圧巻の絶景を誇る「TOKYO NODE」に、パリから凱旋帰国、北村啓太氏率いる「アポテオーズ」がオープン

カテゴリー/ GOURMET |投稿者/ Gouret&Traveller
2023年11月28日

20231121日、「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」49階、圧巻の絶景を誇る「トウキョウ ノード(TOKYO NODE)」内に話題のフレンチガストロノミー「アポテオーズ(apothéose)」がオープンした。パリの一つ星レストラン「エール(EHR)」チーム、シェフパティシエの宮本景世さん、スーシェフの渡邊亮介さん、シェフソムリエのベルトランド・ヴェルディエ(Bertrand Verdier)さんとともに新)天地をめざし、長年愛してきたパリを離れた北村啓太シェフ(写真下)の新しい挑戦である。

 

より高いクリエーションに挑むための帰国

2008年渡仏以来、「料理人にとってフランスは天国」と、肉、野菜、魚介のポテンシャルの高さ、ハーブの種類の多彩さ、食材の力強さの魅力の虜になった北村シェフ。食に対する貪欲さや食文化へのリスペクトをDNAに持つフランス人に敬意を表しつつ、フランス料理を真摯に追求してきた。

パリ2区のレアール近く、賑やかに盛り上がる酒バー、「メゾン・デュ・サケ(Maison du Sake)」を抜けるとそこは別世界。「エール」が広がる。日差しがさんさんと降り注ぐ高いガラス天井は開放感にあふれ、夜には星が降り注ぐ、そんな魅力的な空間で、北村シェフが繰り出すのはハーブやエディブルフラワーをたっぷり使った華やかなひと皿ひと皿だった。ハーブは味わいの重層を担う重要な要素のひとつであり、味のない花は使わない。そんな香り高い料理は東京ではどのように進化していくのか。

 

15年日本を離れていたので、さすがに日本の食事情には疎く浦島太郎状態。作り手側の工程を勉強させてもらいながら、理想的な食材を見つける作業から始めなければ、と全国を駆けまわりました。フランスに近いものを日本の中で探したい、と北海道や明石、小田原などを辿り食材探しに邁進中です」

子供のころから食べることが好きだった北村シェフは、いつしかコックコートに憧れ、レストラン業界に興味を持った。当時、「ラ・ナプール」にいた成澤由浩シェフに弟子入り。どうしたらゲストに喜んでもらえるかを第一に料理を組み立てていく成澤シェフの姿勢、その意識の高さに衝撃を受けた。

そんな北村シェフが、渡仏を決めたのは、「レ・クレアション・ド・ナリサワ」で修業していた際、成澤シェフをはじめ渡仏経験済みのスタッフたちとのギャップを感じたからだ。パリの「オーボン・アクイユ」「ピエール・ガニェール」などで研鑽を積むうち、ビストロだった店をガストロノミーレストランとして生まれ変わらせたいというオーナーに「エール」を任され、2019年にミシュランの一つ星を獲得した。

「東京での新店を任せていただけるというオファーをいただき、パリで2つ星をめざすのと日本で新たな挑戦をするのと、どちらがより高みをめざせるか天秤にかけ、帰国する選択をしたんです。ゼロから自分の好みの仕立てで店づくりを表現してほしい、その申し出に心が傾きました。よりレベルの高いクリエーションに挑みたい、と考えたとき、これ以上料理に集中できる環境はないと決心したんです」

 

料理、空間、サービス細部までのこだわり

こだわりは料理はもちろん、多岐にわたり、随所に現れる。まずは、45階に降り立ったときの香り。リラックス、安らぎを得られる、オリジナルの香りを調合して漂わせる。一瞬にして別世界への扉が開く最初の仕掛けだ。

「フランス料理を緊張して食べてほしくない」と用意したのが、贅沢なウェイティングスペース。流れてくるのは、京都・仁和寺とピアノのオリジナル・サウンド。近未来のビルを辿り、行き着いた最終地点には、夜景を眺めながらウェルカムティーで癒されるこの特別な空間を用意した。

