パリから約1時間、シャンパーニュの首都エペルネーで、魅力のメゾン訪問
2019年10月26日
風雅な香りと味わいを持ち、美しいきめ細かな泡が立ち上るシャンパーニュは、冷涼な気候と白亜質石灰岩の土壌を持つ、フランスのシャンパーニュ地方で独自に造られるもの。この地方で造られる発泡性ワイン、瓶内二次発酵を経たものだけをシャンパーニュと名のることができる。こんなシャンパーニュを生産するシャンパーニュ地方の歴史あるブドウ畑や貯蔵、製造施設は、2015年にユネスコ世界遺産に登録されている。
そんな魅力的なシャンパーニュ地方に訪れるなら、首都のエペルネーをぜひ訪ねてみたい。パリ東駅から列車で約1時間10分。緑鮮やかなぶどう畑に囲まれたエペルネーのメインストリート、アヴェニュー・ド・シャンパーニュ(シャンパーニュ大通り)には、モエ・エ・シャンドンやペリエ・ジュエ、ポール・ロジェなど名だたるシャンパーニュ・メゾンがずらりと建ち並び、エペルネーのシャンゼリゼと称されるほど華やかさに満ちている。しかも、この大通りの地下には、110kmに及ぶカーヴが続き、今もなおシャンパーニュ製造に使用されているのだ。
今回は、1889年創業のレコルタン・マニュピュラン(自社栽培&自家醸造)の「コラール・ピカール」Champagne Collard-Picardのメゾンを訪問。4世代にわたって長期熟成にこだわる伝説の造り手だ。驚くほどモダンでお洒落なインテリアのテイスティング・ルームに通されると、オーナーのオリヴィエ&キャロリーヌ夫妻が出迎えてくれた。美しいカウンターで、自社畑の一番搾りのみを使用した「コラール・ピカール・シャンパーニュ・キュヴェ・プレステージ」をサーブしてくれる。透き通った黄金色に輝き、きめ細かな泡が立ち上る。シルキーでなめらかなのど越しで、芳醇な香りが口いっぱいに広がる。聞けば、フランスの権威あるワイン雑誌で高い評価を得、2000年度のヨーロッパ最優秀ソムリエに絶賛されるほどの完璧なシャンパーニュだという。懐の深いエペルネーで、いきなり印象深いシャンパーニュを味わった。
その後、創業1837年、スイス人アンリ・マルク・ドゥ・ヴノージュが創立し、19世紀からヨーロッパ各国の皇族に愛飲されてきたという由緒あるメゾン「ドゥ・ヴノージュ」Champagne de Venogeを訪問。色彩豊かなステンドグラスがはめ込まれた階段を上って、エレガントなゲストルームへ。「プランス」や「ルイⅩⅤ(15)」といったネーミングのプレスティージュの高いシャンパーニュを造っている。すべて一番搾りの果汁を使用。こちらも長期熟成されたリザーブワインが多く使用されている。複雑で繊細なアロマとエレガントでバランスの取れた味わいが、舌の上で鮮やかな記憶として残った。
なだらかな丘に整然と広がるブドウ畑やカーヴを見学し、造り手によって個性が違う美味なシャンパーニュをテイスティング。歴史と伝統のなかにも、現代に合わせたたゆまぬ努力が垣間見られるシャンパーニュ・メゾン。極上のシャンパーニュ・メゾンを訪問できたこと自体が、もう夢のよう。メゾン訪問後は、青いバルーンの気球に乗って、360度エペルネーの街並みやブドウ畑を見渡す(写真上)。エペルネーには知られざる魅力が、まだまだたくさん秘められているようだ。
取材・文:粟野真理子 (Mariko Awano)
協力:Capital du Champagne Epernay