「マダムのおかしな晩餐会」通好みのパリ満載!個性的な俳優たちによる豪華ディナーの行方は?
2018年11月23日
「マダムのおかしな晩餐会」
11月30日 TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
粋なセリフの連続、普遍的な人生の機微、人の心の綾、ひとりひとり異なる細かい演出・・・。ウディ・アレンの映画づくりを思い起こしながら観ていたが、まさに監督のアマンダ・ステールの思惑がそれだった。ステール監督は、作家として9冊の小説を執筆、14カ国に翻訳された実績を持つフランスで大人気の実力派。今回はみずからの小説から原案の脚本、監督も手がけている。その脚本に惹かれて出演を決めたのが、オスカー女優トニ・コレット、「スモーク」「レザボア・ドッグス」などの名優ハーベイ・カイテル。そこに「神経衰弱ギリギリの女たち」などペドロ・アルモドバル監督の作品でおなじみのロッシ・デ・パルマと、個性的なキャストが顔をそろえた。
パリを舞台に繰り広げられるハイエンドなロマンティックコメディには、ブランドのドレスやジュエリーにカラヴァッジォの絵画などが続々登場。豪華な邸宅はパリの贋造博物館(偽ブランド品のバッグなどが展示された秘密の記念館)を使ったというマニアぶり。パレ・ロワイヤルにあるビュラン作品の円柱、パリ一長いの歴史を誇るシネマ・マクマオン、16区にあるブルジョア御用達のカジュアル・ビストロ、オートゥイユをはじめ通好みの名所の数々にパリ好きはわくわくするはず。
始まりのシーンは、パリ市の貸し自転車「ヴェリブ」に乗り、美しい町の背景をバックに颯爽と走り去るアン(トニ・コレット)とよろよろしながら自転車を操るボブ(ハーヴェイ・カイテル)。アンは奪略愛により富豪のボブの妻に収まり、夫婦で暮らすためにパリに来たばかり。
アンは、セレブな友人たちを招いて豪華ディナーの準備に余念がない。そんなとき、放蕩息子が突然帰還、出席者数が不吉な「13」人になってしまう。慌てたアンがメイドのマリア(ロッシ・デ・パルマ)を友人に仕立てディナーに無理矢理参加させるが、緊張のあまりワインを飲み過ぎたマリアは下品なジョークを連発。放蕩息子から「マリアは前スペイン王国の又従兄」と嘘を吹き込まれ信じ込んでしまった英国紳士のデビッドは、場違いなはずのジョークに大ウケ、マリアは英国紳士から求愛されるハメになる。デビッドは、マリアの連絡先を放蕩息子から仕入れ、さっそくデートを申し込む。お互い勘違いのまま関係を深めるデビッドとマリア。
一方、デートの後をつけるアンとボブの2人は、実は夫婦のすれ違いに直面している。ロマンチックなパリでは、アンもボブも不倫に走らざるを得ない。アンは美術館オーナーと、ボブは若いフランス語の家庭教師と関係を持つ。そんななか、愛されることで自信をつけたマリアは、「メイドもマダムも人間としての価値は変わらない」と、自我に目覚める。
アンとマリアたちがパリで繰り広げるから騒ぎの行方は・・・?
メイドのマリアをマダムに変身させる富豪のマダム、アン。原題「Madame(マダム)」は、誰を指すのか? 主人は使用人を名前で呼び、使用人は主人の名前にマダムをつけて呼ぶ。現代も未だに社会格差があるのは歴然だ。しかし、女性ははみな「マダム」に違いない。メイドも外に出て誰かに愛されればマダムになれるのだ。皮肉と毒がたっぷり仕込まれたほろ苦さが根底に広がる寓話である。
文*山下美樹子
監督:アマンダ・ステール
脚本:アマンダ・ステール、マシュー・ロビンス
出演:トニ・コレット
ハーヴェイ・カイテル
ロッシ・デ・パルマ
2016年/フランス/スコープ/1時間31分/カラー/5.1ch/
英語・フランス語・スペイン語/
配給:キノフィルムズ
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