カテゴリー/ その他 |投稿者/ Gouret&Traveller
2024年01月01日

スリランカでジェフリー・バワの美学に浸るホテル5選 vol.1

コロナ禍から解放された2023年、海外への扉がようやく開いた。抑えていた旅の欲求が爆発したかのように、人々はさまざまな国をめざした。ところが、現地に着いてすぐ、とんでもない物価高と円安に悩まされることになる。欧米では、ホテルの宿泊料金の高騰、食費にいちいち驚愕、予定通りの楽しみが阻まれる、という経験をした人も多いことだろう。

そんななか、2024年のリゾートディでネーションとしてイチオシなのがスリランカだ。

 

写真上からシギリヤロック、ゴールの要塞、バワ建築のホテルアヴァニ・ベントゥータ

コロナ禍でブロックアウトしていた時期もあり、ようやく観光業が復活したばかり。観光客も比較的少ない今、ぜひ訪れてみてほしい。

経済破綻や政情不安という問題はあるものの現在は落ち着きをとりもどし、活気あふれる首都コロンボ。スリランカは、アジアの国の中では、油断しなければ、の注釈付きで比較的女性一人旅でも安全。アーユルヴェーダを目的に一人で訪れる女性も多い。

なにより物価が安く、東南アジアのリゾートのホテルが軒並み値上がりしているのに比してリーズナブル。アマンリゾートなどを除けば、中級クラスでも居心地がよく、おしゃれなホテルが多い。

なかでも、憧れと言えばジェフリー・バワ建築のホテル。スリランカのなかでは高級だが、世界的な基準からはかなりリーズナブル。為替レートにもよるが一泊200ドル台とお手頃価格がうれしい。

 

ジェフリー・バワ(写真上)、スリランカ人の母親とイギリス人の父親のコロンボの裕福な家庭に生まれた。兄はランドスケープ・アーキテクト、ジェフリー・バワは英国で学び、弁護士となってスリランカ(当時はセイロン)にもどってきたが、2年ほど、世界を放浪したあと、30代後半にまた英国にもどり建築学を学ぶ。スリランカに自分の理想郷を作りたいとの思いからだった。

はじめに購入した土地は、スリランカ南部のベントータ。作り上げた理想郷は「ルヌガンガ」と呼ばれ、現在はホテルとして利用され宿泊が可能だ。2003年にバワが亡くなった際には、敷地内の小高い丘に埋葬された。

バワの建築は、スリランカ独自の「文化」や美しい海や山など 大自然を一体化させ、自然に建築に解けこませるデザインが特徴。木や岩など取り除かずに、建物内に自然のまま残し、中と外界がシームレスに連続している。光や影の影響も計算し、1日のうちの陰影が美しく変化していく。客室だけでなく、ロビーやレストラン、庭、家具などあらゆる場所が自然と融合している。その空間に馴染むよう置かれたオブジェやアートも自然の一部。ジェフリー・バワ自身の見ていたお気に入りの風景は、生前備えられたままの椅子に座ることで、今、われわれも眺めることができる。

アマンリゾーツの創業者エイドリアン・ゼッカやアマンリゾーツの建築家ケリー・ヒルは、バワの建築スタイルにヒントからインスピレーションを得たと言われているが、今やアマンの象徴でもあるインフィニティプールを生み出したのはジェフリー・バワである。多くのバワ建築のホテルには、インフィニティプールが備えられている。

そんなジェフリー・バワのホテルの魅力的を巡るスリランカの旅。数あるなかから選んだマストステイ5選をご紹介する。

 

ジャングルを体感できる

ヘリタンス・カンダラマ

バワの作品の中でも、もっとも人気があるホテル。ほとんどがビーチリゾートであるなか、唯一、内陸部、ジャングルの中に位置している。世界遺産シギリヤロックを目の前に広がるカンダラマ湖越しに遠くから眺められるという絶好のロケーションに建てられた。大きな岩にホテルが吸い込まれるかのような作りのエントランス。ゲストルームはバワの美意識が詰まっており、窓を開ければ椰子の木が生い茂り、ジャングルに生きる野生動物たちの喧騒が聞こえる。ジブリ映画のモチーフにもなったという、バワの「自然との融合」が体感できるホテルだ。

 

 

