フランス人に愛されるパリの日本人シェフ⑤「アリアンス」大宮 敏孝シェフ
2019年03月06日
アリアンス(Alliance)
パリ左岸、セーヌ川にほど近い路地に見えてくるガラス張りのファサード。「Alliance (アリアンス)」と掲げられたレストランの扉を開けると最初に目に入るのは奥のオープンキッチン。厨房で腕をふるうのは大宮敏孝シェフだ。
陶芸家とのコラボ作品の真っ白い器を使ったテーブルセッティングがシンプルな空間に浮かび上がる。「アリアンス」は2015年11月に、パートナー、ショーン・ジョワイユとともにオープンした。
フランスの食材にこだわり、現地スタッフのチームと一緒に作るフランス料理。クラシックを基本に洗練されたモダンなテイストが魅力的だ。この店を開く前からの大宮シェフファンのフランス人常連客が足繁く通う。だが、常に満席のこの店を立ち上げるまでにはさまざまな葛藤があったという。
大宮シェフは、子供の頃から味見をするのが楽しみで祖母や母親の手伝いをしていた。料理に興味を持ち、大阪の辻調理師専門学校へ。卒業後、3年間イタリアンレストランで働く。イタリアンを続けていくつもりが、フランス料理の世界ものぞいてみたいと22歳で渡仏。多数の星付きレストランに履歴書を送った。最初の勤め先は、8区の二つ星「ラストール」。2005年には、三つ星「アルページュ」で仕事をする機会を得る。「アルページュ」のアラン・パッサール・シェフに労働許可証を取得してもらい、三つ星「ル・サンク」へ。その後の「インターコンチネンタル(アヴニューマルソー)」ではスーシェフを務める。
しばらくして、「アルページュ」で同僚だったダヴィッド・トゥタン・シェフから、「アガペ・シュブスタンス」の立ち上げをともにやりたい、と話が持ち上がる。ダヴィッド・トゥタンは今をときめく天才料理人。ゲストに料理を楽しんでもらおうとする意欲がすさまじい。料理に対する情熱も人並みではない。労働許可証を取る手助けをしてくれたダビッドに恩返しをするつもりでハードワークを承知で彼の店での仕事のオファーを受けた。
そして2012年には、17区の星付きレストラン「アガペ」のシェフとしてスカウトされる。この店では料理の目的「星を守ること」が、やがては苦痛となり、料理を作ることがストレスになり休養をとることになる。
そんな折、「アガペ」でディレクターをしていた現在の共同経営者ショーンがガストロノミーを離れてカジュアルなタイプの店をやらないかと提案してきた。しかし、正統派ガストロノミーを信条とする自分の料理とは方向性が違っていた。悩んだ末に断ることに。時を経て話し合いの末にやりたいことがついに一致し、「アリアンス」誕生となる。
2017年星1つ獲得。狙ってはいなかったが、自分がやろうとしたことを認めてもらえたのを素直に喜んだ。「アリアンス」は居心地もよく、楽しんで料理を作っていた。そうしたら星がついてきた。もう星を守ろうと無理はしない。「2つ星もすぐだね」と昔からのお客様に言われることも嬉しい。フランスは美食の国。食べる側のレベルが高い。そこで喜んでくれるお客様がいる。手が抜けない。フランスの本場だからこそ勝負しがいがあるのだ。
蒸しアワビ、肝のマヨネーズ、アーティチョーク、コリアンダー 36ユーロ
ブルターニュのアワビを1〜2時間火を入れて冷やしたものに肝で作ったマヨネーズを添える。上にのせたアーティチョークはコリアアンダーと白ワインを合わせ、一度火を入れて冷やしたもの。コリアンダーの花と葉が香る。
バンデ産のパットノワール、オマールのコライユ、ブロッコリー。(アラカルトメニューで2人前175ユーロ)
皮と身の間にオマールのコライユのバターが入っている。火を入れる前は緑色が特徴的だ。オマールの頭からとったブイヨンと根菜にオマールのビスクとオマールの赤ワインソース。コースメニューに入る場合もある。
アロエのムース 18ユーロ
タイのスパイス、ガランガを仕込んだ柑橘系のアイスにメレンゲ、アロエのジュレ。華麗なプレゼンテーションでコースのラストを飾る。
Alliance
5 rue de Poissy 75005 Paris
メトロ Maubert–Mutualité
電話 01 75 51 57 54
土、日休み
ランチ 55ユーロ〜
ディナー120ユーロ〜
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