俵屋町186
京都市営地下鉄東西線 京都市役所前駅より徒歩5分
予約 075-231-0709
ランチ 12:00~13:00
ディナー 18:00~20:00
定休日 水曜、木曜
予算 ランチ 1万5000円~、ディナー 2万円~
再訪したくなる美食空間④ 京都 Cucina Italiana 東洞
再訪したくなる美食空間ファイル③ 京都 味ふくしま
再訪したくなる美食空間 ファイル② 京都 山地陽介