空間すべてがバワの創り上げたアート

クラブヴィラ

友人たちのためにバワがデザインし、現在はブティックホテルになっている。日本の企業が買い取り、隈研吾氏がリノベーションを担当。ホテルというより一般住宅のような造りで、友人宅を招かれたような親近感ある空気が漂う。どこを切りとっても絵になるとはこのことか、と思うほど360度美に満ちている。時間帯により天井の装飾が床に映る影が変わり、それも計算された美の一つ。ゲストルームは、天蓋ベッド付きのコロニアル風。パステル調の色合いに揺れるレースが異国情緒たっぷり。

庭の外れには、なんと線路が通っており、コロンボ・ゴール間を電車が走っている。線路を渡ると木々の影からインド洋が広がる。

イタリアにも住んでいたためか、どのバワホテルのレストランもイタリア料理が充実。ちなみにバワはラザニアが好物だったとか。料理に使われているお皿は、隈研吾デザイン。スリランカにあるノリタケの工場で作られた「Shiro」というオリジナルで、テーブルコーディネートも洗練の極みである。ホテルというより、親戚のようなスタッフのフレンドリーなおもてなしで和みの時間が流れる。

 

バワが築き上げた唯一無二の理想郷

ルヌガンガ

バワが生涯をかけて造った別荘。広い敷地に川が流れ、「塩の川」という名ルヌ()ガンガ()”と呼ばれる。建築デザイン、家具やインテリア、オブジェすべてにバワのこだわりが溢れている。

バワ建築に興味のある人には外せない、最もバワらしい場所。熱帯雨林が生い茂るスリランカの湖畔の土地に、周囲の自然に溶け込むように設えられたバワの館と庭。

留学時に見たイギリスのカントリーハウスとイギリス庭園や長期滞在をしたイタリアのヴィラとイタリア庭園に少なからず和のテイストも取り入れられている。

東洋、西洋、アンティーク、モダンをトータルに統一感を持つ美に昇華させる。ルヌガンガはホテルというより純粋なアート空間である。

ルヌガンガガーデンは、宿泊者でなくても一般のガーデンツアーに参加でき、ガイドさんがゆっくり案内してくれる。広い敷地には、水田があったり、ハスの花の咲く池があったり、無国籍な雰囲気のなか、イタリア彫刻や遺跡のオブジェ、スリランカの現代アートがときおり現れる。バワがランチを食べていたテーブルがそのまま残されており、バワの好きだった風景やそこに流れる空気を体感することができる。写真下は、バワが好んで毎日ランチを取っていたテーブル。

夜は枝ぶりもアーティスティックな大木の間から見える静かな湖畔を眼前に、なんとも趣きあるレストランで食事ができる(写真)。写真上から2番目はディナー、3番目は朝食、スリランカには、さまざまな熱帯植物を見ることができるが、花や実の付け方、枝や葉の形状が、もはや芸術作品のようだ。

夜ともなれば広い敷地は漆黒の闇。本館と離れたゲストハウスのシナモン棟には、スタッフが案内してくれる。敷地内では、マングースやイノシシなどの野生動物に遭遇することもあるので自然のなかにいることを実感できる。

 

水をテーマにしたバワ最後のホテル

ザ・ブルーウォーター

バワ最後のホテル建築。ジェフリー・バワ建築の完成系である。当初から椰子の木の配置が設計図面に描かれ、もともと自然に立っていた椰子の木々がホテルのデザインに組み込まれている。ロビーや廊下の脇にも水面が広がっており、ブルーウォーターの名前そのもの。インフィニティプールやレストランの前の池に映る椰子の木々はまるで絵画のように美しい。洗練の極みのトロピカルビーチリゾートである。

 

 

バワが暮らした部屋で真髄を味わう

ナンバーイレブン(No.11)

コロンボにあるジェフリー・バワの自邸兼仕事場。現在は、ジェフリーバワ財団(Geoffrey Bawa Trust)の本部も置かれている。高級住宅地、バガタレ・ロード33通り11番地にある番地に由来し、「ナンバー11(イレブン)」と呼ばれる。

インテリアのほぼすべてが生前のまま残され、リビングや寝室には、旅で買い集めた収集品、アート作品やアンティーク、ホテルで使うため自身がデザインした椅子やテーブルなどの試作品が当時のまま保存されている。広いリビングと寝室は、バワが愛着を持って創り上げた空間。バワの使っていたソファに座って、数々の装飾品を眺めれば、バワを身近に感じることができるだろう。宿泊者は一組だけなので、なかなか予約がとれないが、宿泊者でなくても、見学ツアーが開催されている。

text & photos Miki Yamashita

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