地上最後のシャングリラ、安息と癒しのブータン vol.2
2023年07月18日
世界中のホテルラバー憧れのリゾートスパ「シックスセンシズ ブータン」を巡る旅。2回目は、 近代と伝統が混在する首都ティンブー散策。そして感激の連続、「シックスセンセズ」流リトリートの数々とは?
ブータンの今、歴史と文化を俯瞰する
首都ティンプー。伝統的な建築様式の建物が並ぶ中、民族衣装でお寺を巡礼するブータンの人々。近代と歴史、伝統が混在する街を散策する。
ティンプーを車で走ると信号が一つもないことに気づく。シックスセンシズのガイド、ププディムさんによると、一度試しに信号を設置してみたものの、誰も守らないので撤去されたとのこと。警官が行う手信号で十分規律が守られているのだ。さらには、街の景観を守りたいという人々の思いも反映された首都ティンプー。伝統的な建築様式の建物が並ぶ中、民族衣装でお寺を巡礼するブータンの人々。近代と歴史、伝統が混在する街を散策する。
若者達がブータンの歴史や伝統文化をツーリストに披露。中央は手の不自由な障がい者が足で伝統彫刻に取り組むアトリエ
まずは、民俗博物館で、ブータンの歴史と文化を俯瞰する。ブータンの伝統的な農家を再現する古民家を改装して作られており、一階は家畜の小屋、二階は貯蔵庫、三階は住居・台所・仏間が一般的な農家の造り。農具、機織り機、お酒アラの蒸留のかまどなど実際に使われていた物が展示されている。障がいを持つため足で制作に取り組む伝統工芸アーティストの工房もあり、国のスポーツ、アーチェリーや伝統舞踊のパフォーマンス、と一通りプータンを知ることができるラインナップになっている。
祈りの場としての二つのシンボル
ティンブーの人々の信仰心は強い。祈りの場としてのシンボルのうちの一つに訪れる。1973年に亡くなった3代国王を記念して建てられた仏塔型寺院、メモリアル・チョルテンへ。3階建ての仏塔内部には、極彩色の壁画、歓喜仏、忿怒尊が納められまばゆいまでの空間。なかでも中央に置かれた憤怒尊の形をした歓喜仏(ヤブ・ユム)の立体マンダラはここでしか見られない。それぞれの仏教世界が各階に表現されていれており見事な精緻さに目を見張る。経典が入った筒を時計回りに1回転させるとそのお経を1回読んだことになる、というマニ車を廻しながら観音菩薩の真言「オム・マニ・ぺメ・フム」を唱える人々が次から次へとやってくる。
もう一つのシンボルは、ティンプーを見下ろす巨大な仏像。信仰心の厚い人々が列をなして祈りを捧げている。ブータン政府公式では「ブッダポイント」と称するが、「クエンセルポダン」とも呼ばれる。鎌倉の仏像の5倍の大きさという説もあり、いかに巨大かがわかる。
クオリティの高い食、美術工芸品
主食のハーブ・スパイス類、多様な米、豊かな乳製品が洗練されたディスプレイで並ぶ
次に訪れたのが、”サブジバザール”(ヒンディー語で野菜市場の意味)と呼ばれる市場。野菜や米、乳製品、スパイス、お香など洗練されたディスプレイで並べられている。アジアの市場の喧騒はなく、ゴミ一つ落ちていない清潔さだ。ソウルフードの唐辛子をはじめとするスパイス、ハーブ類が多種多様。南部のインド国境地帯は温暖なため、国産トロピカルフルーツもそろっている。殺生は御法度であるが、インドから輸入した干した魚やソーセージなども入手可能だ。ちなみにブータンの野菜は、日本の農業指導者西岡氏が普及させたものが多く、ブータンの英雄として尊敬されている。
正装の際の刺繍が施された靴。100万円を超える織物やお土産には、リーズナブルにベッドカバーやクッションカバーも。
町の至るところにブータン様式の彩りの美しい装飾がほどこされており、美術工芸品の質の高さも特筆ものだ。ティンプー中心から少し南に位置する「ガギェル・ルンドゥップ織物工房」では、ブータンの伝統的民族衣装、男性の「ゴ」女性の「キラ」を織る姿を眺めることができる。売店には、100万円以上の高価な織物も並ぶが、ベッドカバーやクッションカバー、巾着などはお土産にぴったり。アジアの国々でよく見られる土産物の押し売りはまったくなく、ゆっくり美しい織物や刺繍を堪能することができる。
森林資源に恵まれたブータンでは、日本の和紙とよく似た、ブータンの伝統的な手漉き紙(デショ)が製造されている。お経を印刷する紙として長く使用されてきたが、日本の紙漉きの技術も入り、近代化されつつあるそうだ。紙作りの工房も見学でき、レターセットやカレンダー、しおりなども購入可能だ。
自然と共生する洗練されたシックスセンセズ流リトリート
ホテルのスタッフの皆さんの粋な山頂のサプライズアフタヌーンティー。
町を堪能したあとは自然を巡る。「ホテルの裏山を軽くトレッキングしましょう」とガイドさんに誘われて2700メートルの酸素の薄さに不安を覚えながらも山を登る。ガイドさんのヘルプのもと、息苦しさに眩暈を感じたところで無事山頂へ到着。360度ヒマラヤの山々が連なる絶景だ。仏教信仰の一つ、祈りの旗、ダルシンがひるがえる神聖な地の清廉な気が流れる。
到達した地に設えられていたのは、サプライズのアフタヌーンティー。ブータンの人々のお菓子やマサラ茶、バラの花までがお出迎え。スタッフが解説してくれるブータン人が大好きな米のお菓子を食べながら、清らかな山の空気を吸い込む。自然とともにウェルネスを考慮して生み出されたシックスセンシズならではの極上のエンターテイメントである。
足を引きずりながらホテルにもどると待っていたのは、「シックスセンシズ スパ」ならではのブータン式ホットストーンバス。香りも芳しい癒しのハーブがバスタブいっぱいに満たされた中、身を沈めると真っ赤に燃えた大きな石が次々と投げ込まれる。その光景には驚愕ながら、ハーブの効能がより高められ、疲労の回復を早める。体の芯から温められ、血の巡りがしだいに良くなっていく。確かに翌日に体の痛みはまったくなく、疲れは奇跡のように残っていなかった。
To be contined…
問い合わせ先 0120-677-651(IHG内)
地上最後のシャングリラ、安息と癒しのブータンvol.1 https://groumet-traveller.com/14564.html
地上最後のシャングリラ、安息と癒しのブータンvol.3 https://groumet-traveller.com/14755.html
text&photos Miki Yamashita、ブータン政府観光局
「地上最後のシャングリラ、安息と癒しのブータンvol.1」