地上最後のシャングリラ、安息と癒しのブータンvol.1

カテゴリー/ VISIT |投稿者/ Gouret&Traveller
2023年07月01日

鎖国から観光立国への転換。「秘境」から「幸せの国」へ。

ヒマラヤ山脈南麓に位置する仏教王国、ブータン。長きにわたる鎖国の末、手つかずの自然、豊かな文化や伝統遺産に触れる、高価値かつ少人数観光という持続可能なアプローチで観光客を迎え入れている。その恩恵に預かり、遥かな国を目指した。

今はただ、「幸せの国」という漠然とした憧れを抱かせる未知の国。この地の魅力を最大限享受できるよう、旅人はただ無の境地、フラットな心でいればいい。限りなく清廉な気が流れるこの地で、「シックスセンシズ」という桃源郷が心を満たしてくれるからだ。

 

気高い価値観と崇高なる精神性を共有するリゾート誕生

「ブータン」といえば、「秘境」である。まるで定冠詞のごとく、セットで使われてきた「秘境ブータン」。

というのも、1972年まで鎖国政策をとっており、長きにわたり内情をうかがい知ることが不可能だったからだ。ブータン固有の社会や文化を守るため、さらには影響力のある隣国、中国やインドに対し自らのアイデンティティを維持するため、他国とは隔絶する道を選び、ある意味自己完結を貫いた国だった。

海外からの旅行者を受け入れたのは 1974 年からだが、誰にでも広く門戸を開いたわけではない。長く閉ざされた未知の国だったのである。

そんなブータンが今、観光に力を入れ始め、クオリティの高い旅を実現させるべく、世界中のホテルラバー憧れのリゾートスパ「シックスセンシズ ブータン」を招き入れた。ブータンの気高い価値観と崇高なる精神性を共有し、この地の最大なる精粋をゲストに提示する。ヒマラヤの山々が連なる自然景観の輪郭に溶け込み、ローカルの文化やデザインを施し、細部にわたるまでこだわり抜いて造り込まれた精緻な空間である。

 

ブータン西部と中央部の渓谷、パロ、ティンプー、プナカ、ガンテ、ブムタンに点在する5つのロッジを擁する「シックスセンシズ ブータン」。今回の旅で待っているのは、「シックスセンシズ ブータン」ティンプー、プナカ、パロでの心整うステイである。

まず向かうのは、標高およそ2,650mに位置し、町の南にある谷の斜面に建てられた、ティンプー渓谷を一望できる絶景パラダイスだ。

 

伝統の様式美、美しき民族衣装に迎えられて

オーバーツーリズムを避け、旅のクオリティを保つことが優先されているブータンを訪ねるには、普通とは少し異なる手順が必要だ。まず、現地または日本のブータン専門旅行会社を通じてすべての旅程を手配しなければならない。宿泊費、移動費、ガイド料、食事代、各種入場料、税金などほぼ全てを含んだ 「公定料金」が設定され、滞在にかかる最低料金が決められている。時期によって異なるが、大人 1 1 日あたり 200~250 米ドル程度、ホテルのランクによりプラスの料金が派生する。VISAの取得も必要である。直行便はなく、日本からは、バンコク経由でブータンの国際空港パロに入るのが一般的だ。

 

バンコクからパロまではブータンエアーで約3時間15分。乗り込んだ機体にはブータンの国旗に描かれている神々しい龍が舞う。ブータン人は、ブータンを「ドゥク」(Druk、雷龍)と呼ぶ。チベット語の方言で「龍の地」が由来だという。

滑走路ギリギリに水田や家屋が並ぶブータンの風景を窓越しに眺めつつ到着した機内から外に目を向けると、麗しいブータンの伝統的な様式美に彩られた空港ターミナルが現れる。あまたの空港に降り立ってきたが、まちがいなく世界一美しい空港ではないだろうか。

入国審査を抜けて外に出ると、華麗な装飾が施されたブータン様式の門の向こうに民族衣装に身を包んだガイドたちがゲストを待つ姿が目に入る。長い旅の果て辿り着いたブータンの旅が始まった、そう感じた瞬間だった。Six Senses」のボードを持って迎えてくれたのが、Phub Dem さん、Emgij Yrrekさんの美形コンビである。

空港から「シックスセンス  ティンプー」まで、車で約1時間半。道すがらブータンの基礎情報や歴史を詳しく語ってくれる。ちなみにブータンの公用語はゾン語だが、学校教育が英語で行われるため、ほとんどのブータン人はバイリンガルである。

 

ヅェツン・ベマ・ワンチュク王妃のInstagramより、ワンチュク国王と王妃。結婚式を挙げて一か月後に夫妻で来日。凛とした気高さに日本人はブータンへの憧れを強く持った。

 

ブータンが日本で脚光を浴びたのは、2011 年に 国王夫妻が来日して、現ジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク第5代国王が国会でスピーチを行った時だ。

GDP(国内総生産)を目指すのではなく、GDH (国民総幸福量)を掲げる国であることを誇り高く宣言。「秘境」から「幸せの国」へ、ブータンのイメージが180度転換し、日本からの旅行者も爆発的に増加した。

