「大浮世絵展 歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の共演」開幕
2019年11月23日
2014年に開催し約38万人を動員した「大浮世絵展」に続く第二弾、「大浮世絵展ー歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」が11月19日〜2020年1月19日(展示替えあり)、東京都江戸東京博物館で開幕した。会期は11月19日〜2020年1月19日(展示替えあり)。
今回は浮世絵の歴史の中でも人気絵師である喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重、歌川国芳の5人に焦点を合わせ、アメリカのメトロポリタン美術館、ボストン美術館、シカゴ美術館、ミネアポリス美術館、ヨーロッパの大英博物館、ギメ東洋美術館、ベルギー王立美術歴史博物館をはじめ、国内を含めた傑作、約260点が一堂に介する。
歌麿は美人画、写楽は役者絵、北斎と広重は風景画と花鳥画、国芳は武者絵と戯画と、それぞれの絵師がもっともその名を知られるジャンルに絞り、その作風の精髄に触れていく。浮世絵は、明治期に欧米に大量に輸出され、特に歌麿、写楽の良質な作品は欧米に多く存在する。これだけの優れたラインアップの展示は過去にもない。「誰もが一度は見たことがある」作品を中心に、保存状態の良い摺りのきれいな作品を集めた。初摺りの珍しい作品も含め、クオリティの高い作品群を見ることができる貴重な機会だ。
浮世絵は、浮世の絵。この世ことを題材にした絵であった。あの世のことを題材とする仏画や空想的な理想郷を描く水墨画などとは違い、流行の風俗や役者や遊女などの人気物、あるいは現実の風景や花鳥を対象として描かれていた。つまり、親しみやすい絵画(木版画)であった。一枚、現在の数百円ほどで入手できたので、子供が買ってもらえる安価なものだった。多くの人の好みに合うように、人間の普遍的な情緒や美意識に訴える工夫がなされた。それが現代を生きる日本人ばかりでなく、欧米やアジアの人たちを虜にする普遍性を獲得したのであろう。
会場は、5人の絵師の5章に分かれており、見どころの解説のコーナーもあり、作品をより深く知ることができる。
喜多川歌麿 「婦女人相十品 ポペンを吹く娘」 江戸時代/寛政4-5年(1792-3)頃、大判錦絵メトロポリタン美術館蔵 Image Copyright ⒸThe Metropolitan Museum of Art / Image source: Art Resource, NY展示期間:2019年12月3日~12月22日(東京会場) |
第一章、歌麿は美人画の代表。展示は世界的にも評価が高い寛政(1789〜1801年)中期の作品が中心だ。「浮気之相(うわきのそう)」と「物思恋(ものおもうこい)」はその横綱。女性の艶やかで官能的な姿をとらえ、内面までも微妙な線と色で表現している。歌麿の美人画の真骨頂は、女性の一瞬の表情を捉えてそこに気持ちや感情を込める点だ。
写楽「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」 江戸時代/寛政6年(1794)、大判錦絵 ベルギー王立美術歴史博物館蔵 Royal Museums of Art and History,Brussels 展示期間:2019年11月19日~12月8日(東京会場) |
第二章、写楽は、江戸三座の芝居に取材し描いた78枚のみ。わずか10か月の活動期間。あまりにも短く作品も少ない写楽だが、評価は世界的に高い。写楽は役者の舞台上の役者の真の姿を描き出す。誇張の目立つ画風が斬新な役者絵は浮世絵界に刺激を与えた。「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」は、悪役の役者が相手を睨み付ける場面。役者その人が悪に見えるような描き方に賛否の評価が出た。
葛飾北斎 「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」 江戸時代/天保2-4年(1831-33)頃、横大判錦絵 ミネアポリス美術館蔵 Photo:Minneapolis Institute of Art 展示期間:2019年11月19日~12月15日(東京会場) |
第三章は、「ビッグウェイブ」として海外でも人気の「神奈川沖波裏」(大波)や「凱風快晴」(赤富士)を描いた北斎。見た瞬間に記憶に残る強い造形を持っている。北斎は90年の生涯のうち、70年にわたって浮世絵のすべてのジャンルにおいて第一線で描き続けた。各地から見える富士の姿を描いた「富嶽三十六景」はさまざまな分野で幅広い活動を見せてきた北斎芸術の総決算だ。
歌川広重 「東海道五拾三次之内 蒲原 夜之雪」 江戸時代/天保5-7年(1834-36)、横大判錦絵 ミネアポリス美術館蔵 Photo:Minneapolis Institute of Art 展示期間:2019年11月19日~12月15日(東京会場) |
第四章は、各地の名所や宿場に取材し、それを叙情的で風情のある頭に仕立てる名人、広重。武士の家に生まれたが、27歳で隠居して画業に専念するようになった。役者会、美人画、武者絵など、多彩なジャンルの作をこなしていたが、北斎の「富嶽三十六景」に刺激を受けて、風景画を描き始め、「東海道五十三次」を手がけた。各宿場の姿に、雨、雪、月、夜、霧など、自然の要素が重ねられると情緒たっぷりの図ができあがる。
歌川国芳 「相馬の古内裏」 江戸時代/弘化2-3年(1845-46)、大判錦絵3枚続 展示期間:2019年12月17日~2020年1月19日(東京会場)
第五章は、豊かな発想で次々とアイディアを出し続け、幕末の浮世絵界を活性化させた国芳。特に勇壮な武者絵、三枚続きの画面にワイドに展開する歴史画や動物を擬人化させて描く戯画は、時代を超えて現代人にも高く評価されている。
本展では国際浮世絵学会の監修のもと、当時の色鮮やかさが残る優品を厳選して展示。浮世絵の代表作を高いクオリティで目にすることのできるまたとない機会だ。
大浮世絵展ー歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演
会期:2019年11月19日〜2020年1月19日(展示替えあり)
会場:東京都江戸東京博物館 1階 特別展示室
住所:東京都墨田区横網1-4-1
電話番号:03-3626-9974
開館時間:9:30〜17:30(土〜19:30)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし2020年1月13日は開館)、2019年12月28日〜2020年1月1日
料金:一般 1400円 / 大学生 1120円 / 小・中学・高校生以下・65歳以上 700円
福岡市美術館、愛知県美術館にも巡回予定
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