石戸谷結子の世界オペラ散歩 ⑨ フィレンツェ美術館巡り、シエナのちヴェネチア
2017年12月09日
クラシック音楽、なかでもオペラを専門に、多数の評論を執筆。難しく思われがちなクラシック音楽をわかりやすく解説し、多くのファンを持つ音楽ジャーナリスト、石戸谷結子さんが、世界の劇場を巡り、オペラの楽しみ方を教えてくれる連載、「石戸谷結子の世界オペラ散歩」第9回目は、イタリア3都市のオペラ巡り、まず、フィレンツェとヴェネチアの町歩きの楽しみ方をご紹介いただきます。
◎フィレンツェで美術館三昧
ローマからは鉄道でフィレンツェへ。驚いたのはまたも中国人客の多さで、町の中央はいくつもの団体で埋め尽くされている。一番人気のウフィッツィ美術館は予約をしていても、入場には並ばなければいけない。
ひとごみを避けるなら、フラ・アンジェリコの絵がたくさんあるサン・マルコ修道院へ。傑作「受胎告知」がひっそりと迎えてくれる。もう一つなら、アルノ川を渡ったパラティーナ美術館へ。ピッティ宮殿の中にあり、ラファエロの傑作がずらりと並んでいる。ボルゲーゼ、ウフィッツィ、パラティーナ、サン・マルコと美術館めぐりをすると、足だけでなく、頭も相当疲れるような気がするのは、トシのせいでしょうか?
そんなわけで翌日はバスに乗って郊外へ。1時間半ほどバスに揺られると古都「シエナ」に着く。途中の景色はまさにトスカーナのイメージそのもの。なだらかな丘が連なる森と草原、どこまでも続くワイン畑とオリーブ畑。お天気の良い日は電車ではなく、バスか車がお薦めだ。路線バスの値段は片道7€とリーズナブル。電車だと最近できた駅から街まで延々続くエスカレーターが使えるが、バスは街の広場に着くので便利だ。
シエナで有名なものは、美しい彩色の大理石が見事な大聖堂、扇型の優雅なカンポ広場、広場に建つマンジャの塔などが有名だが、二度目のシエナなら、急坂と路地が続く街並みを徒歩で散歩。必見は聖カタリーナ(隠遁生活と断食を続けた聖人)を祭るドメニコ教会とカタリーナの生まれた家の付近から見るシエナの街。小高い丘にぎっしりと家が建ち、中世そのままのような古い街並みを見ることができる。夕日の頃がお薦めだ。
◎ヴェネツィア 迷路のような町を歩き歌劇場へ
フィレンツェから鉄道に乗り、2時間ほどで、ヴェネツィアのサンタ・ルチア駅に到着する。古かった駅が近代的に変身。その分、観光客も急増し、サン・マルコ広場は鳩が留まる場所もないほどだとか。実際に行ってみたら、鳩は数匹だけ留まっていた。
この街も中国人団体客がいっぱいで、特にゴンドラはほとんど貸し切り状態。全員がゴンドラの上で自撮りしていたのには驚いた。それはともかく、ヴェネツィアの目的はフェニーチェ歌劇場でオペラを見ること。曲がりくねった路地をたどり、思わぬ所で歌劇場の正面に突き当たったりするのが街歩きの醍醐味だ。ちなみに方向オンチなので、7回目のヴェネツィアで初めて迷わず、歌劇場にたどり着いた。
石戸谷結子(音楽評論家)
Yuiko Ishitoya, Music Journalist
青森県生まれ。早稲田大学卒業。音楽之友社に入社、「音楽の友」誌の編集を経て、1985年から音楽ジャーナリスト。現在、多数の音楽評論を執筆。NHK文化センター、西武コミュニティ・カレッジ他で、オペラ講座を持つ。著書に「石戸谷結子のおしゃべりオペラ」「マエストロに乾杯」「オペラ入門」「ひとりでも行けるオペラ極楽ツアー」など多数。
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