テロで妻を失ったジャーナリストからのメッセージ『ぼくは君たちを憎まないことにした』

カテゴリー/ CULTURE |投稿者/ Gouret&Traveller
2023年11月11日

『ぼくは君たちを憎まないことにした』

1110日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほかにて全国ロードショー

 


2015年11月のパリ同時多発テロ事件は、世界に衝撃を与えた。バタクラン劇場でコンサートが行われている最中、無差別に舞台上から観客席に銃撃を続けたテロリストたち。その場を想像するだけで戦慄が走る。

このテロ事件で最愛の妻を失ったジャーナリストのアントワーヌ・レリスが、事件発生から2週間の出来事をつづった世界的ベストセラーが映画化された。主演のアントワーヌ役は、「エッフェル塔 創造者の愛」のピエール・ドゥラドンシャン。「陽だまりハウスでマラソンを」のキリアン・リートホーフが監督・脚本を手がけた。



2015年11月13日の朝、ジャーナリストのアントワーヌと幼い息子メルヴィルは、仕事へ急ぐ妻エレーヌを送り出す。たまたまテレビの画面を見たアントワーヌは、そのライブ映像に凍りつく。パリでは、多数の犠牲者を出すテロ事件が発生していた。エレーヌがいるはずのバタクランでも惨状が起きていた。妻の電話はいつまでも留守電になったまま。行方がわからずパリ中の病院を探し回る。やがて、発見されたエレーヌは、テロリストが無差別に発砲した銃弾の犠牲になっていたのだ。

 



テロ後、オランド首相が戦争状態を宣言。町の機能はすべてストップした。

アントワーヌは誰とも共有できない悲しみに苦しむ毎日を過ごす。息子のメルヴィルは、まだ17か月。お腹を空かせ、絵本の読み聞かせをねだる。ママを呼ぶが、返事は返ってこない。アントワーヌは一人で息子を育てていかなければならないのだと折に触れて気づく。最愛の妻を失った絶望と、幼い子供を育てていかなければならない不安のなか、ある夜、PCに向い、妻の命を奪ったテロリストへ向けてメッセージを書きはじめたアントワーヌ。
「ぼくは君たちを憎まないことにした」。 

この一文はひと晩で20万人以上にシェアされ、テロに屈しない力をパリの人々に与えた。
「最大の復讐は生きること。憎む時間がもったいない」
翌日、「ル・モンド」紙の記者からの電話を受け、このメッセージが新聞の一面を飾る。自分自身に向けた言葉が、世界に広がる。日本でも話題になったこのメッセージが蘇る。

 

 


息子と共に、悲しみに向き合う日々が綴られる。日常は何事もなかったように続く。愛する人がいなくなっても。
人間の機微、心の襞を描くと、フランス人に勝るものはない。家族を失ったことがある人には心から共感できる、日常のなにげない事どもが涙を誘う。

テロや戦争などの肉体的な暴力の前に人は無力だ。憎しみに対して憎しみをぶつけることなく生きていかなくてはならない。人生は不条理に満ちている。ピエール・ドゥラドンシャンの淡々とした悲しみの演技にあらためて教えられる。

 

 

 

『ぼくは君たちを憎まないことにした』

監督・脚本 キリアン・リートホーフ
出演
ピエール・ドゥラドンジャン
カメリア・ジョルダーナ
ソーエ・イオリオ
トーマス・マスティン ほか

(C) 2022 Komplizen Film Haut et Court Frakas Productions TOBIS / Erfttal Film und Fernsehproduktion

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