国民の心の拠り所、ワンチュク国王

民族衣装「ゴ」をまとった端麗なワンチュク国王のエレガントな振る舞い、人徳と品格を感じさせるスピーチは、日本人にも強烈な印象を放った。オックスフォードで政治学を学んだワンチュク王の立憲君主制が目指すのは、伝統文化・自然環境の保護を第一に、教育、医療の普及や産業育成などの近代化と調和させる政治だ。

ワンチュク国王の演説の中で印象深いフレーズがある。

「ブータン人は、何世紀も続けてきたように、人々の間に深い調和の精神を育む、質素で謙虚な生活を送り続けています。今日のめまぐるしく変化する世界において、国民が何よりも調和を重んじる社会、若者が優れた才能、勇気及び品位を持ち、先祖の 価値観によって導かれる社会、そうした思いやりのある社会で生きる我々のあり方を、私は最も誇りに思います」(参議院HPの仮訳より)

現在の先進国はさまざまな面で限界を迎えている。斉藤幸平氏がベストセラー「『人新世』の資本主義」で示唆した「人新生」の時代に突入したからである。曰く、人類の経済活動が地球を破壊する環境危機が迫りくる。資本主義の際限なき利潤追求を止めなければならない。

そんな、今、そこにある危機ををブータンはあらためて教えてくれる。地球が悲鳴を上げる現在、ブータンの価値観はこれからの国の在り方のモデルケースになるのではないか。

ワンチュク国王は、立憲君主制への移行を発表した際、国民が大反対したという逸話があるくらい国民に愛され、心の拠り所となっている。国王を慕うあまり、国民の大半が国王の顔写真をバッヂにして胸につけているほどだ。

 

安寧の空間と心尽くしのもてなし、圧巻の景観

写真上から、「シックスセンシズ」の支配人とスタッフ(左2人)とガイドのブブディムさん、エムジェレクさん。「シックスセンシズ ティンブー」のインフィニティプールはヒマラヤへ向かい、祈りの聖なる館が建つ。一面の窓にインフィニティプールと連なる山々、望遠鏡は大仏クンセル・ボダンに焦点があてられている。ロビーではなくリビングルームが広がるなか、差し出されたプレゼンテーションも美しいウェルカムドリンク。

 

そんな話に興じながらホテルに到着すると同時に扉が開きスタッフが迎え入れてくれる。その先の大きな窓の向こうにはインフィニティプール。そして、ヒマラヤの山々が層をなして迫り来る。遥か遠くの正面にはティンプーの大仏クンセル・ボダンがわずかに視界に入る。その大仏に正確に焦点を合わせた望遠鏡も用意されていた。

ハーブと果物をミックスしてジンジャーなどを加えたウェルカムドリンクを一口、喉を潤しながら足を踏み入れると広がるのは、居心地の良さそうなリビングルーム。知り合い宅を訪ねてきたかのような温もりに精神も肉体もすっかり弛緩する。ここでは、チェックインカウンターやロビーは邪道である。

 

 

ナチュラルでウッディなロッジだが、ブータン様式の窓枠や装飾が美しい。山々の風景が部屋の一部となるようにデザインされた全面の窓。ボディソープ、シャンプーなども洗練されたボトルに詰められる。ガラスのボトルには、自家製のレモネードやフルーツ、ハーブのアイスティーなど。ライムも用意されている。

 

広大な敷地に76㎡のスイートが全20室、1ベッドルームから3ベッドルームまでヴィラを5室が点在する。カートで緩やかな山道を登って部屋に入ると、全面窓に映るのは雄大な山々の眺めのみ。ゆったりくつろげるソファーに深々と体を埋めて、絵画のような光景を見つめる。

サステナブルという言葉が流布する前から、「シックスセンシズ」ではすべての仕様が持続可能なスタイルになっており、とりわけブータンの国としての価値観を共有するこの施設には、使い捨てのペットボトルやアメニティグッズは一切ない。そして、タオルやスリッパ、バスローブ、ヨガマット、あらゆる備品におけるシンプルの極みの中に見え隠れする遊び心が、美意識の高さを感じさせる。

クーラーには、地元産のワインやクラフトビール、ガラスのボトルに詰められた自家製のハーブ入りレモネードやアイスティーが入っている。ライムを絞ったドリンクに疲れを癒されながら、明日訪ねるこの山の向こうの町、ティンプーに思いを馳せる。

To be cotinued…

問い合わせ先
https://www.sixsenses.com/en/resorts/bhutan
日本からの問い合わせ先 0120-677-651(IHG内)

 

地上最後のシャングリラ、安息と癒しのブータンvol.2. https://groumet-traveller.com/14564.html

地上最後のシャングリラ、安息と癒しのブータンvol.3  https://groumet-traveller.com/14755.html

地上最後のシャングリラ、安息と癒しのブータンvol.4   https://groumettraveller.com/14969.html

text&photos Miki Yamashita、ブータン政府観光局

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