北村シェフが好きなガウディのモチーフをデザインした自動扉が開くと、凛とした和とカジュアルな北欧要素を融合させたダイニングが現れる。そこには、食材選びの旅で出逢った88個の自然の素材を、サウンドデザインチームのSOUND CoUTUREがミックスした音が流れる。インテリアは素材感を重視した料理に合う石や木を多用し、ライトやテーブルなどのデザインは、デンマークの「ノーマ(NOMA)」の内装やインスタレーションも担当したSPACE COPENHAGENが手がけた。

「北欧テイストのファンだったので、白を貴重とした曲線で構成された店内空間を細部にわたるまでこだわりをつらぬきました。器は日本の作家に依頼して和の雰囲気も盛り込んでいます」

 

成澤シェフから学んだ引き出しの多さ

「ラ・ナプール」時代にクラシックなフランス料理の基礎を学ぶことができたことで、料理のバリエーションが飛躍的に増えた。リエーブルやべキャスなど、本来なら修業中の身分では触らせてもらえないようなジビエも扱わせてもらえたことが、オリジナリティあふれる料理を生み出すベースになっている。

「ビストロで学んだことが今の自分の原点です。たとえば、一頭買いの食材のどの部位をどのような調理法にすればベストの料理になるかを学ぶことができた。80人のゲストの食事を4人でまかなっていたので、それが今の数あるレパートリーの引き出しにつながっています」

 

新店での「日々変化し続ける」10から12皿のディナーコース「Menu apogée(メニュー アポジェ)」 では、肉料理をゲストのお腹の余力のある時に出したい、と意図的にコースの中盤に出す変則的な構成を考えた。魚料理を含めた前菜3皿に肉、野菜、米という流れの料理は、「エール」時代よりシンプルに食材ありきの滋味深い皿のように感じる。

「今のところ、塩はフランスで使っていたゲランドを使いたいと思っています。旨み、ミネラル感、深みが日本のものより優れています。日本の塩は、足していくと素材の旨みが内面から出ないんです。これほど違うのか、塩こそが素材の旨みを引き出しているのだ、とあらためて痛感しました。調味に使うスパイスは、ヨーロッパから取り寄せ、大地のものは、日本のテロワールを大切にした食材を使う。フランスの優れた要素は取り入れ、鳩などはフランスから仕入れる。一方で、蝦夷鹿は日本の「エレゾ」の肉がフランスより良質なので組み入れたい。産地にこだわらず、ハイクオリティな素材を揃えていきたいと試行錯誤中です」

 

スペシャリテは、パリで思いついた米のブイヨンを使ったひと皿 (写真上)。米を使って白濁したスープが作りたい、と思いついたのがきっかけだった。日本の一番おいしい食材、米を使いオリジナリティを出していきたい、との思いがあった。

「東京では、北海道の繊細な香りのニラオイルを合わせたスープをかけ、さらに甘味や風味が深い味わいに仕立てました。合わせるラビオリには静岡の「天城軍鶏」を詰めて、あふれる肉汁を楽しんでいただきたいと思っています」

日本語堪能なソムリエのベルトランさん (写真下)は、ワインのセレクションを日本のインポーターを訪ねながら模索中だ。フランスの生産者との直接取引で、日本ではなかなか飲むことのできないワインも入れていきたいと考えているという。

ディナーコース「メニュー アポジェ(Menu apogée)」は、25,000円 (別途サービス料12%)。アルコールペアリングは15,000円。グラスワインも充実しており、ペリエ ジュエのベル エポックなどがメニューにのることがある。

日本人ならではのきめ細やかさとフランス人の瞬間的な集中力のバランスを考えながら料理作りをしていく技を磨いてきた北村シェフが切り開く新時代のフランス料理に期待したい。

 

apothéose (アポテオーズ)
住所 :  東京都港区虎ノ門 2-6-2 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー49階 (TOKYO NODE内)        

営業時間 : 17:30~23:00 (19:30L.O.)                   

定休日 : 日・月

アクセス : 東京メトロ日比谷線「虎ノ門ヒルズ駅」A2出口直結、東京メトロ銀座線「虎ノ門駅」B2出口より徒歩約6分

https://apotheose.jp/

text:Miki Yamashita

 

 

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