地上最後のシャングリラ、安息と癒しのブータン vol.3
2023年08月08日
世界中のホテルラバー憧れのリゾートスパ「シックスセンシズ ブータン」を巡る旅。3回目は、「シックスセンシズ ティンプー」から「シックスセンシズ プナカ」へ向かう
世界を巡るシェフによる「シックスセンシズ ブータン」のベジタブルディナー
「シックスセンシズ ティンプー」では、2022年12月にオーストラリアのメルボルンから赴任してきたアメリカ人のイサ・ラクシェフ(写真上)がメインダイニングで腕を振るっている。滞在最後の夜は、ラクシェフが、採り立て選りすぐりのベジタブルコースを特別に振舞ってくれた。写真はグリーンペッパーに山羊のチーズとヨーグルトをソースを合わせたひと皿。
「ブータンにはまだまだ知られざる食材がたくさんあり、市場を回る毎日が楽しくて仕方ない」と嬉々として語るラクシェフ。意外にも亜熱帯地域も広がるブータンでは、バナナやサボテンを食材にすることもあり、唐辛子の使い方はメキシコ料理を彷彿とさせる、という。シカゴのコルドンブルー出身のラクシェフは、フランス料理を学び、シェフとして世界中を回ってきた経験から、さまざまな国の郷土料理を自分の料理に取り入れてきた。日本の食材についても詳しく、味噌、かつお出汁などもうまく組み込んでいる。
初めて市場で見つけたという名前も知らない野菜を発酵やチーズなど駆使した料理の数々は、予想もつかない食感、味わい。ブータンの食の持つポテンシャルを感じた。未知の食材をどんな料理に仕立て上げるか考えることは料理人冥利に尽きるだろう。野菜尽くしの優しいディナーは、その日の疲労回復にも一役買ってくれた。翌日向かう古都プナカへの旅のエネルギーチャージも完了である。
古都プナカへ向かう、ハイライトはドチュラ峠
「シックスセンシズ ティンプー」の朝は祈りから始まる。インフィニティプールに浮かぶ祈りのパビリオンでは、スタッフが、五体投地の祈りを捧げている。朝日に照らされた祈りの姿は神々しい。
次に向かうのは、ブータンの都市としては標高が低く、亜熱帯気候で温暖なことから冬の都が置かれたプナカ。出発前、シックスセンシズのセントラルマネージャー、アンドリュウー・ウィフェン氏の一言でホテルのスタッフ全員が見送りに集まってくれた。誇り高い民族衣装も艶やかにヒマラヤの山々を彩る。
ティンプーからプナカにへのドライブでは45分ほど。シックスセンセズの優秀なガイドさんたち、ププディムさん、エムジェレクさんが引き続き案内してくれる。途中、越える峠、ドチュラ(ラは峠の意味)が最大のハイライトだ。標高約3,150m、晴れていれば、ブータン・ヒマラヤを一望できるのだ。マサ・ガン(6,800m)やブータン最高峰ガンカル・ピンスム(7,570m)などが眼前に迫るはず。ーーだったが、あいにくの曇り空に山々はすっぽり覆い隠されていた。
ドチュラ峠のもう一つの見どころは、ドゥク・ワンゲル・チョルテン(写真上)。小さな丘の上に大きなチョルテン(仏塔)があり、その周りを取り囲むように小さなチョルテンが建てられている。全部で108基あり、2003年12月にインドとの国境地帯で起こった紛争の際に第4代国王の王妃アジ・ドルジ・ウォンモが建設した。緻密な彫刻に縁取られた白亜のの仏塔が円を描いてびっしり並ぶ様は壮観だ。
穴場としてガイドさんが連れて行ってくれたのは、仏塔の向かいの森の中にひっそりとある修行のためのほこら(写真中央)だった。仏画が描かれた人6ひとりがようやく座れるぐらいの狭い空間が点在している。何日も飲まず食わずで祈りを捧げるそうだ。
そして、この108の仏塔を見下ろす小山の上に建つのは、ドゥク・ワンゲル・ラカン(写真下)。“ドゥク”とはブータン、“ワンゲル”とは勝利の意味。“ブータンの勝利”の意味を持つこのお堂も同じく、アジ・ドルジ・ウォンモによって2008年に建てられたという。
ブータン王立植物園で「シックスセンシズ」流優雅なピクニックランチ
ティンプーが通年の首都となるまで、300年もの間「冬の都」として栄えたプナカ。ポ・チュ川(男川)とモ・チュ川(女川)が合流してできるプナツァン・チュ川に沿って棚田が広がる静謐な田園風景に心癒される。
森、清流、仏塔、ヒマラヤ山脈、田園風景、といったブータンならではの景色の中車は進み、ランチは、ガイドさんたちとピクニックを楽しむ。場所は、ブータン王立植物園 。雄大な自然そのままの広大なエリアが公園として整備されている。生息する動物たちの看板が立っているが、その中には虎もいるとのこと。ププディムさんに聞いたが、見たことはないけどいるらしい、とのこと。
ヒマラヤの麓にはあらゆる動物が生息しているが、ブータンにしかいないターキンというツノを持つウシ科の珍獣がは国獣として保護されている。標高1000m~4000mの山岳地帯の森林に住んでいる希少動物で、ティンプーには、モティタン動物園と呼ばれる、ターキンを保護している牧場がある(写真上)。町を回る途中寄ってもらったが、広い敷地の遠くに横になってなっているターキン(写真下)ばかりで姿を見ることは叶わなかった。この公園では動物と出会う機会はあるのだろうか。
木々が生い茂るなか、影になり眺めの良さそうな場所にテキパキとランチのセッティングをしてくれるガイドさんたち。「シックスセンシズ ティンプー」で用意してくれたお弁当は、ランチボックスに入ったブータンのソウルフード、唐辛子のチーズ煮込み、エマ・ダツィ。緑に囲まれたオープンエアのランチはまた格別である。食後は、池にいる魚と戯れるエムジェレクさんの無邪気な姿にまたほっこりするのである。
清流に佇む白亜の城、王家ゆかりのプナカ・ゾン
「シックスセンセズ プナカ」に向かう前に立ち寄ったのは、花に囲まれ白い壁が美しいプナカ・ゾン。華麗な装飾や壁画に彩られた白亜の城が、2つの川と山に囲まれて自然と調和している。1637年、ブータンを統一した建国の祖“シャプドゥン”ンガワン・ナムゲルがポ・チュ川とモ・チュ川の合流点に建設したという王家に縁の深い城で、ワンチュク国王の結婚式も行われた。
民族衣装のゴ、キラを着用して訪れる場合は、正装が求められるので必ずカムニ、ラチュというスカーフが必要とのことで、ガイドさんもさっそく用意している。どのゾンでも同様、正装が求められるそうだ。
プナカゾンから車で約15分、標高1,400mのナカ渓谷の谷底から数百mの高さに建つの「プナカ ロッジ」へ車を走らせる。次は、どのような絶景が待っているのだろうか。
to be contined…
問い合わせ先 0120-677-651(IHG内)
地上最後のシャングリラ、安息と癒しのブータンvol.1 https://groumet-traveller.com/14564.html
地上最後のシャングリラ、安息と癒しのブータンvol.2. https://groumet-traveller.com/14564.html
地上最後のシャングリラ、安息と癒しのブータンvol.4 https://groumet-traveller.com/14969.html
text&photos Miki Yamashita
「美食とラグジュアリー、進化する洋上の旅「オーシャニアクルーズ」」
「『エリザベート 1878』で描かれるセンセーショナルな新エリザベート像」