旬のスイーツリレー ⑨ 大阪で一番人気のフランス菓子「アシッドラシーヌ」
2017年12月17日
連載「旬のスイーツリレー」9回目は、朝早くから行列ができる京都のパティスリー「タンドレス」の山口貴之シェフ推薦、大阪で人気ナンバーワンの評判をとるパティスリー、「アシッドラシーヌ」の橋本太シェフです。
アシッドラシーヌ(acidracines)
2013年の開店以来、客足が途切れることのない、大阪で一番人気とも評される谷町のケーキ店「アシッドラシーヌ (acidracines)」。
ビジュアルは愛らしく繊細ながら、一つ一つのケーキが個性を主張する魅力的な味を求めて毎日大勢の人が押し寄せる。
店名は、パティスリーでは重要な意味を持つ4つの要素、英語のatomicity(不可分性)、consistency(一貫性)、isolation(独立性)、durability(永続性)の頭文字をとったacidに、フランス語で「根」を意味するracinesをつなげた造語。acidの4つを根幹にしっかりと根を張り芽を出していきたいというコンセプトだ。
ブラウンを基調にリビングをイメージしたくつろぎと落ち着きのある店内には、生ケーキのほかチョコレート、焼き菓子、マカロン、ジャムなど幅広いラインナップがそろっている。
1975年、福岡生まれの橋本 太シェフのモットーは、「素材を活かしきるお菓子づくり」。大阪「ヒロコーヒー」で5年間、北海道「ウィンザー洞爺」を経て、ボルドー「マルケ」で3か月修行。大阪「ケ・モンテベロ」で立ち上げからシェフを務め、2013年独立。フランスで実際に口にしたフランス菓子に感銘を受け、本場の味を探求し続ける。
もともとミュージシャンをめざしていた橋本シェフ。東京に出てプロになるのは年齢的に遅いと言われた23歳のころ、それならジャズ喫茶をやろうと思い、好きな紅茶の勉強始めた。この世界でも年齢的に厳しいことを理由にどこにも受け入れてもらえなかったが、スイーツ世界大会WPTCのチョコレート部門で世界チャンピオンとなった大阪「ヒロコーヒー」の藤田浩司シェフが「拾ってくれた」。ゼロからお菓子の世界に入り、師匠、藤田シェフに憧れてパティシエとして一人前になろうと決断。98年、おりしもパティシエという職業の認知度が高まりフランス菓子ブームだった。
チョコレートのことをフランス語で「ショコラ」と呼ぶ。そんなことも新鮮だった。フランス菓子の代表「オペラ」の素材の使い方に衝撃を受け、フランスに行って実際にお菓子を食べ歩いた。その頃パリでは、ジェラール・ミュロが一世風靡していた。自分の感覚に近いものがフランスで共有できた。それをきっかけにフランス・ボルドーでの研修も経験する。
フランスではどんな小さな町でもあるパン屋さんのお菓子屋さん、ブーランジェリー・パティスリー。お店の周りに住んでいる人たちが食べるお菓子がある。遠くから来てもらうために珍しい商品を作ろうとはしていない。地域に根付くお菓子屋さんの感覚が自分にとって必要なことではないかと思った。
お菓子作りの自己表現は音楽と共通するところがある。一番大切なことはオリジナリティー。素材についても産地に重きを置かない。素朴な素材が産地の特別感を超える。自分がおいしいと思う感性と持っている技術で、おいしいお菓子になる組み立てを考えればよい。たとえれば絵を描くようなもの。絵の具をどういうふうに混ぜてどういうキャンバスにどういうふうに構成するか。
そうしたアートフルな気持ちを込めた橋本シェフにとってお菓子は特別の思い入れのある作品たち。コーヒーや紅茶とともに過ごす時間が心を豊かにしてくれる。そんなお菓子を目指している。
ラクテ 520円
ガナッシュチョコレートのムースの中にフォンダンショコラとガナッシュフランボワーズ、チョコのビスキュイ。初期のころからのスペシャリテ。チョコレートのバリエーションだけでひとつのケーキができないかと考えたチョコレートの集大成。さまざまなチョコレートの要素が組み込またひときわ美しい光沢を放つ完璧なグラサージュ。カカオの香りと味わいが複雑にひろがり、チョコレートの奥深さを感じる一品。
アレジェ 500円
構成は下からジェノワーズザマンド、ムースリーヌザマンド、アプリコットコンポートにカシューナッツのキャラメリゼをのせる。「フランス菓子」に対し迷いが生じて、あえて作らないでいたジェノワーズ生地だったが、初心に立ち返ろうと試作をしているうちにジェノワーズを使ったお菓子を作りたいと思い直した。アーモンドプードルを加えコクのあるジェノワーズにたどり着く。何層もの食感の重なりにバランスを持たせてなめらかな口溶け。アプリコットとアーモンドの組み合わせも効いている。
アノニマ 460円
クリームチーズと粉糖のチーズケーキ。大阪にあったチーズ屋さんで遭遇したブリアサバランの上にクッキーを砕いた濃厚なチーズがほんのり甘いお菓子。この味を再現させたい、と味の記憶をたどって形にした。オープンから作っているスペシャリテ。濃厚なチーズながら口当たりは軽く爽やか。甘さにほんのりのった酸味が大人の味わい。
アシッドラシーヌ(acidracines)
大阪府大阪市中央区内平野町1-4-6
地下鉄谷町線「天満橋駅」より徒歩6分
京阪電車「天満橋駅」より徒歩7分
06-7165-3495
11:00~20:00
水・木曜定休(祝日の場合は変動あり)
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