再訪したくなる美食空間 東京ファイル②緑あふれる一軒家でクリエイティブ・フレンチを 「アムール」

カテゴリー/ GOURMET |投稿者/ Gouret&Traveller
2017年05月28日

世界のグルメ・シーンを長年取材してきたグルメ&トラベラーが、取材で食べ歩いて見つけた「思わずリピートしたくなる美味な店」をご紹介する連載、「グルメ&トラベラー 再訪したくなる美食空間 東京ファイル」2回目は、恵比寿のエレガントな一軒家でプレゼンテーションも優雅な創作フレンチが楽しめる「Amour(アムール)」にご登場いただきます。

 

看板もなく、ひっそりと住宅街にたたずむ緑溢れる一軒家のレストラン。門をくぐり季節のさまざまな花々に彩られた庭を抜けると扉が開き、まるで知人宅を訪れたかのような親密な空間に招き入れられる。入ってすぐガラス越しに見えるキッチンのライブ感にワクワクしながら、ウェイティングスペースに進むと、フランス産を中心にリーズナブルなワインから希少なものまで約300種類ものワインが並ぶ巨大なワインセラーが目に飛び込んでくる。

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白と淡いピンクを基調としたエレガントな二階の客席に通されると、ゆったりと心地よい非日常時間が流れる。そこで饗される日本人が日本で創る「NIPPONのフランス料理」をコンセプトにした、フランス料理の枠にとらわれない、オリジナリティあふれる創作料理。日本各地の選りすぐりの食材を、和のテクニックも織り交ぜながら華麗に表現する。

 

 

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テーブルにつくとまず封筒に入ったメニューを渡される。封を開けると、「潮風」「せせらぎ」「可憐」など想像力をかきたてる詩的な料理名が並び、そのメニューのひと皿ひと皿に仕掛けをしてゲストをもてなすのが後藤祐輔シェフ流。日本産の素材にこだわり、地方に足を運んで生産者と直に接しながら旬の食材の香りや食感を計算し、緻密でいて大胆、時にはあっと驚かせてくれるような食材の組み合わせで楽しませてくれる。繊細な日本の食材に合わせ、懐石料理を意識したコースメニューの構成。約2か月ごとに内容を一新することで、最旬の食材が提供される。器やカトラリーにも美意識が貫かれ、絵画のような料理の数々にゲストからの歓声が上がる。

 

 

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父親がフレンチのシェフだった後藤シェフは、家にフランス料理の本がたくさんあり、子供のころからフランス料理は馴染み深いものだった。なるべくしてフレンチのシェフになった、かと思いきや、父親のあとを継ぎたいとは思ったことはなく、店の手伝いをしたこともなかったという。結局は料理の道に進むことになり、専門学校を卒業した後は、レカンで4年修行したあと渡仏。パリではなくプロヴァンス、バスクなどなるべく日本人のいない地方を希望し修行を重ね、帰国後カンテサンスやオトワレストランで経験を積んで独立。アムールを西麻布でスタート。昨年10月、より理想の環境を求めてアムールを広尾に移転した。都会の真ん中にありながら、緑の生い茂る庭に面したテーブルでは、静かな時間の流れを感じながら目にも麗しい料理に舌鼓を打つ至福のひとときを過ごすことができる、

 

 

 

ランチコース  7500円

初夏の収穫 ベビーコーンIMG_5972

 

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季節の定番アミューズ、旬の野菜を使ったパイ包み。この季節の野菜、ベビーコーンがまずはシェフ自らの手でテーブルに運ばれる。ヤングコーンをやきもろこしのような香ばしさで焼き、コンテとクリームチーズとともにパイで包む。フランス料理というある種の堅苦しさを、はじめのお皿を手で食べることでリラックスしてほしい、と考えた。一軒家のエレガントな空間とのギャップを楽しんで食事してほしいというメッセージである。

 

 

 

 

 

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パンは京都の吉田パン工房から直送される、カンパーニュ、米粉のパン、クロワッサン、ブリオッシュ、フォッカチャ。自家製のホイップバターとともに。

 

 

 

 

「潮風」貝、じゅんさい、ういきょう

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ういきょうを使ったムースにホッキ貝、ツブ貝、サザエなどを合わせて異なるさまざまな食感の競演を楽しむ。貝類は湯通しすることで、引き締まってさらに食感が増す。秋田のじゅんさい、生のういきょうを混ぜ、タルタルをしき、昆布のだしでとったジュレにのせ、広島の梶谷農園から取り寄せたパンプルネル、セルフィーユの花、ウイキョウほかハーブを散りばめると花畑のような華やかさに。じゅんさいが貝のコリコリ感になめらかなタルタルをまとめて最適のバランスになる。

 

 

 

 

「せせらぎ」 鮎、稚鮎、山葵

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生きた鮎をガラスの器に泳がせて涼やかに。シェフが調理前の食材をテーブルに運ぶ。その鮎は素揚げにされ、わさびとフロマージュブラン、酸味とさわびの苦味が効いたソースの上で生き返る。辛みのあるナスタチウム、はこべなどのハーブを草むらに、五穀米を小石に見立て、鮎が小川を泳いでいる風景を描写した艶やかなひと皿。鮎をまるごと炒めて煮出しミキサーにかけた、ビターな鮎のビスクを添えて。

 

 

 

 

 

「可憐 」 甘鯛、姫筍、青柚子

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京都舞鶴の甘鯛のロースト、甘鯛の骨からとった和風のだしをソースに。フレンチの魚料理の調理法にはない松かさ焼きのパリパリした皮が、和の感覚を演出。青柚子の皮、みつばと筍でさらにしゃきしゃきとした食感を加える。

 

 

 

 

 

「豊潤」  仔牛、ソバージュ、甘夏

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ココットでその日の肉のかたまりをローストし、蒸し焼きに。骨付きで大きなかたまりを焼き上げ、ゲストみんなで切り分ける。今回はフランスのアキテーヌ地方の仔牛を蒸し焼きにし、最後は炭火で表面を焼き上げ、アスペルジュソバージュ、乾燥させてフリットにし旨みを凝縮したエノキを添える。甘夏のソースは、皮を乾燥してパウダー状に。ソースは仔牛の骨から抽出。さっぱりしたあと味が初夏にさわやか。

 

 

 

 

デザート1   「恋心」 ルバーブ、梅

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色で合わせた同じ色の食材。同じ色どうしは相性がいいともいわれている。ルバーブのソルベに、半分裏ごししたものを炒ってパウダー状にした梅をふりかける。メレンゲをビジュアルのアクセントに飾る。

 

 

 

 

デザート2 「新緑」 メロン、新茶、ミント

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ココナッツのブラマンジェに、さまざまな食感が楽しめる緑の素材、メロンとキウイ、緑茶のソルベ、ミントゼリーなど。メロン、キウイはくり抜いて、ライムの実を少し合わせ、タピオカを下に隠す。ホワイトチョコに緑茶をまぶしてつき刺し、遊び心を表現。

 

 

 

 

プチフール

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華やかなプチフールが最後を締めくくり、余韻を残しながらコースが終わると、また次の季節におとずれるべく予定をたててしまうこと請け合いである。

photo&text  Miki Yamashita

 

 

 

 

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Amour( アムール)

東京都渋谷区広尾1-6-13地下鉄日比谷線 恵比寿駅 1番出口 徒歩7分 JR 恵比寿駅 徒歩7分
火~日 ランチ : 12:00~15:30(L.O.13:00) 5000円~    火~日 ディナー : 18:00~23:00(L.O.20:30) 10000円~
定休日 毎週水曜日

photo&text Miki Yamashita

 

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