「パリに見出されたピアニスト」数々の名曲に彩られるヒューマンドラマ
2019年09月22日
「パリに見出されたピアニスト」
9月27日(金)より ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー
パリ北駅に置かれた一台のピアノ。バッハの「平均律クラヴィーア1巻2番」が聞こえてくる。ピアノを弾いているのは、マチュー。シングルマザーのもと郊外の団地で育ち、ピアノを習う機会などなく独学だった。
偶然居合わせたコンセルヴァトワール (国立音楽学校)のディレクター、ピエールがマチューの才能を一瞬で見抜き、連絡するように名刺を渡すが返事もせずに去ってしまう。マチューは、地元の不良仲間と盗みをはたらき、警察につかまる。罰として音楽学校で交易奉仕をすることになった。まわりは音楽を専門に学ぶことができる裕福な学生たち。屈折した感情を持ちながら、校内を掃除する毎日を過ごしていた。
そんな折り、ピエールの説得により、ピアノ教師エリザベスについて本格的に練習を始めることになる。さらに、音楽学校で出会ったチェロ弾きのアンナと恋に落ち、あらためて音楽の素晴らしさを知るとともに、自らの生い立ちに対して卑屈な思いを抱く。
さまざまな軋轢を経て、マチューはコンセルヴァトワールの生徒として、コンクールに出ることになる。コンクールの曲はラフマニノフのピアノコンチェルト2番。楽譜をまともに読むこともできないままコンクールへの挑戦は始まる。ふたりの大人たちもまた、図らずもマチューに影響を受け変化していく。
ピエールやエリザベスがマチューに託した夢は叶うのか。マチューは、一度はあきらめかけたコンクールに出場することになる。果たしてマチューの指は、未来を拓くことができるのか。
これまでの映画と際立って異なるのがマチューとアンナの関係性。裕福なアンナは、アフリカ系。シングルマザーに育てられ、経済的には恵まれない家庭で育ったマチューは白人系。一般的に描かれる人種的な優位性と立場が逆転しているシチュエーション。監督、脚本家の考えが、いまの時代を反映していて興味深い。
また、ラ・セーヌ・ミュージカルやクラシックの音楽の殿堂サル・ガヴォー、ノートルダム大聖堂やサン・マルタン運河などで撮影を行い、パリの日常が描かれる。パリ好きには、町のさまざまな顔もみどころだ。
ピアニストとして天賦の才能を持つ主人公マチューを演じるのは、イザベル・ユペールと共演した『アスファルト』での瑞々しい演技が注目されたジュール・ベンシェトリ。祖父はフランスを代表する名優ジャン=ルイ・トランティニャン、父は映画監督で俳優としても活躍するサミュエル・ベンシェトリ、母は故マリー・トランティニャンという、仏映画界きっての新鋭の、満を持しての初主演作となる。
マチューを見守り導いていく大人たちを演じるのは、ランベール・ウィルソンとクリスティン・スコット・トーマスという実力派。
監督は、リュック・ベッソンやギョーム・カネの元で助監督を務めてきた俊英ルドヴィク・バーナード。この映画のテーマを見つけたのは、実際にベルシー駅で青年が弾いていたショパン。帰り道、その演奏が忘れられず、青年のストーリーを自分なりにたどっていったという。
「ピアニスト」を題材にした本作では、劇中で奏でられるクラシックの名曲の豪華競演も見どころだ。 バッハ、ショパン、リスト、ラフマニノフなど、誰もが知る名曲に彩られた、美しいクラシックが織りなす感動のヒューマンドラマだ。
「パリに見出されたピアニスト」
出演:ランベール・ウィルソン クリスティン・スコット・トーマス ジュール・ベンシェトリ
監督:ルドヴィク・バーナード
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