フランス人に愛されるパリの日本人シェフ④「レザンファン・ルージュ」 篠塚大シェフ
2019年02月10日
レザンファン・ルージュ (Les Enfants Rouges)
定評あるレストランガイド「ルベイ」のビストロ版で、ベスト・ビストロに選ばれたこともある「レザンファン・ルージュ」。オーナーシェフの篠塚大さんは常に長い行列ができる人気店、サン・ジェルマン・デ・プレの「ル・コントワール・デュ・ルレ」(Le Comptoir du Relais)でイヴ・カンドボルド・シェフの右腕として活躍してきた。カンドボルド・シェフは、ガストロノミーとビストロをかけあわせた「ビストロノミー」の立役者。業界の雄として尊敬を集めている。
ビオレストランやカフェがオープンし続けるトレンド・スポット北マレ地区で、食べごたえある伝統的ビストロ料理を作り続ける篠塚シェフ。路地に佇む赤がアクセントのレトロな外観に、壁に描かれたイラストと店名が肩肘張らないフレンドリーな雰囲気を醸し出す店内。このクラシックなビストロを2013年にオープンし、独立を果たした。
実はフランスに来るまで料理をしたことがなかったという篠塚シェフ。2000年、フランス語を学ぶため渡仏。フランス南東部の町、アヌシーでホームステイをした。その家族に紹介されたレストランのキッチンで下働きのアルバイトを始め、料理にめざめた。一つ星だった「クロ・デ・サンス」を修業先に選び基礎を学ぶ。その後、トゥールで仕事をしたときのシェフがカンドボルド・シェフと知り合いだったため、パリの「コントワール・デュ・ルレ」へ。カンドボルド・シェフの下で働くうちに、いつか自分の店を持ちたいと思うようになっていく。
シェフは料理を作ることでゲストに喜びを与える仕事だ。食を通してゲストとコミュニケーションを取ることに意義を見出している。クラシックなフレンチをベースに個性的な趣向を凝らしたひと皿ひと皿。得意とするのは内臓系料理。パリジャンたちが絶賛するリードヴォーは定番だ。鶏肉のような食感とフワッとした肉質が絶妙な火入れ。また、山海の風味を巧みに組み合わせる。鶏のローストにオマール海老のソースなど、予想を超えた食材同士のマリアージュが見事だ。
フランス料理をフランスで学んできたからこそクラシックなフレンチを堪能できる店だと強く示したかった。日本的な要素はほぼゼロ。たまに抹茶を使ったデザートを作るくらいだという。柑橘やビネガー使いで軽さを出したり、味が重たすぎずないように心がけている。
フランスは食材が豊富で、乳製品やバター、牛乳、卵もおいしい。火入れはほとんどバターを使うほど、バターは欠かせない。ふんだんにあるフランスのクオリティ高い素材に魅了され、日本に帰る選択肢はなかったと語る。フランス人の常連が足しげく通うのも納得の魅力的なビストロだ。
前菜 ジビエのテリーヌ
猪、鹿、鳩、豚の肉のベースにジュニエーブル(ネズの実)が効いている。鹿だけではパンチがない、グルーズ(雷鳥)を加えるが、グルーズだけでは強すぎる。両者のバランスをとり味を整える。それが篠塚シェフ流。ジビエが終わると季節によって内容は変わる。
メイン リードヴォー
自信を持つスペシャリテ。業者が持ってきてくれる良質な素材をバターとオリーブ油、ニンニク、タイムで。外はパリっ、中はふわっとなるよう火入れには気をつかっている。ほうれん草、キノコ、トランペットなど、季節の素材を添える。希少価値が高い子牛の時にしかない内臓の王様。普通にソテーすると、味自体はあまりないため、ニンニクとタイムでパンチを強めるのが篠塚シェフのオリジナリティー。
デザート ババ
篠塚シェフが個人的にも好きなスイーツ。他店ではなかなか食べられないデザートになりつつある。ビストロらしく大ぶりのものを出す。とはいえ最後に重いババは食べにくいので、軽く仕上げている。シロップは柑橘系。ラム酒をかけてもさほどアルコールを感じない。好きなだけかけられるようラム酒のボトルも置かれる。秘伝のシロップを使い回しており、ここだけにしかない味。シャンティーもフランス的に大盛りで。
Les Enfants Rouges レ・ザンファン・ルージュ
9, rue de Beauce 75003 Paris
01 48 87 80 61
メトロ:8番線 Filles du Calvaire, St-Sébastien Froissart
火・水曜休
平日ランチ 40€
ディナー 55€、75€