地上最後のシャングリラ、安息と癒しのブータン最終回

カテゴリー/ VISIT |投稿者/ Gouret&Traveller
2023年10月04日

世界中のホテルラバー憧れのリゾートスパ「シックスセンシズ ブータン」を巡る旅。最終回は、ブータンでもっとも美しい景観のひとつであるといわれるパロ渓谷に立つ「シックスセンシズ パロ」へ。古代に建てられた「ゾン」の遺跡に隣接し、「ストーン・ルインズ(石の遺跡)」と名付けられた雄大な渓谷を望むロッジにステイ。ブータン観光のハイライト、断崖絶壁に立つタクツァン僧院をめざして標高3000メートルの登山に挑む。

 

静かな田園風景が広がる豊かな穀倉地帯、パロを巡る

「シックスセンシズ プナカ」から「シックスセンシズ パロ」に向かう途中、「シックスセンシズ」専属ガイドさん、ププディムさん、エムジェレクさんが寄ってくれたのは、ブータン最古の寺院「キチュ・ラカン」。7世紀のチベット文化圏には、その全土にわたって強大な力を持つ、人を食う美しい鬼女「羅刹女(らさつにょ)」がおり、7世紀にチベットを統一したソンツェン・ガンポ王がその力を鎮めるためにヒマラヤのチベット文化圏全土に108つの寺院を建立。「キチュ・ラカン」は羅刹女の左足にあたる場所に建てられたと伝えられている。ブータン王室とも関係が深く、ロイヤルファミリーが法要をしている時は立ち入り禁止となることもあるとのこと。ブータンでは、学校帰りや仕事終わりにお参りをすることが一般的で、たくさんの人がマニ車を押していた。

 

 

パロの目抜通りには土産屋、飲食店、カフェなどが並ぶ。なかにはユニクロやダイソーの海外版ミニソーなど日本企業も進出している。ププディムさんは、私がお土産用のワンチュク国王Tシャツを探している側で、欲しかったダライ・ラマの翻訳本を見つけて大喜びしていた。街に独立した書店はないようだが、空港には免税店より大きな書店があり、多くの村上春樹の作品が壁面全体にディスプレイされていたのが印象的だった。

 

 

続いて、ブータンの自然、文化、生活様式、宗教などに関する展示集めた国立博物館「タ・ゾン」へ。もともと見張り塔だったため、タ・ゾンから見渡すパロ谷の絶景を満喫する。最後に掲げられたワンチュク国王の国民を思うステイトメントには感激させられた。

標高約2,300mのパロは、静かな田園風景が広がる豊かな穀倉地帯だ。「タ・ゾン」からそれほど遠くない「シックスセンシズ パロ」へは、舗装されていない山道を登っていく。

 

 

パロ谷が180度見渡せる絶景をラウンジで堪能

ブータンで最も美しい景観のひとつであるといわれるパロ渓谷に立つ「シックスセンシズ パロ」。古代に建てられた「ゾン」の遺跡に隣接し、「ストーン・ルインズ(石の遺跡)」と名付けられている。180度視界が開けた雄大な渓谷をゆったり眺めることができる広いラウンジに迎えられると、パロ谷が視界に開ける。このロッジにも友人宅に招かれたような親密感がある。60㎡のスイートから一番広い440 3ベッドルームヴィラまで、20のコテージが山を正面に並び、裏庭には野菜やハーブを栽培する農園が広がっている。

 

おやつにも食事にもなる「モモ」を「シックスセンシズ パロ」の料理人チームがデモンストレーション。写真下は、ホテルの裏庭の自家農園

ホテルの料理チームのクッキングクラスが開催されるので、参加しませんか? とお声がけいただき、ブータン料理の中でもポピュラーなチベットの蒸し餃子「モモ」の作り方を教えてもらう。自家農園で栽培している野菜やハーブをふんだんに使った餃子は、ほぼ日本の食感、味と同じ。皮にはバジルや野菜を混ぜ込み、4種の味、葉や花のように形づくり、「シックスセンシズ」流お洒落なモモができあがった。そのまま自作のモモと唐辛子(エマ)とチーズ(ダツィ)を用いた国民食、エダ・マツィのブータンというローカルディナーに舌鼓。

翌朝6時に出かける先は、2500メートルの断崖絶壁に張りつくように立つ聖地、タクツァン僧院である。果たして到達できるのか、期待と不安が交錯するなか、数種のハーブのコールドプレスでエネルギーチャージをして眠りに落ちる。

 

