フランス人に愛されるパリの日本人シェフ⑥「ペルティナンス」内藤隆乃介シェフ&クウェン・リュウ・シェフ
2019年03月24日
ペルティナンス(Pertinence)
シックな住宅街、グルメ通りのサン・ドミニクにも近い7区の静かな小道を曲がるとガラス張りのレストランが見えてくる。扉を開けると、しならせた木のラインが美しい、まるでインスタレーションのようなアーティスティックなインテリアが広がる。床の一部はガラス張りになっており、ボトルがびっしり並んでいる。地下がワインセラーになっているのだ。この粋なデザインは、アラン・デュカスのセーヌ川に浮かぶレストランを手がけたジェラー・ロンザティーが生み出した。奥のオープンキッチンでは、内藤隆乃介シェフとともにマレーシア出身のパートナー、クウェン・リュウ・シェフが並んで手際よく料理を仕上げていく。ゲストに細やかな心配りができるように、客席は14席とあえて少なめにした。
「ペルティナンス」は2017年4月オープン。内藤シェフは、静岡拠点の専門学校のフランス校に行くため渡仏。その学校でのスタージュで「タイユヴァン」に入り、当時フランスガストロのミー界の重鎮、ジャン・クロード・ブリナ氏にビザを出してもらい、アラン・ソリヴェレスのもと5年間修行。包丁の握り方から基礎を学ぶ。その後「アントワーヌ」の立ち上げに携わり、クエン・リュウさんと出会う。クエンさんは、オーストラリア、インドネシア、シンガポールで修行を重ね、パリで腕を磨いていた。そして、高級スキーリゾート、クーシュヴェルの星付きレストラン「シュバル・ブラン」へ。再びパリへもどり、パリの「ル・ムーリス」で、ヤニック・アレノ、アラン・デュカスという偉大な料理人のもとで修行を積むという華麗なるガストロノミックなバックグラウンドを持つ。
そんな2人が調和をとりながら繰り出すクラシックを礎としながらの艶やかなフレンチ。星は全然意識してなかった、という欲のなさがかえって功を奏したのか、あっというまに2018年、星獲得となった。
毎日訪れるゲストも飽きないように、また料理を選択する喜びを感じて欲しいと、コース一本の店が多いなか、アラカルトも用意している。ジビエが苦手な人でも選べる肉料理3種類、季節の魚2種を提供。フランス料理ならではの技術を生かしたフォンやソースで正統派のひと皿ひと皿を展開していく。そこに、日本酒やショウガなどアジア、またパートナーの国、マレーシアのハーブの香りをあしらうなどして自分たちだけのオリジナリティを加える。
故郷、長野の蓼科で実家はレストランを経営。子供のころから自宅で作っていた野菜とのつきあい方を駆使し、加えて食文化が違うチャイニーズハーブ、マレーシアのハーブをエッセンスとして使う。自分たちスタイルでパーソナリティーをクラシック料理にアクセントとして加える。フランスのガストロミー・シーンの日本人台頭で、フランス人も軽い料理が好むようになってきた状況下、逆にソースを使ったオーセンティックな料理でゲストを魅了していきたいという。2人の温かいもてなしを受けに、このひそかな住宅地に通うフランス人で今日も店は満席だ。
前菜 ホタテととソリレスのロースト
ソリレス(Sot-l’y-laisse)とはフランス語で「これを残すものは愚か者」という意味。もも肉の一部で、鶏1羽から2個しか取れない貴重な鶏肉。ホタテは軽く火を入れ、パルマンティエを中央におく。ニンニクの芽のポワレとクレームソース、 グルノーブロワーズ、ケッパー、レモン、パセリ、クルトンで華麗に仕立てる。
メイン ジュ・ド・ブフ・ア・ラ・ロワイヤル 白トリュフ、ベットラーブとフランボワーズ
36時間煮込み、ナイフがなくても切れるような柔らかさ。オーソドックスなロワイヤルの基本形がきっちり残り、トリュフとフォワグラの風味がしっかり伝わる。
デザート 柑橘のデザートのデクリネゾン
柑橘類をさまざまな調理法で楽しむ。オレンジのコンフィチュール、グレープフルーツ、ピンクグレープフルーツ、フレッシュ系のもの、レモンのジュレとブラックオレンジのシャーベット、レモンの皮のコンフィ、レモンのスフレ。食感の変化、甘みや酸味、温かさから冷たさへと五感で楽しめるデザート。
Pertinence
29 rue de l'Exposition 75007 Paris
+33.(0)1.45.55.20.96
12:15~14:00、19:30~22:00
日曜、月曜、火曜ランチ休
前菜4種、メイン5種、デザート3種から選べる。
デギュスタシオンコース 105ユーロ
ランチ 45ユーロ、105ユーロ
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