旬のスイーツ・リレー ⑯「タント・マリー」フルーツのみずみずしさを表現、遠藤淳史シェフ
2018年09月01日
連載「旬のスイーツリレー」16回目は、ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ「N.Y. Lounge Boutique」の德永純司(とくなが じゅんじ)シェフの紹介により、「タント・マリー」の遠藤淳史(えんどう あつし)シェフです。
お茶の水や湯島からも近いが、 なかなか見つけにくいちょっとした隠れ家パティスリー、タント・マリー。蔵前橋通りから妻恋坂交差点の小道に入ると店のスペシャリテ、「カマンベールチーズケーキ」のイラストが描かれた看板が見えてくる。1983年、フランス料理店「ビストロ・タント・マリー」として上野で始まり、その後に湯島に店舗を移した。現在は、丸の内オアゾや羽田空港にも入っている。フランス料理店で培ったチーズの知識を生かし、個性の強いカマンベールチーズケーキほか、オリジナリティーあふれる味を追求している。
手前に焼き菓子、奥に生菓子、左手にヴィエノワズリーを配し、ブラウンを基調とした上品な店内。どの商品を手にとっても、ていねいにしっかりとした技術でつくられたオーセンティックな佇まいを身に纏っている。おもたせにぴったりな焼き菓子も多種多様、目に入ってくる。
チーズケーキは、カマンベールほかブリー、ゴルゴンゾーラがあり、どれも濃厚でしっとりとした味わい。ワインにも合いそうだ。
そんなチーズケーキや生菓子、ヴィエノワズリーすべてを統括しているのが、遠藤淳史シェフ。
フルーツを多用したケーキでショーケースはパステル調の優しい印象を受ける。フランスの地方菓子をベースに遠藤シェフの個性でアレンジしたケーキ、シェフオリジナルの軽くモダンなケーキの二通りの魅力を備えた商品が並ぶ。フランス菓子らしいしっかりした味を出すように、と教えられ心がけてきたが、最近では、軽さも求めるようになり方向性も変化してきたという。
子供の頃から料理が好きで、母親の手伝いをするなど、漠然と料理人に憧れていた遠藤シェフ。専門学校に進むと、多種多様な仕事に興味を持った。授業では、肉を担当したい生徒が多いなかで、オードブルとデザートを手がけることにした。肉を扱うと肉の調理の過程中心に学ぶことになるが、オードブルやデザートを担当すると、素材の構成や組み合わせを考えたり、盛り付けをしたり、さまざまなことにたずさわることができるからだ。小学校のころは図工が得意で、工作や絵を描くのも好きだった。それがお菓子作りにつながっている。今もケーキの新作の絵を描いては味をイメージする。自分の得意を生かした最短距離でプロの道へ進もうと、卒業後はパティシエの職を志した。名古屋のホテルでパティシエを始め基礎を学び、のちに、六本木ヒルズのグランドハイアットで6年、飴細工やプレゼンテーションなどホテルのパティシエの仕事に邁進。ホテルでは、コンクールに出場する機会が多く、そのための研鑽を積んでいた。
27歳で、ふと、コンクール向けのお菓子作りではない幅広いスイーツを作りたい、と次のステップを思い描いた。そのためにはフランス菓子のクラシックを知らなければならない。引き出しがもっと欲しいと考えた遠藤シェフは、フランスへ渡る。修業先はパリの「デ・ガトー・エ・ドュ・パン」。フルーツを使うことがメインテーマの店で、パリで人気のパティスリーだ。技術の高さに学ぶことも多く、大きな影響を受けた。フルーツの水分を残し、みずみずしさ表現する技法を習得。日本に帰るのを延ばし、半年間、チョコレートの修行をすることもできた。
帰国後は、タント・マリーにシェフとして迎えられる。フランスのパティスリーで修行した経験を生かしてヴィエノワズリーも置きたい、と考案したブリオッシュ生地とクロワッサン生地をベースにしたパンもファンが多い。チーズケーキや焼き菓子など大先輩が残してきた遺産を受け継ぎながら、今は次のステップに移っていきたいという遠藤シェフ。新しいドアを開けるときが待ち遠しい。
フルーリー 626円
フランボワーズとすみれの香りで構成。白い部分はライチで、フランボワーズとすみれの橋渡し的な役割。ナパージュの中にもスミレの香りが入れてある。表面には、百均で買った滑り止めでスタンプを作って花びらの模様をつける。色は赤紫と青紫の2種類の花びら。カカオバターの色素を吸わせて溝に染み込みのを利用した。クリスマスのイベントのケーキをつくるのに冬でも華やかに、とスミレがテーマだった際に考え、そのケーキが気に入り商品にした。
花びらが散らされた美しいビジュアルに、スミレとフランボワーズの香り高く、何層に重ねられたフランボワーズが味わい深い。
リュバーブ&フロマージュブラン 626円
夏向けのタルト。バニラとフロマージュブラン、中央の緑の部分がリュバーブ。底のタルトは軽くコンポートしたリュバーブで、シャキシャキした食感。上はバニラ、コンポートとコンフィチュールの中間程度に煮たリュバーブを中央に入れフロマージュブランを合わせた。タルトにメレンゲが入っていてふわっとしている。表面の淡いピンクはリュバーブを漉したもの。しっとり感のあるタルトに、2種類のリュバーブの食感が新鮮。
ミルリトンアブリコ 610円
アーモンドパウダー、卵、砂糖のみのシンプルなつくり。旬のアプリコットの酸味を合わせたノルマンディーの伝統菓子。大きめに切ったアプリコットに、アパレイユを入れてアーモンドスライスをかけて焼く。ごろっと入った存在感の大きいアプリコットで食べ応え満点。
バスク×フラン 1150円
しっかりした食感と生地の厚み。なかにしっとり感のあるバスク、生地にカスタードクリームをたっぷり入れた。日本人好みの食感ぷるぷる食感のフラン。合わせて生クリームを入れて、ラム酒「ネグリタ」を効かせた大人の味。
タント・マリー
文京区湯島2-26-5
東京メトロ銀座線末広町徒歩5分
03-3836-3358
10:00~19:00
日曜日休み
丸の内店 千代田区丸の内1-6-4 オアゾ1F 03-5252-7734
11:00~21:00
旬のスイーツリレー⑯タント・マリー
旬のスイーツリレー⑮ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ
旬のスイーツリレー⑭オクシタニエル
旬のスイーツリレー⑬エクラデジュール
旬のスイーツリレー⑫アンヴデット
旬のスイーツリレー⑪アングラン
旬のスイーツリレー⑩リョウラ
旬のスイーツリレー⑨アシッドラシーヌ
旬のスイーツリレー⑧タンドレス
旬のスイーツリレー⑦デセールル コントワール
旬のスイーツリレー⑥パティスリーS
旬のスイーツリレー⑤リベルターブル
旬のスイーツリレー④グリーン ビーントゥ バー
旬のスイーツリレー③ エスキス サンク
旬のスイーツリレー② ピエール・エルメ パリ 青山
旬のスイーツリレー① トシ・ヨロイヅカ 東京
「ホテル椿山荘東京で酷暑に疲れた身体を癒そう! 「チャイニーズアフタヌーンティー」」