ブータン随一の聖地 タクツァン僧院への登頂

「よくこんなところに寺院を建てたな」と誰もが思うタクツァン僧院。8世紀にブータンに仏教を広めた聖者グル・リンポチェ(パドマ・サムバヴァ)が虎にまたがりこの地に舞い降りたという伝説から「タクツァン(虎のねぐら)」という名付けられたという。グル・リンポチェが瞑想した洞窟を囲むようにお堂が建てられ、チベット仏教の巡礼者が絶えることはない。

ふもとの駐車場から往復約6時間の山歩き。もちろん、個人の体力に合わせてゆっくり登ればよい。2時間ほど登ると休憩所のカフェテリアがあり、引き返すことも可能だ。無理せず気負わず登り始める。登頂途中、お経が書かれたタルチョ(ルンタ)という旗が至るところにかけられており、チベット仏教圏ならではの光景だ。青・白・赤・緑・黄と決まった順番で並び、自然界の五大要素である天・風・火・水・地を意味しているという。

 

 

カフェテリアのテラスで。ガイドさん2人の後ろに豆粒のような僧院の姿が

第一展望台のカフェテリアまでは、小馬で登ることもできるため、登り口には子馬がたくさん待機していた。馬の主と直接交渉のようで、小馬が急な坂道や岩に足をとられながら山道を登るのも少しかわいそうに感じる。自分も息も絶え絶えになりながら、休み休みくもくと登り続ける。

2時間ほどでタイガーネストという名のカフェテリアに到着。眺めの良いテラス席がありお菓子とお茶でしばし休むことができる。はるか遠くの僧院はまだ豆粒大。タクツァン僧院を見上げながら、ビスケットとミルクティーで疲れをしばし癒す。

ホテルにもどれば、疲れ果てた心身を癒してくれるブータン式入浴リチュアルHingsangsa Zoniほか充実したスパメニューが待っている。リンパの流れを促進するヒマラヤンソルトで体のデトックス機能をさらに高め、回復を促すボディマッサージを受ければ次の日に疲れが残らない、そう身体に言い聞かせ、また山道をよろよろと登り始める。

標高3,000mの第二展望台には、2時間ほどで到着。タクツァン僧院はかなり近く見えるようになった。2,500mに位置する僧院に行くためには階段を登ったり降りたりを繰り返す。すぐそばにあるように感じるが、なかなか到達しない。永遠に登り降りを繰り返すかのようで気力が萎えてきたところでついに到着。3120 メートルの垂直の岩壁に立っいる。なんという達成感。エベレスト登頂に成功したように気分は晴れやかだ。

小さな僧院である。華やかさもない。しかし、半端ない神聖なオーラが放たれている。それぞれのお堂には立派な仏像が安置されているが、荷物は預けて入らなければならず撮影禁止。僧院のなかでは、人々が熱心に祈っており、この国の人々の信仰深さにあらためてひれ伏す思いだ。ガイドのププディムさんは、五体投地で祈りを捧げている。着物のような民族衣装「キラ」でスイスイ山を登る逞しい姿が魅力的に見えた。

 

 

「シックスセンセズ パロ」にもどると、ラウンジでは、疲れた足のマッサージを用意してスパのスタッフが待っていてくれた。さらには、山道で埃だらけになったスニーカーに気づき、きれいに洗ってくれる。ありがたい気遣いだ。マッサージが終わって部屋にもどると、まっさらなスニーカーが届いていた。

「シックスセンシズ ブータン」では、どこにいても深く息を吸い込みたくなる。邪気のまるでない清廉な気が流れているからだ。

自給自足、水力発電エネルギーで自立していける安心感、信仰と王の存在を心の拠り所とし、あるがままの自然を享受し、怒りや欲を持たず、心穏やかに日々を過ごす。人間の本来の幸せとは、こういう生き方ではないのか、そんなところにまで思いはいき着く。

ブータンは、北は標高7000メートルの雪に覆われた山岳地帯、南はインドとの国境付近の熱帯雨林、と気候風土がさまざまに異なり、さらには、地域ごとに独自の言語や文化を持つ。「シックスセンシズ」では、展開するパロ、ティンプー、プナカ、ガンテ、ブムタンという5カ所のロッジでは、その地でしか経験できない、それぞれ個性あふれる魅力的なアクティビティを楽しむことができる。願わくば、5つのロッジを制覇し、思いきり深呼吸をしながら心整うステイを満喫してみたい。

問い合わせ先 0120-677-651(IHG内) 

 

地上最後のシャングリラ、安息と癒しのブータンvol.1     https://groumet-traveller.com/14564.html

地上最後のシャングリラ、安息と癒しのブータンvol.2. https://groumet-traveller.com/14564.html

地上最後のシャングリラ、安息と癒しのブータンvol.3  https://groumet-traveller.com/14755.html

text&photos Miki Yamashita

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